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「システム思考」で戦略を立てれば、仕事も人生もうまくいく

会社では、さまざまな課題が次々に発生します。

事業の売上が伸びていない。新しい施策をやりたいけど、メンバーを納得させられない。人が足りない。採用がうまくいかない。最近あの人の元気がないけど大丈夫かな。あの人とあの人が揉めているらしい。というか、本当にこのまま今の事業をやってていいのか。新規事業をやるべきなんじゃないか。

などなどなど……。

ジャンルも粒度もバラバラの課題がバーっと押し寄せてくる。会社ってそういうものです。それらの課題すべてに一喜一憂して、個々別々に対応しようとしていたら、絶対にうまくいきません。

これは会社だけでなく、人生でもそうだと思います。

将来のキャリアが見えない。いまの環境に満足していない。転職したいけど踏み切れない。プライベートの時間が足りない。やりたいことができていない。体力が落ちてきた。家族や恋人とうまくいっていない。老後が不安。

そんな悩みをぼんやりと抱えながら、けっきょくいつも目の前の仕事やすべきことに追われてなあなあになり、場当たり的に対処してしまう。

そうやっていると、なかなか思うように前へ進めません。

大切なのは、本当に解決すべき「重要な課題」を見極めることです。

ボトルネックになる重要な課題を見極めて、それを解決すれば、数珠繋ぎですべてが好転していく。最小のコストで、最大の成果を得ることができます。

では、重要な課題を見極めるにはどうすればいいのか?

僕がいつも活用しているのは「システム思考」という理論です。

今回は、システム思考を使って複雑な問題を解決する方法についてまとめてみます。これまでに何度も会社のピンチを救ってくれた思考法です。ぜひ、多くの方の役に立てば幸いです!

エス・エム・エスの先輩方から教わった「システム思考」

「システム思考」とはなんなのか?

ひとことでいうと、目の前の事象について「それ単体」として考えるのではなく、もっと大きな「システムの一部」として考える思考法のことです。

たとえば、とある事業部の売上が伸びていないとき。

「とにかく頑張って売上を上げよう!」と言っても、状況が良くなるケースはあまりありません。「売上が伸びていない」という事象は、その事業部を動かしている「システム」の不備によって生まれていることが多いからです。

売上につながっている「システムの構成要素」は、実はたくさんあります。

担当エリアはどのように組まれているのか?
お客様対応を早く実施できる体制があるか?
各工程ごとのプロセスは言語化されているか?
組織にマッチする仲間が集まっているか?

などなど。。

正しい打ち手を考えるには、全体でバクっと考えるのではなく、システムを構成している要素に目を向けて、適切な課題と向き合うことが大切なんです。

システム思考を身につけると、そういうことに気づくことができます。

目の前の課題に対して「場当たり的」に対処するのではなく「真に適切な打ち手」を考えることができる。

だから、仕事だけでなく人生の戦略を考えるときにも、すごく役に立つんですよね。

僕がシステム思考を知ったのは、新卒でエス・エム・エスに入ったとき。会社や先輩方からすすめてもらった本を読んだのがきっかけでした。

当時読んで、特によかった3冊を載せておきます。

『ザ・ゴール2』がいちばん具体的な、現場の業務改善の話。
『学習する組織』は、会社全体のシステムの話。
『世界はシステムで動く』がいちばん抽象的な、概念の話です。

もし読んでみたい方は上から順番に読むと、具体から抽象へ理解を深められてわかりやすいと思います。

うまくいかない時ほど役に立つ

最初に本を読んだときは「なるほどな〜」と思ったぐらいでした。でもその後、SMSで事業責任者を任せていただいたり、起業して事業をつくったりするようになってから、システム思考のすごさに改めて気づいて、めちゃくちゃ活用するようになりました。

というのも、システム思考って「うまくいかないとき」ほど役に立つんです。

事業がうまくいっていないときって不安なので、ついなにかに頼ったり、誰かのせいにしたくなるんですよね。そういうときに「思いつき」で施策をやってしまうと、事態が余計に悪化しかねません。とりあえず広告を出してみたり、人を増やしたり、新しい拠点をつくったり……。

それをやっちゃうと、すごくコストがかかります。

一度走らせた企画を止めるのは大変です。わーっと拠点をつくってしまってから「これどうやって管理しよう?」みたいになる。本来は発生しなかったはずの、無駄な仕事が発生してしまうんです。

だから僕は、迷ったらいつも「システム思考」に頼ります。

システム思考で状況を整理してから、動く。そうすることで、無駄な打ち手にコストをかけずに済むんです。

モヤモヤしたら「課題マップ」をつくろう

では具体的に、どうやってシステム思考を実践に活かすのか?

