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「読書する人だけがたどり着ける場所」 齋藤 孝
「「読書」は体験なのです。」
「読書する人だけがたどり着ける場所」 齋藤 孝
町の本屋が閉店している
本を読む人が減っている
そんなニュースやネット記事をよく見ます。
僕が学生の頃にはいたるところに本屋があったので、実感として小さな町の本屋が減っている印象は受けますが、それに比して本を読む人は減っているのだろうか?
大型書店に行くと、本を求めて来られている人がたくさんいます。
棚から本をつかみ、パラパラと頁を捲り、真剣な表情で本との出会いを楽しんでいる、そんな風に見受けられます。
検索機で本を探している人、書店員さんに求めている本を訊ねている人、読んだ本のストーリーを互いに話しながら本を手に取る人。(今日本屋でそんな素敵な老夫婦に出会いました)
本屋に行くと、本を購入したり探したりするだけでなく、そんな人たちを見ていて、なんだかワクワク、ほのぼのとしてきます。本が好きな人たちと無言だけど、コミュニケーションしているような感覚です。
そんな感覚にもなる本屋に行って、その空間の中に漂っていますと、本当に本を読む人が減ってきているのだろうか? 今は、読む人は読むし、読まない人は全く読まない、そんな風に二極化しているだけではないだろうか?と思ったのです。
本を読む人は、読書が楽しいと感じているし、本を読まない人は、読書が難しい、苦痛、楽しくないと感じているのだろうし、そんなことを考えながら、本書の頁を捲りはじめました。「読書する人だけがたどり着ける場所」とはいったいどこなのか?
◇
齋藤孝さんは、ネットで情報を読むことと読書には重大な違いがあるといいます。
ネットで文章を読むのは「読者」ではなく、「消費者」であると。
それは
こちらが主導権を握っていて、より面白いものを選ぶ。「これはない」「つまらない」とどんどん切り捨て、「こっちは面白かった」と消費していく感じです。
消費しているだけでは、積み重ねができにくい。せわしく情報にアクセスしているわりに、どこかフワフワとして何も身についていない。
対して読書は「構え」が違うといいます。
じっくり腰をかまえて著者の話を聴く態勢であると。
著者と一対一で逃げださずに話を聴き続けるとどうなるか?
齋藤さんは
それは「体験」としてしっかりと刻み込まれます。
「読書」は体験なのです。
実際に体験したことは何よりも貴重なものですが、疑似体験からでも得るものは大きいですし、発する言葉の重みが違います。
繰り返しますが、ネット、SNSが悪いと言っているのではありません。この素晴らしいツールも人類の知が生み出したもの。うまく活用しない手はないでしょう。
ただ、軸足を完全にそちらに移してしまって、読書の喜びを忘れてしまうのはあまりにももったいない。読書は人間に生まれたからこそ味わえる喜びです。自分で自分の人生を深めていける最高のものです。
本書では、斎藤さんが考える「読書の効用」が挙げられています。
確かにそうだなと思った言葉が3つありました。
1.文豪は大量の本を読んでいます。大量の本を読んで、精神文化を背負い、文学の形に表しているそうです。
だから、谷崎潤一郎の本を1冊読むだけでも、その背景にある大量の本がガーッとなだれ込んでくるような感じです。
2.本を読んでいると、自分に合わない本が必ずあります。人との出会いでもそうですが、好みでない本もあります。
そんなとき
何か一つでも知識を吸収しようと考えて読む。一つでも知らなかったことに触れ、考えることができたらその本の価値があります。
3.歌手のJUJUさんがコンサートで各地に行くときには、必ず本屋に立ち寄るそうです。その話を斎藤さんはテレビで見ていました。JUJUさんは、こう語っていたといいます。
「本っていうのはドラえもんのどこでもドアみたいなもの。その本がそれぞれの世界に連れていってくれる」
さまざまなシチュエーションやワールドがあります。そのような世界を読書で体感できるのですね。別のワールドへと誘ってくれます。まさに、どこでもドアのようですね。
この本を読んでたどり着いたのは、「体験」でありました。
いろんな世界に行って体験できる。著者の世界観を体感できる。文豪の読書体験を有することができる。
自分ひとりが一生でできる体験というのは、ある程度限られています。
文字を読み、著者の話を聴き、想像し、その体験を共有できる。
実際、読書で登場人物に感情移入しているときの脳は、体験しているときの脳と近い動きをしているという話もあります。
この本には、他にも読書の効果的なことが書かれていますし、逆にバランスのとれた読書をしないと、視点が偏ってしまうというデメリットも書かれています。
いずれにせよ、読書の素晴らしさを再発見できる場所へとたどり着いた感がありました。
【出典】
「読書する人だけがたどり着ける場所」 齋藤 孝 SB新書
いじわる魔女の猫さん、ありがとうございました。