【短編】さようなら、殺人鬼
来留聡一郎の渇望 パンを食べるか、ごはんを食べるか。ここのごはんとは、ライスのことだ。どっちを食べようが理由は後付けのようなもので、賞味期限が近いパンを、冷蔵庫に入ったままの冷えたごはんを、その程度のクソみたいな理由ぐらいで。確かに食べたいからという理由はないでもないが、理由にすらなっていない。理由というのは、動機だ。動機は渇望から生まれるものでなくてはならない。腹が減っている、これは渇望とは言えない。三日間何も食べていなくて空腹で、自分の指すら食ってしまいそうだ。舌が食える