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「ふたりのしるし」 山口正善
「生まれ変わったら次は一緒に幸せになろうね」
「ふたりのしるし」 山口正善
この本「ふたりのしるし」は、読み終わったあとの余韻が半端なく、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
著者・山口正善さんの実際のお話です。
◇
まさよしは大学生のとき友人にすすめられて、携帯会社のテレホンアポイントのアルバイト面接を受けました。
あまり乗り気ではなかったのですが、そのアルバイトの初日に運命的な出逢いをするのでした。
しばらく経つと扉が開くのと同時にバタバタと女の子が入ってきた。
「遅れてすいません、今日からお世話になります」
息を切らしながら挨拶をするその子に、僕は目を奪われた。
第一印象で一目惚れしてしまったまさよし。しだいに二人は仲良くなってゆきます。
ひとみには夢がありました。
そのためにお金が必要なんだという話を、まさよしにしました。
あるとき
ひとみとの会話の中で、彼はこんなことを言ってしまうのです。
「僕なら1週間もすればこの会社でトップの成績にだってなれるよ」
自信はなかったけど、つい強がって言ってしまったまさよし。
「絶対無理だよ。1週間でなれる訳ないじゃん。」
「じゃあもし1週間で一番になったら何かしてくれる?」
「良いよ。何でも」
「じゃあ一番になったらデートして」
まさよしは、そのあと必死になって頑張り、その営業チームでトップになったのです。
約束どおり、ひとみとデート。
レンタカーを借りてドライブに行きました。
レストランに入った時、ひとみはこんな話をします。
「私ね、大学を卒業したらオーストラリアに行きたいんだ。英語を勉強してみたい。それからエアーズロックをこの目で見たいんだ。
あのオーストラリアの真ん中にそびえたつおっきな岩を見たらきっと感動するんだろうな」
まさよしは、デートの最後に告白しようと思いました。
出逢ってからずっと変わらないこの気持ちを、どうしてもひとみに伝えたかったのです。
彼女の家に着いた時、まさよしは勇気を振り絞って告白します。
ひとみは言いました。
「・・・ありがとう・・・本当にありがとう・・・私も好きだよ・・・」
「でも好きだからこそ、付き合うことはできないよ・・・」
「私たちが付き合ったら、お互いを苦しめることになるよ・・・これ以上会って、もっと好きになったら、きっとお互いが傷ついちゃうよ・・・」
まさよしはひとみが涙を流しながら言っていることがわかりません。彼女の言ったことが、そのあと頭から離れなくなりました。
次の日から彼女は、アルバイトに来なくなりました。
次の日も・・・
次の日も・・・
ひとみは、現れませんでした。
月日が経ち
まさよしは大学を卒業。
社会人生活が始まりました。
慌しい毎日。
仕事は楽しかったのですが、心の中ではひとみのことが忘れられません。
ある梅雨の日、まさよしは出張の仕事が入っていたのですが、大雨で中止になります。
仕方なしに、マンションに帰ると
マンションの入り口に、傘をさしている女性が立っていました。
もしかして・・・
ひとみでした。
気付くと両手に持った傘と鞄を放り投げ、彼女を抱きしめていた。
「・・・ごめんね・・・本当にごめんなさい・・・
・・・ずっと会いたかった」
その夜ひとみは彼のマンションに泊まり、
翌日、海を見に行こうと約束します。
翌日、ひとみはこんなことを言いました。
「突然だけど、まさよし君に言わなきゃいけないことがあるんだ・・・」
「いきなりだけど驚かないでね。私、実は先天性の心臓の病気があるんだ・・・
お医者さんが言うには、このままでは25歳まで生きることができないって・・・私が死んだら、まさよし君はどう思う・・・」
・・・・・
・・・・・
頭がまっ白になったまさよし。
でも、この時から彼女の運命と闘う覚悟をするのです。
「ひとみちゃんの命を必ず守ります。希望を持って二人で生きていこう」
彼女の運命と闘う覚悟をした、まさよし。
彼女の命を助けるために何ができるのか、自分がしなければならないことを毎日必死で考えたといいます。
しかし
調べれば調べるほど壁にぶち当たったそうです。
彼女の病気は、体全体に血液を送る心臓の力がだんだん弱っていくそうで、国の難病にも指定されていました。
そんな時、ひとみがまさよしに不意に言います。
