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悪口が蔓延する職場で巻き込まれないようにメンタルを守る方法

人の悪口、陰口、噂話が多い職場ってどう思いますか?
 

私は心理相談をしていると、たまに相談者さんからそのような職場環境で困っているという話を聞きます。
職場の人たちが人の悪口、陰口、噂話ばかりして、そのような状態が職場の風土になっていると。
そのような話を聞くのはうんざりで、自分のメンタルにとって悪影響だと。
 
私も学生の頃の春休みにした工場でのアルバイトで同じような経験をしました。
作業をしながら従業員の人たちは常に誰か他の従業員の悪口を言っていました。
それが常態化してしまっていたのです。
どうしても耳に入ってくるものですから、すごくしんどかったという負の思い出です。
 
今回は人が他人の悪口や陰口、噂話をしたがる背景や職場文化の特徴、また巻き込まれないようにメンタルを守る方法について書きます。
 
同様の職場環境でしんどい思いをされている方の参考になればと思います。



1.   悪口や陰口、噂話をしたがる要因、職場文化の特徴


 
人が他人の悪口や陰口、噂話をしたがる背景には、個人の心理的要因や集団の社会的な要因が関わっています。
さらに、職場環境や文化もこれに影響を与え、こうした風土が形作られることがあります。

以下に、心理学的な観点から詳しく説明します。
 
 

①   自己肯定感や自己価値の向上


 
心理学では、他人の欠点や失敗を指摘することで、自分の方が優れていると感じ、自己肯定感を一時的に高める行動が「社会的比較理論」によって説明されます。
特に、自己価値が低いと感じている人や、認められていないと感じている人は、他人と比較して自分が優位に立っていると思いたくなり、その結果、他人を批判することで自己満足を得ようとすることがあります。
 
下方比較」という概念があり、自分よりも下だと感じる人と比較することで、自尊感情を高めてモチベーションの低下を防ごうとします。
 
 

②   集団への帰属意識の強化


 
集団凝集性」といって、共通の話題(とくにネガティブな話題)を通して、仲間意識を強める行動が見られます。
職場の中で同僚と共通の「敵」や「悪い話題」を共有することで、心理的な連帯感や親密さが強まるため、結果として噂話や陰口が行われやすくなるのです。
特に、職場が競争的だったり評価が厳しい環境だと、このような帰属意識が強まりやすく、陰口が蔓延しやすい傾向にあります。
 
 

③   ストレスや不満の発散


 
職場でのストレスや不満が溜まっていると、その不満を発散するために陰口や悪口が出やすくなります。
心理学的には「感情浄化(カタルシス)」と呼ばれ、ネガティブな感情を口に出すことで一時的なストレス解消を図る現象です。
特に厳しい上司や高い目標などがある職場では、職場の人間関係や環境に対する不満を陰口という形で発散することが多く見られます。
 
 

④   社会的な比較による安心感


 
人は他人の失敗や弱点を見ると、「自分だけではない」と感じ、安心感を得ることがあります。
たとえば、同僚がミスをすると、それについて陰口を叩くことで、「自分も失敗することがあっても大丈夫だ」と思う心理が働くことがあります。
このような「安心感」を得るために、陰口や噂話が行われやすくなります。
 
 

⑤   職場文化や風土の影響


 
職場における「噂話の文化」や「陰口が許容される風土」は、組織全体のコミュニケーションの質にも影響を与えます。
組織文化が人の成功をあまり評価せず、ミスや失敗を非難する傾向が強い場合、陰口や悪口が増える傾向にあります。
管理職やリーダーの言動が批判的なものだったり、職場全体が競争重視で協力が薄い場合も、陰口が常態化しやすいです。
これは、職場の「暗黙のルール」として他人を批判することが「当たり前」になり、その風土が根付いてしまうことにつながります。
 
 

⑥   職場の心理的安全性が低さ


 
心理的安全性が低い職場では、意見を言うと批判されたり、間違いを恐れる雰囲気があるため、陰での批判が増えやすくなります。
心理的安全性がない環境では、人々は「自分のことを守るため」に他者の評価をおとしめるような陰口や噂話を行うことが多くなり、これが風土の一部となるのです。
 
 

