感情労働で気持ちの切り替えができる人とできない人の違い
今回は、感情労働において、仕事が終わってから気持ちの切り替えができる人とできない人の違いについて。
仕事が終わってからも仕事の事を引きずって考え続けていると、心や頭が休まらずに疲れも取れないですよね。
オンオフで切り替えができると、メンタルヘルス的にも良いです。
特に感情労働と言われるような人を相手にする仕事だと切り替えが難しいと思います。
私たちのようなカウンセラーの間でも、仕事が終わった後に相談者の事を引きずらずに切り替えができているかどうかがよく話題になります。
気持ちの切り替えができる人とできない人にはどのような違いがあるのかをお話します。
ご自身のメンタルヘルスのためにもご参考に。
1.感情労働とは
まず「感情労働」とは何か。
自分の感情をコントロールすることで報酬を得る労働。
「肉体労働」と「頭脳労働」と並んで用いられる用語です。
職種例
・医療・福祉…看護師、医師、介護福祉士、ソーシャルワーカー、カウンセラーなど。
・接客業・サービス業…販売員、コールセンターのオペレーター、客室乗務員など。
・教育…教員など。
他にも、コミュニケーションが求められて自分の感情のコントロールが必要な職業は、広い意味で感情労働と言えそうです。
2.気持ちの切り替えができない人
感情労働で気持ちの切り替えができる人とできない人の一番の違いは、「共感性」です。
「共感性」が高い人は気持ちの切り替えが難しいと言われています。
相手の気持ちに寄り添う傾向が強く、相手の感情や状況を自分のもののように感じやすくなります。
そのため、自然と仕事の後も相手のことを考え続ける傾向があります。
そのような人への参考に以下、気持ちの切り替えができる人の特徴を挙げます。
3.気持ちの切り替えができる人の特徴
1. 自分と他人の境界を意識している
ここは詳しく説明します。
自分と他人の感情・考え・責任を区別し、過剰に巻き込まれないための「境界」をきちんと持っています。
境界が明確であることは、メンタルヘルスや人間関係を保つ上で重要とされ、特に感情労働を伴う職業では欠かせないスキルです。
職業上、自分と他人の境界を持つためには、次の3つが必要です。
・自他の感情の区別:相手の気持ちに共感しても、それを自分の感情と混同せずに保つことができる。
・責任の区別:自分の役割や責任範囲を明確にし、相手の問題や行動に対して自分が責任を感じすぎないようにする。
・考えの独立性:自分の考えや価値観を持ち、他人の意見に流されずに意思決定ができる。
この3つを得るためにはどうすれば良いのかも説明します。
① 自分と他人の感情を区別する練習
相手の話を聞く際に、感じた感情を「これは私の感情か、それとも相手の感情に共鳴しているものか」と一旦振り返る習慣をつけると、感情を整理しやすくなります。
たとえば、相手が不安を抱えているときに、自分も不安を感じる場合、まず「これは自分自身が感じている不安ではなく、相手の不安に共感しているのだ」と認識するようにします。
② 役割や責任の範囲を明確にする
自分の責任範囲と他人の責任範囲を具体的に言語化する練習が有効です。
特に対人支援の職業では、「相手を助けることが自分の責任」と考えがちです。
しかし実際には「相手をサポートするけど、問題の解決は相手自身が行う」という役割の分離を意識することが重要です。
「相手をサポートすることは自分の役割だけど、相手自身がどのように行動するかは彼らの責任だ」というように明確な線引きを意識します。
③ 自己確認の時間を持つ
1日の終わりに、自分と他人の境界が適切に保てたかどうか振り返る時間を持つと、境界意識が鍛えられます。振り返りの際に「自分が過剰に巻き込まれた場面があったか」「自分の気持ちを守れていたか」をチェックすると、境界への意識が高まります。
④ 「ノー」を言う練習
自分の限界を知り、無理な要求や過剰な共感を避けることは、境界の確立に役立ちます。
時には相手に「ノー」を言うことも、境界を保つために必要です。
練習として、小さな場面で「自分の負担になりそうなときには断る」という行動を少しずつ取り入れるのも有効です。
⑤ サポートやフィードバックを受ける
職場内のスタッフに自分の境界意識についてフィードバックを得るのも良い方法です。
自分では気づきにくい課題を知り、さらに効果的な境界設定ができるようになります。
③で書いた1日の終わりに一人ではなく職場のスタッフ同士で振り返りが行なえると良いでしょう。
また職場外のカウンセラーやコーチなどの専門家のサポートを受けることも有効な方法です。
2. 仕事とプライベートの境界を意識している
1番目の項目に字数を使い長くなりましたが、引き続き、気持ちの切り替えができる人の特徴の2です。
うまく切り替えができる人は、仕事とプライベートの境界をしっかりと意識しています。
仕事中に集中すべきことと仕事後に切り離すべきことを明確に区別し、頭の中に「オン・オフ」のスイッチを持っています。
逆に、切り替えが難しい人はこの境界があいまいで、仕事中の出来事や人間関係が心に残りやすい傾向があります。
3. 切り替えルーティンを持っている
仕事とプライベートのオン・オフを区別するには「切り替えルーティン」持つことが有効です。
たとえば、仕事帰りにいつも決まった書店に立ち寄ることを切り替えスイッチにするなどです。
4. セルフケアの手段を持っている
切り替えができる人は、セルフケアやリラクゼーション法を習慣的に取り入れている場合が多いです。
仕事後に短時間の瞑想や運動を取り入れたり、気持ちの切り替えができる趣味を持っていることが多く、これによって心をリフレッシュさせています。
5. 回復力(レジリエンス)が高い
レジリエンス(resilience)とは、逆境やストレスから回復する力を指します。
心理学研究では、レジリエンスの高い人はストレスフルな体験からも迅速に立ち直ることができるとされています。
このため、感情的な負荷が仕事終了後に持ち越されにくくなります。
レジリエンスを高めるには、「完璧主義」や「すべき思考」などを手放すことが効果的です。
4.まとめ
以上、感情労働で気持ちの切り替えができる人とできない人の違いについて説明してきました。
「共感性」が高い人は気持ちの切り替えが難しい。
そのような人にお勧めする、切り替えができる人の特徴として5つ紹介しました。
1自分と他人の境界を意識している
2仕事とプライベートの境界を意識している
3切り替えルーティンを持っている
4セルフケアの手段を持っている
5回復力(レジリエンス)が高い
今回は、感情労働で気持ちの切り替えができる人とできない人の違い、という話でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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小林いさむ|公認心理師
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