僕がいつもやっているのは「課題マップ」を書くことです。

こちらが課題マップ。このあと書き方を解説します!

「なんか最近うまくいってないな……」「なんかモヤモヤするな……」と感じたら、僕はかならずこの「課題マップ」を書くようにしています。

目の前に散らかっている課題を、個々別々にとらえるのではなく、課題どうしの繋がりを整理する。一連の大きなシステムとしてとらえる。

そうすることで「ここさえ解決すれば、全部うまくいきそう!」というレバレッジポイントを見極めることができます。『ぷよぷよ』の連鎖みたいなイメージで、一気に課題を消すことができるんです。

ではさっそく、書き方を解説していきます!

①1枚の紙を用意する(ホワイトボードでも可)

マップは、1枚の紙やホワイトボードのような、大きなところに書きましょう。システムの全体像をパッと一目で把握するためです。

僕の場合、一人で考えるときは方眼紙やノート。メンバーとの1on1などでは、ホワイトボードを使ってます。

②課題をバーっと箇条書きにする

用意ができたら、まずはなんでもいいので、思いつく課題を書き出していきます。粒度はバラバラでOK。箇条書きでとにかく洗い出します。

今回は解説用に、架空の課題をいくつか書いてみました。

こんな感じ。紙の右上あたりに書くとよいです。

ポイントは、課題をかならず「否定型」で書くことです。

たとえば「〇〇がやりたい」ではなく、「〇〇がやりたいのに、やれていない」と書きます。ぼんやり考えていることを明確に「課題化」していきましょう。

③課題どうしを「→」で繋げながら、因果関係を整理する

次に、出てきた課題どうしを、因果関係の矢印で繋いでいきます。

「〇〇だから(原因)→〇〇だ(結果)」となるように、矢印を書き込んでみてください。

小さくてごめんなさい!クリックで拡大できます。

「採用がうまくいかない」から、→「仲間が足りない」「仲間が足りない」から、→「新規事業がやれていない」「クライアント開拓ができていない」みたいな感じです。

なんとなく大きそうな課題から書いていくとやりやすいと思います。この場合は「仲間が足りない」を最初に書きました。

あと、この時点では、無理にすべての課題を繋げなくても大丈夫です。

このときに気をつけてほしいのは、複数の課題を一つの課題としてまとめないこと。上記の例だと、

×悪い例:オペレーションを刷新したいが、メンバーを納得させられない。
○良い例:①オペレーションを刷新したいが、できていない。②メンバーを納得させられていない。

このように、課題を最小単位まで分解して書くのがポイントです。

④因果関係を書き加えていく

次に、それぞれの課題について因果を深掘りして、書き加えていきます。

赤字が新しく書き加えたところ。※本当はもっとMECEなほうがいいのですが、細かくなりすぎてしまうため、今回は簡略化しています。

「採用がうまくいかない」のはなぜだろう?
……ダイレクトリクルーティングを使っているけど、そこからの採用が少ないからだ。

じゃあ、ダイレクト経由の採用が少ないのはなぜだろう?
……事業や会社の魅力が伝わっていないからだ。あと、スカウトの文面もあまり磨き込めていないな。

こんな感じで、課題に対して「なぜ?」を繰り返していきます。

そうすると、最初にバーっと書き出した時点ではまだ洗い出せていなかった課題も、きちんと洗い出すことができます。

さらに、③の時点ではどことも繋がっていなかった課題も、因果を書き加えていくと繋がりが見えてくるんです。

たとえば「〇〇さんのモチベ低下」の原因は、「対話の時間が足りていない」こと。「対話の時間が足りていない」原因は、「自分が忙しくて時間を取れない」こと。「自分が忙しくて時間を取れない」原因は、「仲間が足りていない」こと。

