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11月25日 海老名駅(神奈川県)~故きを温ねて新しきを知る~

相鉄線といえば、今や大都市 横浜から神奈川県央地域を横断する生活に欠かせない通勤通学路線であるが、その歴史は相模川の砂利を運ぶ貨物鉄道として建設され、駅の複雑な誕生にも関わる、興味深い線でもある。
そんな相鉄線の全駅の開業記念日を1駅ずつ、今年の8月から旅している。

11月25日の時刻は19時、仕事を終えた私は横浜駅のきっぷうりばの前に立っていた。前日にICカードを紛失し、きっぷを買うためだ。運賃表を見上げていると、横浜から終点の海老名駅までは端から端まで18駅もあるが運賃は320円である。「ずいぶん安いな…」としばし見とれていると、「大丈夫…?」と私の横で手を取る彼女がいる。沿線に住む彼女が一緒にお伴をしてくれるという。理解と支えがあって本当に感謝に堪えない存在だ。

帰宅ラッシュの急行電車は、いくつかの駅を通過していく。車内は金曜日とあって和やかな雰囲気だ。
私も彼女の美味な手作り料理の話に興じていると、電車は大きく速度を落として急カーブをゆっくりと抜けていく。海老名駅のすぐ手前であるが、2つのレールが分かれ目になっている。
1つは厚木駅まで延びるレールで、これが最初の相鉄線であった。そしてもう1つは小田急線と厚木市内への利便性を高めるべく、新しく敷かれたレールで、これが海老名駅へとつながる今の相鉄線である。分かれ目が生まれ、2つの駅の開業の歴史に関わった場所がここにある。

19時58分、終点の海老名駅のホームにゆっくりと列車は入った。深い眠りに落ちていた女性を彼女が優しく起こしてあげていた。

駅周辺の商業施設の発展が目まぐるしいが、駅も進化を遂げるために工事中であった。駅員に尋ねると「改札口も2つになり、ビルもできる」のだという。だが、終着駅ならではの行き止まりのホームと改札も風情があると思う。

改札窓口で入場券を求めると、真面目そうな青年駅員は「しばらくお時間頂戴します。お待ちください。」と席を離れ、20時でシャッターの降りた定期券発売所へと鍵を開けて入っていった。
相鉄線では機械で発行する入場券ではなく、ボール紙という厚紙のきっぷの入場券が令和の今でも生き残っている。厚くて硬い紙であるから「硬券」(こうけん)と呼ぶ。どうやら定期券発売所に用意されているようで時間外に手間を取らせて申し訳ない限りである。

5分後に改札窓口で硬券入場券が手渡された。その重みは、機械のきっぷとは格段に違う。ICカードが改札で行き交う流れと変わり行く駅舎、今も痕跡を残す駅の歩んだ歴史と硬券の入場券、「故きを温ねて新しきを知る」であった。
さて、彼女の優しさ変わらぬ料理で旅を締めくくろうか。

海老名駅(えびな)-昭和16年11月25日開業 開業81年






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