本にまつわる随想録 『リカバリー・カバヒコ(青山美智子 著)』
本屋が好きだ。
出先で本屋を見つけると、つい立ち寄ってしまい、本を購入してしまうなんてことはよくあって。
先日の写真撮影の旅行でも、隙間時間に本屋に立ち寄り、数冊購入してしまった。
そのうちの一冊が、青山美智子さんの「リカバリー・カバヒコ」だ。
「第一話 奏斗の頭」は、思わずヒュッと息を呑んでしまった。
この奏斗の痛みは、一度目の挫折を味わったあの頃の自分を思い出させたからだ。
それぞれの話で、その節目で感じた大小の痛みや苦しさを思い出すけれど、物語の中の彼らが「治したいところ」の本質に気づき、克服し、少しだけ強くなって再生していく様を見届けることによって、自分の中で昇華できていなかった過去の自分の蟠りをも温かく包み込んでくれ、再生してくれる。
そんな優しさのある本だ。
以前に、「私のこと②」で適応障害を克服した話を書いたけれど、この時の私は、克服したのではなくて再生していたんだなと思う。
元々強い人なんていない、と思う。
誰しもが小さな痛みを感じ、それをリカバリーしながら日々生きている。
人生は、小さなリカバリーの繰り返し。
この本は、誰もが日々の生活の中で抱く小さな心の痛みにそっと寄り添ってくれる。
素敵なイラストは、ソーさんの作品をお借りしました。
ご覧いただきありがとうございました。
またお会いできる日を楽しみにしています。 緑川