「まさよしくんをお父さんとお母さんに紹介したいんだけど」
彼女の家に行く約束をしました。
そしてその日、まさよしはご両親に歓迎され、結局、家に泊まることになります。
ひとみとご両親との楽しい夕食も終わり
「今日はどうだった?変な気を使わせちゃったかな・・・・・・お父さんもお母さんもあんなに喜んでる姿を久々に見たよ」
(中略)
こんなに明るい家族に囲まれて幸せそうにしている彼女なのに、本当に25歳で死んでしまうのか。そう思うと、僕には神様の悪戯にしか思えなかった。
夜、眠れなかったまさよしは部屋を出ると、お母さんが1人何か考えているようにリビングに居ました。
彼は聞きます。
「ひとみちゃんの病気について聞きたいんです。
本当に25歳までしか生きれないんですか?」
・・・
お母さんは、重たい口を開きました。
「あの子の命は・・・・・・もって・・・あと6ヶ月」
・・・あと6ヶ月・・・
実は初めてのデートの夜、彼女は心臓発作を起こしたのだそうです。
ずっと意識を失い、9日目、目を覚まして最初に言った言葉が・・・まさよしの名前だったのです。
お母さんは、涙をながしながら言います。
「ひとみの命を1分1秒でも延ばせる事ができるのは、まさよし君
・・・あなただけです。」
まさよしは、ひとみのお母さんにこう言いました。
「ひとみさんのことは僕が守ります。必ず幸せにします。」
お母さんの目を見て僕は強く言った。
「ひとみさんと結婚させてください。
ひとみさんの残された人生を僕にください。
僕の人生をかけて守ります・・・」
7月7日、七夕の日に星を見に行った2人。
まさよしは、ひとみにプロポーズしました。
それから
クリスマス
新年の初詣
医者から言われた余命は、既に過ぎていました。
僕は彼女がこのまま生きてくれるような気がした。
しかし
その日が突如、訪れてしまったのです。
死はあっけなかった。
なんで人はこんなにも簡単に死んでしまうのか・・・昨日まで、いや、今日の朝までは元気だったのに。
お葬式。
彼女の出棺の前、彼女のご両親が最後だからと二人きりにしてくれました。
「最後のお別れだね。ひとみちゃん・・・」
僕は彼女の棺の中に婚姻届を入れた。
僕は最後に彼女にキスをした・・・永遠の誓いのキス
彼女のお母さんがそっと優しく僕の肩に手を掛けた。
「まさよしくん・・・ありがとう・・・」
マンションに帰ったまさよしは、あまりの絶望感、悲しみの中、無意識に睡眠薬を全部飲んでしまいます。
彼は2日間、病院で寝続けました。
もう少し発見が遅れたら、彼の命も危なかったといいます。
ひとみのお母さんが彼の携帯に何度連絡しても通じないから、心配になって彼のマンションに訪れたのです。
お母さんは、1通の手紙を彼に渡しました。
落ち着いたら渡そうと思っていたそうです。お母さんは、「これを読んで・・・」と言いました。
愛するまさよしくんへ
この手紙を読んでいる頃には私はもういないよね
ごめんね
突然いなくなってしまって
(中略)
七夕の星は綺麗だったよね
もう一回まさよしくんと一緒に見たかった
あの夜、まさよしくんからもらった指輪は
天国まで持っていくからね
(中略)
まさよしくんには前にも言ったけど、
絶対に幸せになってください
じゃないと私は許しません
そして幸せで長生きしてください
まさよしくんの命はまさよしくんだけの
ものではありません
私の命もはいっているから
私の分まで幸せになってください
(中略)
本当はくやしいよ ずっと一緒にいたいよ
死にたくないよ 死にたくない
心が苦しいよ 本当に悔しいよ
ごめんね こんな私で
(中略)
最後に
健康には気をつけて、私の分まで
いっぱい長生きしてください
そして、苦しんでいる人、悲しんでいる人が
いたら幸せを分けてあげてください
生まれ変わったら次は
一緒に幸せになろうね
本当に本当にありがとうございました
大好きで愛してるまさよしくんへ
ひとみより
◇
まさよしくんの誠実さ、優しさ、ひとみさんのあたたかさ、悔しさ、感謝、2人の感情をたどり、心の壁を内側から激しく叩かれて、切なくて、悲しいんだけど、もっともっと、それ以上に感謝の気持ちが溢れ出てきました。
命の大切さ、日々のありがたさ、思いやり、家族の絆、・・・そして愛情。
本当に大切なものをたくさん、たくさん・・・いただきました。ただただ感謝の気持ちでいっぱいでした。
山口正善さん、ひとみさん、ありがとうございました。
【出典】
「ふたりのしるし」 山口正善 サンクチュアリ出版