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湧き上がるものがなくても表現を続けることについて
前回の記事で、自分は空っぽだなと思うなら先に表現媒体を持ってしまうと中身が豊かになるのではないか、という仮説のようなものを書きました。
その続きというわけではありませんが、一部関連しそうな話をしてみます。
前回の記事を書いた後にたまたま、村上春樹さんの『職業としての小説家』という本を読み、表現することのヒントを得たのでシェアします。
この本は、村上春樹さんの小説の書き方、考え方、長く小説家を続けることについて書かれています。
村上春樹さんはもともと湧き上がるように書きたいものがあるわけではないそうです。
人生経験が豊富だし、子どもの頃から大量に本を読んでいたので、書くものがないわけではないそうなのですが。
ただし、壮絶な体験や生い立ちをもとに何かを書くというタイプではないのだと。
本書を読んでいると、村上春樹さんが平和な暮らしをして淡々と小説を書いていることがわかります。
一方で自分の中に湧き上がるものがあって、それを書くタイプの小説家もいるとのことです。
そのようなタイプは自分の中の材料に頼るので、それが尽きてしまうと書けなくなってしまうのだと。
表現したいものが枯渇してしまうような。
アーネスト・ヘミングウェイをそのようなタイプの小説家として例に挙げられています。
戦争体験などから初期の作品は勢いがあったけれど、晩年は勢いをなくしていったそうです。
像絶な体験を材料として頼って書こうとすると、それは長く続きません。
それと関連するかわかりませんが、最後は自分で命を絶っています。
村上春樹さんはどうされているかというと、とりあえず自分の中にある材料を使うだけ使うそうです。
そして、あれこれ組み合わせてなんとか形にしていくそうです。
例えが正しくないかもしれませんが、冷蔵庫の中の限られた食材を工夫して絶品のものを調理するスキルのような。
小説を書くためには、たくさんの人間を知らなければいけないそうですが、出会える人数には限りがあります。
そこで人と会う時はとにかく観察するそうです。
体験した出来事もとにかく吟味する。
そして、深く考察する。
そのように限られた材料をいかに使いこなすかというスキルこそが大事なのだと。
村上春樹さんは小説を書くというのは誰にでもできることですが、長く書き続けられる人は多くいないと言います。
書き続けることが何よりも大事なのだそうです。
書きたいものを枯渇させるのではなく、あるだけの材料を使いこなして書くスキルを身につけること。
私はnote記事を自分のペースでゆっくり書いていますが、この話はとてもヒントになりました。
材料を使いこなすスキルとして、具体と抽象のスキルも有効だと思います。
ある具体的な事象から何が言えるかを一旦抽象化して、同じことが当てはまる別の具体的事象に落とし込む。
すると、限られた材料から考察して何かを表現できるようになると思います。
村上春樹さんのこの本から得たことを自分の配信活動に当てはめるとこのようになります。
限りある人生の時間の中で、限りある心理臨床経験と出会う人間、エピソードを観察して考察して、どうにかこうにか表現する。
表現する媒体を持ち、アウトプットが前提だからこそ、限りある資源を大切に自分のものにすること。
今回は、心理学とは関係ありませんでしたが、湧き上がるものがなくても表現を続けることについて、書きました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【参考文献】
『職業としての小説家』(村上春樹 新潮社)
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小林いさむ|公認心理師