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私の創作作品

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記事一覧

【ショート小説】ただ歩き続けるだけの日々で

「お疲れ様でした」
「お疲れ様」
「今日もありがとう、また来週も頼むね」

今日の仕事が終わった。終業15分前のチャイムが鳴ったあと、一度食堂に集まって、上役からの簡単な今日の総括が述べられてから、それぞれが帰途につく。

食堂を出るときに、顔見知りの同僚と声を掛け合う。リーダーからは今日のねぎらいと今後への言葉が掛けられる。

今日も1日が終わった。

最寄りの駅に向かう社員バスに乗る。バスで1

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【ショート小説】心に突き刺さった黒いつらら

【ショート小説】心に突き刺さった黒いつらら

「あんたは本当に優しい人だね」

おばあさんは、しわくちゃな手で横に座っている私の手を握る。私は笑顔で「そんなことないですよ、褒めすぎないでください」なんて返事をしながらも、心の中にズドンと大きなどす黒い、先の尖ったつららのようなものが突き刺さるのを感じる。

私はそんな優しい人じゃない。私は優しい人の仮面を付けているだけの化け物だ。怪物だ。本当は、、、、

そのおばあさんのことなんて、、、、

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【小説】名もなき命の果て

【小説】名もなき命の果て

あらすじ仕事でのつまずきから引きこもりになってしまった主人公は、実家で両親とともに生活していた。毎日、自分の部屋にこもりネット三昧の日々を送っていたが、ある日、母親から父親の健康不安を告げられて、少し将来を考えて欲しいと言われる。

プログラマーとしての腕を生かして在宅での仕事を請け負うようになった息子に対して、父親は自分が勤務する会社のシステム保守の仕事を在宅でもいいからしないかと持ちかけて、息

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【ショート小説】雨粒に濡れる孤独

【ショート小説】雨粒に濡れる孤独

会社帰りの道。少し強めの雨が降っていて、雨粒が傘を叩く。朝は晴れていたから、レインシューズは履いていない。パンプスの中に容赦なく雨が染み込んでくる。

ストッキングに包まれた足が徐々に湿っていき、ついには歩くたびにパンプスの中が「グジョ、グジョ」というようになってしまった。

足元の気持ち悪さを感じながらも、私は雨音を楽しんでいた。

不規則なリズムで傘を叩く雨粒の音。地面に跳ねる雨粒。街灯やネオ

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【ショート小説】イトスギ的な人生に

【ショート小説】イトスギ的な人生に

会社から帰ってきて、夕食を終え一息ついた私は、パソコンを立ち上げ副業のWebライティングの編集画面を開いた。

私は副業でWebライターをしている。いわゆる、「こたつ記事」ってやつを書く仕事だ。

幸いなことに、今勤めている会社はホワイト企業で残業は年に数回しかない。その代わり残業代は稼げない。同業の同年代としては悪くない給料だが、東京での一人暮らしには少々キツイ。

会社が副業を許可しているので

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【ショート小説】踏み潰すべき若芽もあるだろう

【ショート小説】踏み潰すべき若芽もあるだろう

(作者注:この話はフィクションです。モデルなどもありません。)

この話はこちらの話のもう一方の視点です。

本文ここから********

私は佐藤。中学校の社会科教師をしている。今は校長だ。

最近、ちょっと困ったことが起きてしまった。学校の裏サイトに、私についての悪い噂が書き込まれてしまったのだ。

書き込みはこんな書き込みだ。

「今、ここの校長しているSugar先生って、私が中学の時の担

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【小説】それでも時間は流れて空はどこまでも続いている

【小説】それでも時間は流れて空はどこまでも続いている

作:雪森由紀仁

作者まえがき作中に出てくる登場人物や会社、設定はすべて架空のものです。同名の人物や団体が存在していても、本作品とは一切関係ありません。

本作品にはショッキングな描写がありますが、このような事態や登場人物の行動を作者として肯定するものではありません。また、作者としてショッキングな場面のような事態を読者が起こすことを助長する意図は一切ありません。

医療、保険、法律に関する部分は作

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【小説】闇はもっと黒く深化させるべきものか?

【小説】闇はもっと黒く深化させるべきものか?

作者まえがきこの小説はフィクションであり、登場人物、事件、場所などはすべて架空の設定です。文中には凄惨な場面が含まれていますが、これらの行為を推奨するものではありません。この小説は、このような出来事をどのように防ぐことができるかという問題意識から書かれたものです。

僭越ながら、読者の皆さまに、この作品を通じて、社会における問題点や改善の必要性について考えるきっかけになればと願っています。

あら

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