撮影現場 【詩】
意味のない明るさが
たゆたっていた午後の庭園
円筒からしたたるひかり
すきとおる蛙がのんでいるひかり
針金のように
腕 脚 腰 首
おる まげる ねじる ひねる
あれはアリスの妹
銅の花咲く花壇
地上絵に突き刺さるうしろ脚
右眼と左眼がアンバランスに動く
短針が蟹座を指すころ
またひとりやって来た頭のない動物
モーションピクチャーの途中で
逆立ちした馬になってみせる
はじけるように笑った
キュートな太陽みたいなアリスの妹
そのとき撮影現場に乱入するのは
十三月のすべらかな風
(カット! カット!)
午後の日差しの中で
抽象的な仮眠をとるクルーたち
カメラはカサコソ音をたてて
しつこく彼女につきまとう
けれどいつまでつづくのだろう
終わりのない台本
またぞろ意味のない動物たちがやって来て
どこにもいない監督に再開をうながす
けれどもかれらは
夢の中でスパゲティに夢中になっている
夢の中のガバオライスに夢中になっている
居眠りをしているアリスの妹の口から
細ながいものがはい出ていた
意味のない明るさが
たゆたっている午後の庭園
円筒からしたたるひかり
すきとおる蛙がのんでいるひかり
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