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実践できなくていい、敏感な特性を「知っている」だけでいい【長岡真意子『敏感っ子を育てるママの不安がなくなる本』】
『ひといちばい敏感な子』に代表されるHSC(Highly Sensitive Child)に関する書籍はHSP(Highly Sensitive Person)のそれに比べ、まだまだ少ない。その中でも、この本はタイトルが示すように「HSCを育てるお母さん」に向けた一冊である。
この本の著者は5人の子どもを持つお母さんで、その5人が全員敏感な特性を持つHSC、しかも5人それぞれ敏感に反応するポイントが違うということも特筆される。
さて、この本で注目したいのは、あと数ページで「おわりに」を迎える本の終盤も終盤に記されている、ある小見出しである。
実践できなくても、「知っている」だけでいい
HSCを含めた子育ての本には、こんな反応を示したらこういう対応をしましょうね、ということがよく書いてある。ご多分に漏れず、この本にも敏感な子どもへの関わり方が9つのポイントに絞って紹介されている。さらに冒頭で取り上げた『ひといちばい敏感な子』など、対応策のあまりの多さに書評サイトを見れば「こんなのいちいち対応できるわけがない!」とお怒りのユーザーもまま見かける。
そんな感想を寄せる人の中には、「本を読んで対処法を知ったはずなのに、いざそういう状況になったときにまるでなにも役に立たなかった」と、自責の念に駆られた人もいるのかもしれない。でも実際「知っているけど実際に身体が動かない」ということは往々にしてよくある話である。
なので、たとえ実践できなくてもいい、とりあえずどのような関わりをすればいいのかがわかっているだけで全然違う、と言及されている。出来事や物事を違う視点で捉え直すことを心理学用語で「リフレーミング」というが、まさにこれはリフレーミングの典型的な一例だと思う。
「実践できなくても、「知っている」だけでいい」という点に限らず、この本では前述のようにお母さん向けに書かれているため、「お母さんのセルフケア」ということがものすごく大事に扱われている。言い方は悪いが子どもの敏感さが、親の許容範囲を超えるとどうしても親のストレスが溜まってしまう。「実践できない」というのも間違いなくここに該当する。
ここで大事なことは、「ストレスが溜まってしまう」のが悪なのではなく、「ストレスを溜めてイライラした状態で行動する」「相手にイライラを思いっきりぶつけてしまう」ことが問題だ、ということである。意外とここを履き違えている人も多いのではないか。
そのために、たとえば一呼吸置いてみるとか、子どものみならずお母さん自身を守る、大切にする方法も章立てて説明されている。こうした目線からのHSC子育て本はなかなかない。子どもへの関わり方のみならず、自分の考え方を変えたい、子どもと自分互いにもう少しラクになれる関わり方を探しているお母さんにオススメしたい1冊である。