
🎐 一期一会
フォトグラファーの北山さとです。
「とっておきの京都手帖」、編集・撮影を担当しています。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
私は自身のホームページのリニューアルをやっとの思いでひと段落させ、夏休みの宿題を早々に終わらせたような気分で今朝を迎えた。
両手を挙げ伸びをして、「清々しい朝だ」と窓辺に立つところまでは良かったが、あまりの太陽のギラつきに、急に萎れた草花のようにうなだれた。
暑い暑い夏は、立秋を迎えようがまだまだ続いている。
祇園祭を終え、先月を振り返ると、嬉しい出会いもたくさんあった。
前祭の山鉾巡行の日、私は「『祇園祭』の今」を支える人々のワンシーンを捉えたいと、ベストショットが撮れる場所を自分なりに探し、構えていた。
そこへ、立派なカメラを持った方が来られた。
電話されながら、どうやら撮影場所を探しているようだった。
あまりに一生懸命なご様子だったので、私は場所を譲った。
何度もお礼を言われ、お話を聞いていると、その方は長刀鉾のお稚児さんのお父様のご友人で、お稚児さんの良い瞬間を写真に収めたいと、あちらこちらに先回りしておられたとのこと。
チームワークの汗だく奔走劇だ。
今年の長刀鉾のお稚児さんは、
洛央小学校 6年 西川雅基さん(11歳)。
お稚児さん発表会見の折、「テレビの方を向かって喋ってもらえますか?」との大人の要望に、緊張しながらも笑顔を忘れず頷き、
「しっかり気を引き締めて頑張ります」
と、意気込みを聞かせてくれたのをよく覚えている。
大阪から来られた、この汗だく奔走カメラマン・ナイスガイのSさんと、SNSでも繋がることができ、ご丁寧にも喜びのメッセージをその日のお昼にいただいた。
彼が喜ばれている様子に、私もまた嬉しくなった。

お稚児さんの西川雅基さんと禿さんたちがばっちり収まっている
撮影 奔走カメラマンSさん
2024年7月17日
私のこのコラムに、Sさんとの出会いを掲載させていただいた旨をお伝えすると、とても喜んでくださり、ベストショットの提供までしてくれた。
Sさんと、先月以来のちょっぴりお久しぶりのやりとり再開に、私は改めて良い人に出会えたと、その嬉しさに心躍り、彼のフットワークの軽さにもまた爽やかな気持ちになった。
さて、後続の山鉾を撮影しようと、私はまた構えていた。
…すると、いつの間にか私の周りには、カラフルな帽子の子どもたちが。

2024年7月17日
ぐるっと私を囲んだ保育園児たちに見上げられ、
「次は何来るの?」
「カマキリはまだ?」
「カマキリ見に来た!」
と口々に。
そして、蟷螂山について、園児それぞれが魅力を語り始めたのだ。
私は嬉しくなって、ついつい答えようと思ったのだが、サングラスをかけた「見知らぬ人」の私を保育士の方々が心配されないだろうかと気にかけるも、全くそんな空気もなく、園児たちによるカマキリへの熱弁を最後まで聞かせてもらった。
1000年を超える伝統行事「祇園祭」を、身近に感じ、間近で見られることは、うんと大人になってから、良い環境であったと振り返るのかもしれない。
暑い暑い京都に、観光で来られる海外の方々が、やはりたくさんおられる。
私は海外の方々が、世界のたくさんある国の中で日本を選び、京都にまで来てくださることに、心から感謝する。
お困りの海外の方がいればお声をかけることはもちろん、熱中症対策として、水分補給、塩分補給、そして、日陰や涼しいところでのこまめな休憩も取ってほしいことをボディーランゲージを駆使して伝えている。
スマホに入れている、Google翻訳アプリの出番もない程のボディーランゲージぶりなのだが、海外の方々もお礼の意味を込めてなのか、会話が弾めばSNSを教え合うこともしばしば。
7月17日前祭の神幸祭では、道路各所の通行止めと、人、人、人の中、八坂神社に神輿渡御を一目見たい観光客があふれかえっていた。
今か今かと待ちくたびれる海外の方々にも、湿度の高い京都だからこそ熱中症注意をこの日も呼びかけていた。
そうするうちに、声をかけていた一角に、打ち解けたような空気が生まれ、お互いがより祇園祭を楽しんで撮影に励むように。
そのやりとりの中、イギリスの方だが、今から大阪に帰らねばならないのだが、通行止めと人混みばかりで、どう進めば駅まで行けるのか分からないと声をかけられた。
口頭では説明難しく、裏道で一緒に駅まで参り、無事送り届けることができた。
ふと時計を見ると、今度は私が白石さんとの待ち合わせの時間に遅刻していることに気付き、マンガの如く大慌てで待ち合わせ場所へ。
またある時は、市バスの停留所で到着を待っていると、大きなスーツケースを持つ海外のご高齢の婦人2人が私の後に来られた。
すでに満員に近い状態で運行している市バスが着くと、最後尾だった私はそのご婦人たちに先に乗るように譲り、荷物を積み込んで差し上げた。
ご婦人たちは、「あなたもまだ乗れるわよ!」と口々に言っていたのだと思うが、傾きそうな市バスを見、運転手に向けて頷き、出発してもらった。
ゆっくり動く市バスの窓からそのご婦人たちは、少しすまなさそうに、
「あんた、なんで乗らへんかったんや、ここ、乗れたんやで」
という眼差し、関西にもおられそうな雰囲気に、どこの国のご婦人もきっと同じだとも思えて笑った。
オーバーツーリズムを肌身で感じる京都市内だが、京都が好きで京都に来てくださる人たちには日本人、外国人問わず、少しでも良い思い出を残していただきたい。
オーバーツーリズムの対応にはいろんなご意見があることも、実感を通してよく分かる。
これまでも大事にしてきた「一期一会」。
しかし、SNSの利用が浸透したここ近年のうちに、出会える人の地域や国、年齢層も、一気に広がった。
そして何より、その繋がりには、住所や電話番号を伝えなくても良いのだから有り難くもある。

2024年8月11日20時30分
世界のどこにいても同じ月が見られると思うと 一期一会のあの人との繋がりを信じて
かつて、イスラエルから京都観光に来られていたご夫妻と親しくなった。
今、緊迫する中東紛争の報道を耳にするたび、真っ先に彼らのことが思い浮かぶ。
即座に、SNSで連絡を取ることができる。
世界の情勢が身近に感じられる。
世界の平和と言っても、世界の各地に、知り合いができることではないだろうか。
何かの折に、一人一人の顔を思い浮かべられたなら、世界の出来事が、対岸の火事でも他人事でもなくなる。
本当の意味での「平和」の実現は、「あの人はお元気だろうか」と、心を寄せることから始まるのではないだろうか。
<参考> 京都新聞公式サイト
<(c)2024 文・撮影 北山さと 無断転載禁止>
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