PdMとビジネス部門の連携をよりよくするために
この記事はプロダクトマネージャー Advent Calendar 4日目の記事です。
はじめまして、株式会社DatableでVP of Salesをしているしんりと申します。
なぜプロダクトマネージャー Advent Calendarにセールス?と思いますよね。
ポジションにセールスという名前はついてますが、私が勤めているDatableはまだシードのスタートアップなので完成されたプロダクトをどんどん提案しているわけではありません。
お客様の業務、課題、ニーズなどをヒアリングしながら開発にフィードバックしていくことも役割の多くをしめており、PdMとセットで仕事することが多いです。
PdMとセールスやカスタマーサクセスなどのビジネス側組織がうまく連携することは、プロダクトの改善スピードを上げ、本質的に価値あるものにしていくためには欠かせないと思います。そのためには私自身がPdMを深く理解することが重要だと考え、今年はプロダクトマネージャーカンファレンスのスポットスタッフにも参加させていただきました。
このPdMとビジネス側組織の連携ですが、実際にやろうとしても縦割りになってしまい、情報が密に連携できていないケースも多いと思います。
私自身が苦労したことや、うまくいったケースを振り返り、なぜPdMについての理解を深めようと思ったかについて書いてみたいと思います。
プロダクト開発に貢献したいSalesは多い
前職はfreeeというクラウド会計のスタートアップで営業マネージャーをしていました。候補者の方と面接をするなかで、中長期的にどんなことをしたいのかたずねると、「営業しながらお客様のニーズを拾ってプロダクト開発に貢献できるようになりたい」という主旨の返答をいただくことがよくありました。
肌感では2割ぐらいの候補者の方がおっしゃっていたと思います。
実は、私も転職するときに同じようなことを答えていました。
freeeに入社する前は2社連続で外資のソフトウェア企業に勤めていました。
2社とも日本には開発組織がなく、日本法人は販売会社に近い位置付けでした。プロダクトの方針はグローバルの本社で決まり、日本の現場からの距離が遠いので、プロダクトに意見を反映さていくことが非常に難しかったのを覚えています。
前々職にいた頃は日本でも外資のSaaSプロダクトがシェアを広げはじめた頃で、お客様からクラウドでの提供やサブスクリプションでの支払いを求められることが増えてきていました。
競合はSaaSで提供しており、お客様のためにもクラウド版のリリース要望をあげていましたが、日本でのローンチはなかなかされませんでした。(結果次のキャリアではSaaS企業を選びました。)
このような経験もあり、お客様の要望をスピーディーにプロダクトに反映し、お客様の役に立てるような仕事がしたいと考えてスタートアップを選びました。
お客様にいわれた要望はプロダクトに反映すべき?
晴れてスタートアップの会社に転職し、やっと要望をプロダクトにダイレクトに反映しお客様の成功に貢献できるぞと思いましたが、入ってみるとそんな簡単な話ではありませんでした。
Salesはお客様から直接依頼を受ける機会が多いです。
きつい口調で厳しい言葉をいただくケース、本当に困っていて何とかして欲しいと懇願されるケース、目の前で向き合っているからこそ、このお客様のために何とかしたいという気持ちが強いです。またお客様から怒られる事がストレスになり、早くそこから解放されたいという気持ちになることもあるかもしれません。
私も以前は「お客様からこんな要望があるのになんで開発されないんだ」とか「現場がわかっていないからプロダクトアウトな機能ばかり作られて結局使われない」とか不満に感じていることもありました。
しかし、PdMの人と一緒に仕事したり、コミュニケーションする機会をへて、自分の考えはPdMを理解していないからこそ発生する近視眼的な考えだったなと思います。
お客様と直接向き合っていると、その場の熱もありその要望が一番大事なことのように感じてしまいます。
しかし、その重要度は一度自分の感情と切り離して、一歩引いて考えてみた方がいいと思います。
プロダクトの開発においては、多くのリソースが必要でそのために多くのコストもかかります。
私がかつて所属していたSAPなどはグローバルで毎年数千億円規模の開発投資していました。
全ての課題を解決する、最強のプロダクトが作れればいいですが、そこを目指してしまうとこういったお金もリソースがある企業には絶対勝てないので、幅広いニーズを浅く満たした劣化版◯◯のようなソフトになってしまいます。