こんな感じで、一見すると関係ないように見える課題どうしも、実は繋がっていることが多いんです。

「もうこれ以上は書き込めないはず」と思うまで、ひたすら矢印を繋いでみてください。そうすると、だんだん課題が分解されて「具体的な原因」がわかってくるはずです。

⑤レバレッジポイントを見極める

ここまできたら、改めて課題マップを見てみましょう。

「因果の矢印が、いちばん多く繋がっている課題」があると思います。

それこそがレバレッジポイントとなっている、重要度の高い課題です。

今回のマップでは「仲間が足りない」という課題に最も矢印が集まっていて、大きなボトルネックであることがわかります。ここさえなんとかできれば、売上や新規事業などの他の課題も、一気に解決に向かっていきそうです。

次点で「オペレーション刷新」や「事業の未来像の共有」あたりも矢印が多く、重要度が高そうです。

逆に「新規事業がやれていない」あたりは矢印が少ないので、そこまで緊急の課題ではないことがわかります。

⑥マップの外側の課題に対して、打ち手を考える

最後に、課題に対して解決策を考えていきます。

マップの外側のほうの項目は、具体的な「How」が浮かびやすい粒度にまで分解されているはずです。書けそうなところから、打ち手を書き込んでみましょう。

打ち手を書き込んでみた状態(点線の矢印)。

どんな打ち手にするかは自分次第です。今回は仮で上記のように解決策を書き込んでみましたが、会社の状況や戦略によって、内容は変わってくると思います。

打ち手が見えてきたら、あとは「実行する順番」を組み立てていきます。

これが実はけっこう大切です。順番を間違えると、1つの施策に時間をかけすぎてなかなか結果が出なかったり、逆に一気にやりすぎて組織崩壊につながったりする可能性もあります。

順番を考えるときのポイントは「工数」と「インパクト」です。

たとえば「スカウト文面の作り込み」や「業務の言語化」。これらは「インパクトはそこまで大きくないぶん、工数もかからない」打ち手です。なので、いますぐにサクッと取りかかるのがよさそうです。

一方で「メンバーと対話しながらオペレーションを変える」や「ミッションの再定義と共有」は、実現したときのインパクトが大きいですが、工数もけっこうかかります。なので、他の軽めの打ち手を実行しつつ、じわじわと進めていくのがよさそうです。

そうやって時間軸を意識して、流れをつくりながら打ち手を組み立てていくと、かなり実現性の高い戦略を立てることができると思います。

「自分の会社を殺す方法」をつねに考えている

課題マップを書くのって、けっこう苦しい作業でもあるんです。

「これがうまくいかない」「これもうまくいかない」「これもうまくいかない」って、ぜんぶ否定系で書いていくので。うまくいかないことについて考えるのって、普通にイヤですよね。心理的に抵抗がある。それは人間なら当然のことです。

僕も自分の課題マップには、絶対に人に見せたくないような恥ずかしいことがたくさん書いてあります。笑

でも、この苦しい作業がやっぱり大事なんです。

僕はいつも「自分はどうやったら死ぬか?」を考えるようにしています。経営なら「プレックスをどうやったら殺せるか?」を自分なりに考える。それで「じゃあ、殺されないためにはどうすればいいか?」という視点で、打ち手を用意するんです。

そうすれば、なにがあっても死なない状態になれます。

うまくいっていることについては、ぶっちゃけあまり考えなくていいんですよね。特になにもしなくても、うまくいっているので。

大切なのは「うまくいかないこと」について考えること。その中でもいちばん大きな課題を見つけて、的確に潰していくことが重要だと思います。

事業立ち上げもシステム思考でうまくいく

ちなみにシステム思考は、実はもうすこし別の場面でも役立ちます。

事業のビジネスモデルのような、大きな構想について考えるときです。

ジェフ・ベゾスがAmazonをつくる直前に、紙ナプキンに書いたといわれている有名な図があります。「フライホイール」と呼ばれるものです。

引用元:https://www.capa.co.jp/archives/29136

コストを抑える仕組み(左上のLOWER COST STRUCTURE)を作ることで、顧客に低価格(LOWER PRICES)で商品を提供する。そうすると、顧客体験(CUSTOMER EXPERIENCE)がよくなります。

