『ライオンのおやつ』 -小川 糸- を読んで
あらすじ
「人生の最後に食べたいおやつは何ですか?」
若くして余命を告げられた主人公・雫は、瀬戸内の美しい島にあるホスピス「ライオンの家」で、残された時間を静かに過ごすことを選びます。
このホスピスでは、毎週日曜日に入居者がリクエストした「おやつ」を楽しむ特別な時間があり、雫もまたそのおやつの選択を迷い続けます。
穏やかな景色の中、雫は自分の人生を振り返り、本当にしたかったことを見つめ直しながら、少しずつ死と向き合っていくのです。
感想
生と死に静かに向き合う物語でありながら、温かさや優しさに満ちた作品でした。
ホスピスで過ごす雫と他の入居者たちの様子が、とても繊細に描かれており、特に雫の内面描写には心を打たれました。
病状が進行し、感覚が曖昧になっていく様子もリアルでありながらも、決して悲壮感だけではなく、どこか静かな美しさが感じられました。
また、ホスピスのスタッフたち、特にマドンナという存在が、この物語に大きな温もりを与えていたと思います。
彼らが入居者に対して抱く深い敬意と優しさが、読者にも安心感をもたらし、死が必ずしも恐ろしいものではなく、人生の一部として自然に受け入れられることを教えてくれるのかと思いました。
雫が最後に選ぶおやつ、そしてその選択が象徴する彼女の心の変化は、胸に深く響きました。
どんな人におすすめか
この作品は、人生や死について深く考えることに興味がある方や、家族や友人との絆を大切に感じている方に特におすすめです。
心に抱えた孤独や不安を持つ人々にも寄り添ってくれる一冊です。死を描いた物語でありながら、重すぎず、どこか穏やかな心持ちで読み進めることができるので、読後には優しい余韻が残るでしょう。
涙なしでは読めないシーンも多いですが、その涙は決して悲しみだけのものではなく、今を大切に生きることの大切さを思い出させてくれるものです。
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