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5.介護がおわってから

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#母の死

サイン

サイン

特に気に留めることなく
過ぎていったささやかな出来事

それは
もしかして
何か意味のある事
ではなかったのかと
後になってから思ういくつかのこと

いつものように
静かに座って
会社で仕事を片付けていると

トク、トク、トクと
自分の心臓の鼓動が感じられ
そしてそれが段々と小さくなって
次第に途切れていくのを
時々感じるようになり

1度医者に診てもらった方がいいかもしれない
漠然とそう思いなが

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母の遺伝子

母の遺伝子

叔母から
母の初婚の相手は
背の高い人だと聞いていたが

時間より少し前に
待ち合わせた場所に着いて
あたりを見回すと
それらしき人は見当たらなかった

待ち合わせの相手である
母の最初の子供の
その人については

家にあったアルバムの中の
小さな子供の頃の写真と

名前については
母に送ってくれた
その人自身が編集に携わった
ある本から
知ったのだったかどうか忘れたが

ネットで検索をしてみると

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無力な存在

無力な存在

母の表情が乏しくなり
何もしゃべらないことも多くなってきた時に
ふとした拍子に
少しでも表情がほぐれて笑顔が見れると
嬉しくなった

母のおむつ交換の時に
おむつを取ったままベッドに座らせていたら
母が尿を漏らしてしまい
ベッドの下まで垂れて
床まで濡らしてしまったが

こんな格好のまま座らせておいて
身体が冷えてしまったのかもしれない
自分が母を世話して
しっかり守っていかなくてはいけない
と思

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母が亡くなった夜に浮いた話

母が亡くなった夜に浮いた話

母が亡くなった夜

私が夜ベッドで寝ていると
急に身体が10センチくらい
真上に宙に浮いた感じがした

そしていきなり
寝ている身体の方向が90度ガクッと変わり

寝たまま浮いている身体が
足の方向に部屋の隅まで
ゴォーっという感じで
すごいスピードで進んでいった

だから今、自分がいるのは
寝た時の場所から
かなり移動しているはずで

それを確認したいと思い
目を開けようとしたが
開けられなかっ

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書きかけの寄せ書き

書きかけの寄せ書き

「早く元気になりますように」
「またお会いするのを楽しみしています」

母が亡くなって
自宅に安置されている間に
グループホームの方が届けてくれた
母の顔写真が真ん中に貼られた
寄せ書きの色紙は

その死があまりにも急だったことを物語るように
未完成で余白部分も多く

翌月の母の誕生日のために
どんなケーキを作ろうかと
考えていてくれていたことも
グループホームの方が
話してくれた

父の時もそう

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