顧客体験がいいと、お客さんが再び買い物をするため、商品全体の取引量(TRAFFIC)が増加します。取引量が増えると、販売企業(SELLERS)がたくさん参入します。すると、商品の品揃え(Selection)も増えます。

そして、品揃えが豊富だと、さらに顧客体験がよくなり、また取引量が増え、企業が増え、さらに品揃えがよくなる。

このサイクルが回ることで、Amazonの成長(GROWTH)が自動的に加速しつづけるシステムになっているんですね。

ビジネスの「レバレッジポイント」を見極める

この図、さっき紹介した「課題マップ」にかなり似ていますよね。実は考え方としてはほとんど変わらないんです。

引用元:https://www.capa.co.jp/archives/29136

課題マップでは、重要な課題を見つけるために「うまくいかないこと」を書き出していきました。一方で、ビジネスモデルについて考えるときは「事業を構成する主な要素」をマップに書き出して、あとは同じように因果の矢印で結んでいきます。

そうすると、その事業にとっていちばん重要なレバレッジポイントがわかります。

Amazonの場合は、矢印が3つ集まっている「顧客体験」がレバレッジポイントです。顧客体験がよければすべてがうまく回るし、逆にここが悪くなると一気に停滞する。

だからAmazonは、ミッションにも「顧客第一主義」を掲げています。

顧客体験をよくすることがいちばんレバレッジが効く。だから彼らはすべての施策をそこに寄せています。お客さんにとって「安くて、早くて、品揃えがいい」状態をつくる。そのために、自社で物流倉庫をそろえたりしているわけです。

自分たちのビジネスを成り立たせているものはなんなのか。そこを把握しておくことで、注視すべきポイントがわかり、戦略も立てやすくなるんです。

世界をシステムでとらえると、やるべきことが見えてくる

ここまでいろいろ書きましたが、ざっくりまとめると以下のような感じかなと。

システム思考の活用方法には、次の2種類がある。

①「うまくいかないこと」を書き出す、課題解決型。
②「要素どうしの関係性」を書き出す、構造理解型。

基本的には、②を使ってシステム全体の構造を理解し、特に注視すべき「レバレッジポイント」を把握しておく。
そのうえで戦略を立て、事業などを進めていき、課題が発生したらその都度、①を使って効率的に解決する。

このようにしてシステム思考を実践すると、かなり強い状態になれるはずです。

レバレッジポイントとなる部分だけに注力すればいいので、仕事がすごく減る。しかも、成果がめっちゃ出る。

「課題を洗い出す」ところまでは結構みんなやるのですが、「どの課題の重要度が高いか?」まで考えられる人は少ない気がします。課題や要素が多すぎてよくわからないから、とりあえず先に動いてしまう。

そこを整理して、やるべきことをクリアにできるのが、システム思考の魅力なのかなと思います。

ゆっくり考えて、すばやく動こう

最近読んだ『BIG THINGS』という本に、おもしろいことが書いてありました。

「すばやく考え、ゆっくり動く」人は、絶対に失敗する。
「ゆっくり考え、すばやく動く」人こそが成功する。

これは本当にその通りだなあと思います。

なにかをはじめる前に、徹底的に考えている人は、ババっとすばやく動いても失敗せずにやれるんです。もし途中でうまくいかなくなっても、その場合の対応策までちゃんと見えているので。

一方で、よさげなプランだけをパッと考えて、詳細を詰めないまま動いて、結局わからなくなって止まってしまうと失敗しやすいです。モタモタしているうちに競合が出てきたり、補助金が減ったり、地震が起こったり、そういう想定外のことで一気に崩れて、大失敗するケースがよくある。

だからこそ、事前に考え抜くことがとても重要なんです。仮説を立てて、頭の中で動くぶんにはコストがかかりませんが、実際にリアルで動くと時間もお金もめちゃかかりますから。

ここで紹介したマップを使って、先にできるだけすべてのリスクを想定しておく

システム思考を極めれば、想定できる範囲も精度もどんどん伸びていきます。

仕事や人生がうまくいかないときや、なにか大きなことをやりたいとき。みなさんもぜひ、システム思考を活用して「ゆっくり考え、すばやく動く」をやってみてほしいなと思います!

ここまで読んでくださってありがとうございます。
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