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書評:プラトン『パイドロス』

ソクラテス/プラトンに見る対話から紡ぎ出される哲学のあり方とは?

今回ご紹介するのは、プラトン『パイドロス』。

『パイドロス』は、プラトンの著作の中で私が一番好きな著作だ。

始まりの場面は、暑い夏の中でホッと一息つけるような、涼しげな川辺。
ニンフが現れるかと思われほど、疲れや緊張感を忘れさせるような穏やかな光景。
人里離れた隠れた避暑地で、ソクラテスとパイドロスの対話は、ゆっくりと、たっぷりと繰り広げられていく。

こんな始まりがとても美しい。

多くの人に囲まれて複数の人と対話をする他の作品に比して、この情景描写は詩的で穏やかで、対話を心から楽しむ2人の様子が伝わってくる。

そして作品の構成。これも興味深い。

恋(エロース)について、弁論術について、文筆について、と、話題は奔放なほどに広がりを見せる。

そしてこれらが、真実在(イデア)への志向という「哲学」・「愛知」の精神により、相互に結び付けられ、紡ぎ合わされた1つの観念へと昇華していくのだ。

拡散と収束、貫徹した主題、これらは他のプラトンの著作と比しても群を抜いた完成度・美しさをを持つように思う。

人間は、永続なる魂の底からイデアを志向すべき存在であり、恋も、弁論術も、文筆も、この志向に合致するときにこそ初めて有意味なものとなると、対話を通して捉えられていく。
有意味になるとは、「哲学」という思索的挑戦への助力となっていくということである。

逆に言えば、「哲学」とは本来どうあるべきものか。

それはイデアへの志向性(イデアを目指す営み)であるべきものだという考え方が、ソクラテス/プラトンの信念にある。ソクラテス/プラトンが「哲学」をどういう営みとして捉えていたかという、彼らにとっての「哲学」の本質論が垣間見れるのが、本著でもあるのだ。

美的センスとプラトン哲学の真髄が見事に融合した、大変完成度の高い作品。
作品として私が一番愛するプラトンの著作が本作だ。

読了難易度:★★☆☆☆
作品の詩的美し度:★★★★★
ソクラテス/プラトン的な哲学観を知れる度:★★★★☆
トータルオススメ度:★★★★☆

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