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「始めに過去問ありき」
教員は授業を行うだけが仕事でありません。
具体的には教科担当だけでなく担任として、生徒の大学受験に向けての学習をマネジメントを行っています。
(事務仕事などももちろんありますが)
大学受験を目指す生徒(特に高3に上がってすぐの生徒や、難関大学に向けて受験勉強を始めた生徒)との面談やホームルームでの声掛けで常に口にするのが
「始めに過去問ありき」
という言葉です。
どのぐらいの知識を要求されているか
大学受験という範囲で考えた時、知識を習得する目的は何でしょうか。
当然ながら入試問題で解答できるようになるため、思考材料として知識が必要ということになります。
つまり、どう使うか、どの程度の分量や深さを必要としているかを理解せずに知識の習得はあまりにも無目的であり、効率性の低い学習であると言えます。
そうした点から考えた時、過去問をまず初めにしっかりと確認することで、志望大学ではどんな知識や内容が問われるか、ぐらいの分量を求められるかを知ることで習得する分量を推測することができます。
また、問題の出題方式による習得する知識やスキルの方向性を知ることもできます。
例えば、英語では文法熟語問題の有無、和文英訳や要約、英作文など大学によって特徴があります。
歴史系の場合は記述問題があるかどうかは学習方針を大きく変える要素になります。
数学の場合も、私大型の穴埋め形式か、解答記述形式か、小問誘導の有無などの種類で学習計画を変えていく必要があります。
(とはいえ、国公立大学の数学の場合、難度の高低はあれども、文系教科ほどの違いは少ないため、学習量と深さに注意するのが主にはなります)
過去問を解くことは、その後の計画や効率的な学習において必要な準備と言えるでしょう。
現時点での自分との差を知る
高3の4月など、受験勉強を開始した時点で過去問を解いても、まともに合格に至る得点を取れる生徒はほとんど存在しません。
単元別で知らない内容が存在する理数系科目や社会では当然全く手が出ない分野が発生するため、過去問を解くことで現時点での学習進度との比較が容易に行えるでしょう。
英語などでも全く文章が読み取れないレベルから、読めてはいるが解答できないのか、解答できるがピントがずれているのか、同じ不正解の答案でもその内容が大きく異なることが理解できれば、現時点での学習に役立てることは簡単です。
過去問演習を行うことは、自分の学習段階の不足を明確に意識することができるため、学習へのモチベーションを奮い立たせるきっかけになるでしょう。
志望大学の赤本を全て買うべきか
過去問と言えば「赤本」を思い浮かべる人も多いでしょう。
書店の一角に平積みされた赤い表紙を見たことがないという人はほとんどいないはずです。
正確には教学社から出ている「大学入試シリーズ」というのが正式名称です。(まあ自分達でも「赤本」をサイト名などにも使っているようですが)
これらは一冊当たり2000円強もするため、受験開始時点で志望大学が定まっていないときに何冊も購入すると、かなりの費用がかかります。
そこで使いたいのが東進が運営する「過去問データベース」です。
こちらであれば、有名大学の過去問を無料で利用することができます。氏名やメールアドレスなど個人情報の登録だけで利用できることを考えると、ともかく問題の内容を確認したい段階においては非常におすすめできるサービスです。
勉強法はいろいろあれども
大学受験に関する勉強法は諸説ありますし、勉強法の本や動画なども溢れています。
私の高校時代の20年以上前と比較すると、そうした情報に触れる機会が増えたという意味では現代の生徒がうらやましく思います。
しかし、溢れた情報の取捨選択という新たな悩みも発生しているようです。
そうした状況であっても、過去問から始める学習というのはどの勉強法にいても勧められる、最大公約数的な学習法です。
また高校、大学などの受験生だけでなく、資格試験などにも活用できる方法でもあります。
指導歴を重ね、教科や教材の知識が増えていくと、ややもすれば教科知識のガラパゴス化を起こしがちになります。そうした経験値を貯めた指導者側にもまた意識する必要がある言葉が
「始めに過去問ありき」
なのかもしれません。