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「教員の質保証」と「教員不足解消」は両立可能か

以下の記事をTwitterで見かけましたので、この件について考えたいと思います。

この提言に関しては、特定の政党やその支持者の教員に対する執念、怨念を感じる部分もありますが、ここでは冷静に考察していきたいと思います。

「教員の質」の定義と評価について

教員の質とはどのように定義するのでしょうか。この提言案においては以下の様に定義が示されています。

教育力は、大きく分ければ4つある。1つは、教員自身の倫理感、社会性、使命感。2つ目は担当科目の知識や理解があること。3つ目は教育方法の確立。4つ目は、非常に大きな問題だけれども、生徒との向き合い方。

これらのものを総合して「教員の質」と定義しています。

書いている内容としては至極全うではあります。

さて、問題はこれを「誰が」「どのように」「定量的に」、かつ「公平に」評価するのでしょうか。

評価に関してはそもそもが判断が難しいのが現実です。

採用時ならばともかく、現職として働いている教員の資質を評価する場合はなおさらでしょう。

場合によっては失職になりうる仕組みを、実効性を持たせた上で実装することは非常に困難のように思います。

「教員の質保証」は研修で可能か

次にこの提言で考えているような研修で質の保証は可能かどうかを考えます。

この記事の中で伊藤信太郎座長(衆院議員)は以下の様に話しています。

研修を受けようとしない教員や、研修を受けても水準以上の教育力が確保できない教員への対処について、「提言では3つの方法を示している」という。「1つは再研修。もう1つは、学校現場などで教員以外の仕事をやってもらうこと。それでも駄目な場合は、分限処分によって、教壇に立たせなくする。

果たして、こうした仕組みで提言内で定義された「教員の質」を保つことは可能でしょうか。

批判の多かった教員免許更新制ですが、少なくとも免許更新をしない場合は自動的に失職するという極めて強い強制力を持っていました。

しかし、実際にはその査定は通過儀礼的なものに過ぎず、猥褻事案等を起こしたり、パワハラ教員などの問題教員を洗いだすことはできていませんでした。

今回の研修の場合、業務命令としての研修となれば受けないという状況は考えにくく、おそらくは受講率が100%になるでしょう。

また、更新制の研修実績や現場での教員不足を考慮すれば、実質的に不合格を出すことは難しいのではないでしょうか。

「質の保証」は自然淘汰と競争によってなされるべき

「教員の質の保証」を担保したいのであれば、教員という職業の競争率を上げることが不可欠です。

現在の様に採用時の競争ではなく、教員の労働市場の流動化によってなされることが必要なのではないでしょうか。

私が勤務するような私学の場合、3年間の有期契約の継続勤務の後、それ以後の継続採用を決定する学校が多いようです。

この仕組自体は非常に合理的で、労使双方の選択権が行使できるという点でも非常に効率的と感じています。

また、現場で一緒に働く教員の声を採用の参考にするケースも多いため、ミスマッチを防ぐ効果が期待できます。

公立学校の場合、現在は有期契約の講師経験者に対し一定の優遇措置は働くようですが、あまり効果的な運用はできていないようです。

また、新規採用者の1年間の「条件附採用期間」も形骸化しているようです。

そもそも1年間では判断が本人も周囲も難しいのでは無いでしょうか。

以上のことから、採用及び解雇の弾力化を行い、同時に教員の待遇改善うことで労働市場に刺激を与えることこそが「教員の質の保証」に最も効果的な手段では無いかと私は考えます。

そしてそれは必然的に「教員不足の解消」にも繋がっていくのではないでしょうか。

私学は公立学校の人気が上がって問題ないのか

この点に関して、私は採用担当者でもなければ人事権を持っているわけでもないので、本当の実情を答えることはできません。
(知っていればここに書けないとも思いますが…)

ただ、現時点での私学の採用は縁故などで多方面に声をかけている状況です。

自分自身も、そうした教員が不足からの声掛けをいただいたことからも間違いないようです。

かつて公教育の人気が高かった頃は多くの応募があったという話も耳にします。

まずは教員という仕事の魅力を高めることが、不適格教員を減らす一番の特効薬に思えるのですが…


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