2.   巻き込まれないようにメンタルを守る方法


 
悪口や陰口、噂話をしたがる要因、職場文化の特徴について説明してきました。
ここからは、そのような職場環境で巻き込まれないように自分のメンタルを守る対処法についてです。
 
 

①   境界線を設定する


 
「境界線を設定する」というのは、自分が望まない関わりや負担を受け入れないための心理的なバリアを築くことを意味します。
これにより、他人の否定的な影響から自分を守ることができます。
 
具体的には、次のようなアプローチが効果的です。
 
 
・直接的な言葉で伝える
 
陰口や悪口が始まったとき、「そういう話には興味がない」と直接伝える方法です。
 
職場での対人関係はデリケートですが、相手に対する敬意を保ちながら、自分の意図を冷静に伝えることで、周囲に対しても「巻き込まれたくない」という姿勢を明確にすることができます。
 
たとえば、以下のように言うことが考えられます。
 
「申し訳ないけれど、そういう話題はあまり聞きたくないんです。」
「他の話題について話せたら嬉しいです。」
 
このような言葉は、特定の話題に対してあなたの立場を示しつつ、相手に対する配慮も感じさせるため、関係を悪化させることなく境界線を設定できます。
 
 
・身体的なサインを活用する
 
とはいえ、言葉で伝えるのが難しい場合がありますよね。
そのような場合は、非言語的なサインを利用することも有効です。
 
たとえば、悪口や陰口が始まったら、さりげなく自分の作業に集中したり、視線を外すなどして、「その話題には関心がない」という態度を示します。
相手は自然とあなたがその話に興味を示さないことを察しやすくなり、徐々にその話題から距離を置けるでしょう。
 
 
・ポジティブな別の話題に切り替える
 
話の流れを変えるために、相手が話し始めたらポジティブな話題に自然に切り替えるのも効果的です。
これは相手がネガティブな内容を話しても、それに同調せず、あなたの側から会話をリードしていく方法です。
 
例えば
「最近、仕事のこういう部分がうまくいっていて…」などの自分にとってポジティブな話題を提供してみる。
相手が噂話や悪口を話しても、それに一切反応せず、自分から明るいトピックを出すことで、陰口や悪口の輪から抜け出すきっかけを作れます。
 
 
・一時的にその場を離れる
 
その場に居続けるのが辛い場合、陰口が始まった瞬間にさりげなく席を外すのも有効な方法です。
 
「ちょっと電話してくるね」「急ぎの仕事があるので」といった形で一旦距離を取ることで、話に巻き込まれるのを防げます。
これにより、陰口の輪に加わっていないことを周囲に伝えられます。
 
 
・境界線を守ることの重要性を自分に認識させる
 
境界線を設定するためには、まず自分の気持ちをしっかりと認識し、自分がどう感じ、何を守りたいのかをはっきりさせることが大切です。
「自分の精神的な健康を守るためには、この環境から距離を置くことが必要だ」と心に決めておくと、実際に境界線を守ることが容易になります。
 
 
境界線の設定は「自己尊重」の表れです。
 
これらの方法は、自分の心理的な境界線を尊重し、健康的な人間関係を築くために役立ちます。
自分にとって不快な状況に巻き込まれず、健全な職場生活を送りやすくなるでしょう。
 
 

②   無害な役割を演じる


 
職場の陰口や噂話に巻き込まれないように、あえて「無害である」「無関心である」と見せることで、自然にその場の話題から距離を取る方法です。
周囲との関係を悪化させずに、話に深入りせず無難にやり過ごすテクニックともいえます。
 
具体的には、以下のようなアプローチが効果的です。
 
 
・最小限の反応で済ませる
 
陰口や噂話が始まったとき、相槌を軽くするか、最低限の返答にとどめることで、積極的に参加していない姿勢を示します。
 
たとえば、「へえ」「そうなんですか」など、相手の話を深堀りしない言葉を使います。
 
このような曖昧な反応を繰り返すことで、あなたが興味を示していないことを暗に伝えられます。
 
 
・質問を避ける
 
相手の話に興味があると見られないように、会話に対する質問を極力避けます。
 
例えば、「それでどうなったんですか?」などと尋ねると、会話がさらに深まってしまいますので、相手が話すことだけを「受け流す」姿勢を取ります。
 
こうすることで、自分が巻き込まれるリスクを減らせます。
 
 
・表情をコントロールする
 
会話に深く関与していないことを示すために、表情を穏やかに保ち、あえて感情的な反応を示さないようにします。
 
笑ったり共感する素振りを見せず、ニュートラルな表情で会話に臨むと、相手も無理に話を続けなくなる可能性があります。
これにより、徐々に「この人はこの手の話に興味がない」と相手に認識させることができます。
 
