パンとサーカスと、自転車に乗って【18】
第十八話・複雑に絡む糸ほど、ほどくとシンプルということ 重野英子四十三歳、シングルマザー、無職。京都府城陽市徳田町コーポ209号。前科あり。一ツ橋は前科が二つ、一ツ橋が轢き殺したとされる杉浦杏子も前科者だ。なにか見えない糸のようなものが入り組んで絡まっているのか、それとももともとシンプルな結び目なのか、葉狩は英子の表情から汲み取れずにいた。響木が抑えてくれた会議室は取調室と違って広い。窓は鉄格子がついているが、独特の圧迫感はない。たまにニュースで「容疑者は黙秘を貫いています」