もののけ退治 【幻想詩】
(このものがたり古代中国の文献にあるものです
李賀という詩人が伝えたものにございます
本日はひとつ皆さまの教訓のためにお話し申すのです
耳をタコブネにしてよく聞いていただきたいのです)
天地は薄暗く
世界は瘴気にみちておった
幽鬼は人魂を喰らい
孔子さますら獲物にされたというのです
氷雪は骨を断ち切るほどにござった
黄河の水は凍り魚竜の命も絶えたのでありました
西の山から日が昇ろうとする頃です
つむじかぜ巻き起こり
神馬あまた雲を踏みわけて降りて来たのです
弦と管が清らかに鳴り響きわたりました
花柄のすそひるがえして魔法少女たち
塵埃の中より濛々と立ち現れたのでございました
まさに七人の侍というべきでありました
黄金の実はらはらとむすうに落ちてまいりました
狸たち血を吐いて泣き叫び 痩せ衰えた狐ども
泡を吹いて気を失っていったのです
古い壁に金の絵具で描かれた蚯蚓の群れ
ぴくぴく尾っぽふるわせおどろおどろして
其奴らを秋のふち水底深く逐いやっていったのです
千年を生き永らえた梟の王さま木の精に化け
笑い声と碧い炎
巣の中より湧き起こったのでございます
魔法少女たちふしだらに酒をあおりました
おびただしく下卑た言葉吐き
口より飛沫を撒き散らしますと雲が天を覆うのです
香炉から火が起こり四方にエモい香りあふれ
地の底からどよもおす太鼓が鳴り響きわたりました
海神と山神 祭りの庭に押し寄せます
金銀財宝を焼く音がめらめらとつむじ風に鳴ったのです
相思相愛の琵琶に金色の鵞鳥が描かれておって
魔法少女まゆをくりくり呪文し弦をかき鳴らしまする
さてはついに大空の星々よびよせ彷徨える亡者を招き
膨大な山海の珍味よりなる供物を捧げますと
もののけども山中より現われ来たって争い
醜怪きわまりない姿で喰いついてくるのじゃった
人々おそれおののきしんと静まりかえりました
谷の窪みにお日様が沈んでいくところにござった
阿鼻叫喚が聞こえまする
魔女の光線銃がもののけども焼いているのです
時の終わりまで実在と非在のあわいにたゆたう
ほんとうの神様がここにおりまして
そのお怒りが その悲しみが
魔女軍団の親玉
顔面蒼白にして涙滔々あふれるのでありました
さては空に満天の星
夜明けが近づきますと
神々をお見送りする一万騎の神馬
天上の川ごうごう還ってゆくところにございます
魔法少女の音楽 地上に満ちてございます
(これが李賀の伝えたものがたり
不分明なところ多々ありましょうが
旧い書物ゆえ各々おぎなってもらいたく存じます
想像界に限りはなく 時に平和をもたらし
時に地を滅ぼす力すら持つという
戒めにてございます)