鹿狩 【詩/現代詩】
午後になると
鹿狩に出かける
川崎駅東口には
気取らない鹿がいる
素行の悪い野犬もいる
銃口を光らせて立つ非常階段
灰色の熊が多い
襟巻きをした狐もいる
内臓はカレーのにおいがした
電車が空中を走る
「世界一まずい蕎麦屋」でトリ蕎麦を
デパート前の停留所に 鹿が近づく
クリクリしたかわいい眼 痩せ形
角と尻尾と立髪がよじれる交差点
電線でウグイスが鳴き
引き金に油汗
こめかみからも
ガード下でレッサーパンダの演説
公務員アパートの悲劇を語る
電車が空中を走る音
年老いたレッサーパンダが物語る
公務員アパートの集団食中毒事件
日没を見つめるクチバシ
三十六種類の牛を染める夕陽
行き場のない魂がさまよう
「世界一まずい蕎麦屋」で
タヌキ蕎麦をすすり
「人生に意味はない」とつぶやく仔犬
ピンボールが飛び交い
通りすがりの木曽馬のひややかな立髪
火の鳥の輪郭が駅舎に張りつき
オレンジ色に燃えるジビエたち
銃眼で交差する角と立髪と尻尾と
レストランから見える小狐たちの夕食
アスファルトに散らばる丸い塊り
狙いは外さない