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大手予備校校舎削減に見る大学受験業界の群雄割拠時代の到来と学校教員に求められるもの
駿台校舎削減のニュース
先日、大手予備校の一角を担う駿台予備学校が首都圏の小規模校舎を中心に閉校しているというニュースが話題になりました。
ここ数年、大手予備校が苦戦しているという話は業界では話題になっていました。
私の勤務校に通う現役生の場合、大手に通っている生徒はほとんどいないのが実情です。
もちろん、私の勤務校から大手予備校までは多少の距離があるため、以前からそれほど多いわけではありませんでしたが、最近はそこに拍車をかける形で減少しています。
福岡市内の予備校関係の知人の話を聞く限りでも、減少傾向にあるのは間違いないようです。
減少する浪人生
現役生の受講者よりも深刻なのは、浪人生のそもそもの減少です。
2022年度大学入学共通テストにおいては浪人生は10万人を割り込んでおり、現役合格を目指す方向にシフトしています。
九州においては、九州大学の現役率が70%を超えるなど浪人率は年々減少しています。
そうした動きの一方で、存在感を示しつつあるのが現役生を対象にした塾や予備校です。
小都市、小教室の個別対応、高料金
以前書いたのが以下の2つの記事です。
そこでも触れましたが、現在勢いを感じるのが「東進衛星予備校」と「武田塾」です。
どちらも大手予備校のように大都市に自社ビル支店を構えて集客するのではなく、空きビルの一角の居抜き物件にフランチャイズで塾を出店する方式です。
オンライン形式や学習管理メインのため、講師の確保が不要で一斉授業を行わないため狭小物件でも可能というものです。
以前もこの手の形式の小中学生対象の個別指導塾はありましたが、オンライン授業やWeb会議システムなどが充実したため、大学受験の対応が中小都市の小教室でもできるようになりました。
ちなみに、これらの塾は同じ大手と同じ時間の受講の場合割高になります。1対多から1対1にシフトする以上、コスト増は避けられないでしょう。
推薦や総合選抜に対応した塾・予備校
それに加えてAO入試(現在は総合型選抜)や推薦型選抜を専門に指導する塾が伸びてきています。
国公立大学の入学定員の5割を一般選抜以外の選抜方式とするという国大協の数値目標とも合致する動きです。
私立地方中堅進学校の変化
こうした塾・予備校業界が群雄割拠の戦国時代に突入する中、私たちのような私学の進学校も無関係ではいられません。
新しい受験形式への対応をはっきりと打ち出さなければ生き残ることはできないでしょう。
しかし、それと同時に塾との共存を図る必要もあるでしょう。労働環境の改善が叫ばれる中、長時間の補修指導などは難しくなっていますし、そのニーズも低下しています。
新しい学力観やそこから広がるビジョンを描くことはもちろん重要ですが、依然として学歴信仰、偏差値信仰は根深く、進学実績をもとに進学する学校を選ぶ生徒や保護者は一定数存在するのも事実です。
理想とする教育と、現実的な数字の間で妥協点を探っていくことが私学の生き残りには不可欠でしょう。
そうした状況において総合型や推薦型の指導にも力を入れつつ、一般選抜の対策を万全にするためには、塾・予備校との連携は重要になるでしょう。
先触れは8年前、2014年にあった
このような受験業界の大変革の先触れを示す出来事が実は8年前にありました。
当時、全国27か所に校舎を構えていた代々木ゼミナールが20校を閉鎖しました。
その時は東進が勢いを増してきた時期でもあり、「三大予備校の中でいち早く負けが確定した代ゼミ」という評価が一般的でした。
しかし、今考えるといち早くスリム化して時代の変化に備えていたのでは、とも思えてきます。自社ビルで運営していた校舎の大半は売却可能な不動産であり、ホテルに転用可能な構造をしていたという話は有名です。
真実は不明ですが、実際に名古屋や京都の跡ビルはホテルに転用されています。
個別化やオンライン指導が本格化する前に軸足を移す決断をしていたのだとしたら…恐ろしい。
多くの選択肢から最適解を選び出す
生徒や保護者の視点から見れば、多くの選択肢から選択ができる良い時代なのかもしれません。
逆に多すぎる選択肢に混乱している人もいるでしょう。
自分の適性を見極めて、自分に合った入試制度を活用し、それを利用して学力をさらに高めることが求められています。
学校教員としての本務は、もちろん学校における学習指導や進路指導などです。当然、入試制度に合わせて指導をすることは大前提ではあります。
しかし、それに加えて塾や予備校に通うべきか、通うならばどのような選択肢があり、どのような長所・短所があるのかぐらいのアドバイスができる知識を持つこと、医師で言えば専門医へつなぐ総合診療医的なポジションが教員には求められているのかもしれません。