 
・ポジティブなコメントで切り替える
 
悪口や噂話が続く場合、ポジティブな視点を含むコメントを意識的に挟むのも方法の一つです。
 
例えば、「そうですね、でも彼女も忙しいみたいですからね」など、話題をポジティブな方向にさりげなく向けることで、暗い話から離れやすくなります。
また、話の雰囲気を少し和らげることで、あなたが話を深刻に受け止めていないと周囲に示すことができます。
 
 
・あえて「ぼんやり」した態度を見せる
 
興味がないと見せるために、あえて会話から少し気が抜けているような、ぼんやりとした態度を見せるのも効果的です。
 
「今は他のことに集中している」といった態度をさりげなく出すと、相手はあなたに話す意欲を失うことがあるため、自然に距離を取れます。
 
 
このようなアプローチを用いると、職場の雰囲気に波風を立てずに陰口や噂話から距離を置き、ストレスの軽減が期待できます。
 
 

③   「フィルタリング」を意識する


 
「心のフィルター」を意識することは、心理的なバリアを築き、陰口や噂話といったネガティブな影響を受け流すために有効です。
これにより、自分に不要な情報や感情をフィルタリングし、冷静に保つことができます。
 
以下に具体的な方法を詳しくご説明します。
 
 
・聞き流す意識を持つ
 
ネガティブな話題が始まったとき、「これは私の問題ではない」「関わる必要がない情報だ」と自分に言い聞かせ、あえて「聞き流す」意識を持ちます。
心理的には、相手の話を自分に必要な情報かどうかで仕分けることで、自然に距離を保つことができ、ストレスを軽減できます。
 
例えば、話を聞きながら「これは通り過ぎる情報」と頭の中で反復してみると、心に入り込むのを防げます。
 
 
・話を「他人事」として認識する
 
陰口や噂話に対し、「これは他人の課題であり、自分には関係がない」と考え、自分の心をその場から切り離します。
心理学ではこれを「客観視」や「デタッチメント(切り離し)」と呼び、話を受け取っても自分の感情には反映しないテクニックです。
 
「これはあくまで相手の考えであって、自分に影響するものではない」と、冷静に受け止めることで、不要な影響を遮断しやすくなります。
 
 
・ポジティブなフィルターを使う
 
ポジティブなフィルターとは、ネガティブな情報の中から少しでもプラスになる部分を見つけて捉えることです。
 
たとえば、陰口を聞いたときに「そうした不満は誰でも持つものだ」と共感的に捉えたり、「あの人も大変なんだろうな」と思うことで、自分の心をネガティブな方向に引っ張られにくくなります。
 
話の内容を完全に受け入れず、あくまで中立的に、ポジティブな視点を取り入れることが大切です。
 
 
・自分の価値観を明確にする
 
陰口や噂話に対して、そもそも自分がどういう価値観を持っているかを認識し、あらかじめ「私はこういうことに時間を使わない」「このような話題は興味がない」と自分の基準をしっかり持っておくと、フィルタリングしやすくなります。
 
自分が何に価値を置いているかを常に意識することで、話を聞くべきかどうかの判断がスムーズにできます。
 
 
「フィルタリング」を意識することで、無駄な情報を意識的に遮断し、陰口や噂話に心を乱されずに職場での心の平穏を保ちやすくなります。
 
 

3.   まとめ


 
人が他人の悪口や陰口、噂話をしたがる背景には、個人の心理的要因、集団の社会的な要因があります。
所属している職場で悪口などが蔓延している場合には、その職場の環境や文化も影響していると考えられます。
 
職場の文化を変えたり、その場から逃げたりするなどができれば良いのですが、現実的には難しい面もあります。
 
紹介したような個人でできる対処法を参考にして、ぜひご自身のメンタルを守ってください。
 
 
 
今回は、悪口が蔓延する職場で巻き込まれないようにメンタルを守る方法、という話でした。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 
 

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小林いさむ|公認心理師

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