目の前のお客様の課題を解決するということは、その分何か別の課題の解決を捨てる(遅らせる)ということになります。また、一つのプロダクトに機能を追加していくと、それは別の機能と連携し、影響を与え合う事が多いため、わずかなお客様しか使わない機能を追加したことにより、全体のコストが大きく上がってしまう可能性があります。
結果、全体の値上げをせざるを得なくなり、他のお客様もコストを負担することになります。
目の前のお客様の課題を解決しようと思ってやったことが、それ以外の多くのお客様に対して損失を与えている可能性もあるのです。
目の前のお客様の役に立ちたいという思いは大切ですが、他のお客様も含めて考えたときに、その要望に取り組むべきかという視点をセールスとしても持つべきだと思います。
PdMとビジネス側の連携は難しい
面接官をしているときに、候補者から「現在の会社はビジネス側とプロダクト側が縦割りになっていて、お客様からの要望をプロダクトに反映する事が難しいので、営業がプロダクト改善にたずさわれる会社に転職したい」という話を聞くことがありました。
この縦割りで連携がうまくいかないという話を解決するためには、横串でのコミュニケーションが重要だということはみんなわかっていると思います。
しかし現実にはなかなか解決できず、試行錯誤しているケースも多いと思います。
なぜうまくいかないのか?
理由としては、お互いを理解しようとせず、自分の都合優先で考えてしまっていてコミュニケーションが表面的になっているということが大きいのではないかと思います。
セールスはソーシャルスタイルがドライバーの人が多く、声が大きく主張も強かったりします。
そんな人が、先ほどの章で書いたような目の前のことだけで主張すると、PdMとしては「こちらの考えも知らずに的外れなことばっかり言いやがって」と思うかもしれません。
すると、PdMはセールスに意見を求めなくなり、余計に現場の声が反映されずらくなっていくのではないかと思います。
これを解決するには、セールスがPdMの業務や思考を理解して、開発計画や優先順位をどう考えているかについて、リスペクトをもってコミュニケーションすることが重要だと思います。
開発計画や優先順位を理解していないと、お客様の要望をそのまま受け取って開発に伝えるだけになります。一方、理解しているとお客様の要望に対して、交渉することができます。交渉することで、お客様の要望の切迫度がわかったり、その背景がわかって別の解決策を考えることも出来るようになります。
実は、この話は過去に自分のチームでも起きた事があります。
当時チームメンバーからは「お客様の要望を聞いても開発に反映されない」といった不満の声が上がっていました。また、プロダクトのロードマップが理解されていないので、お客様の要望も言われたことをそのまま受けてきている状況でした。
この状況を解決するために、やって良かったのがチームとPdMのカジュアルなミーティングです。決まったアジェンダでかっちり話すのではなく、雑談ベースで進めることにより、お互いの理解が深まりました。
結果、プロダクトのフィードバックも伝えやすくなり、お客様の要望に対してもロードマップをもとにコミュニケーションが取りやすくなりました。
逆に、PdM側もセールス、カスタマーサクセスを理解して歩みよることは重要です。
商談のレビューをしていると、お客様からいいニーズや情報がせっかく聞けているのにフィードバックされていない事がよくあります。
理由を深掘りしていくと、どうせ伝えたところでプロダクト開発に反映されないと思ってしまっていました。
SFA、CRMにセールスの失注理由や競合の情報を入力させてプロダクト開発に役立てたいという事もあると思います。
その際、入力にばらつきがあり徹底されないというのはよくある悩みです。
入力徹底させるためには、マネージャーが毎日チェックして、入力していないメンバーに指導するという方法もあると思いますが、これは本質的な解決策になりません。やらされ仕事になり、後ろ向きな作業になります。
強制的に入力させても、適当な入力や虚偽の入力がおこってしまいます。
価値ある情報をフィードバック、入力してもらうには、その行為に対してモチベーションを高めてもらう事が大切だと思います。
一部の人は自発的にモチベーションを見つけられると思いますが、多くの人は周りから感謝されることにより、自分が役に立てているのだと感じてモチベーションが高まります。
そのためにも、「開発に役に立てるため」や、「GTM戦略を立てるため」といった、何のために入力、フィードバックするのか目的を説明して理解してもらう事が重要です。
また、依頼や指示をして終わりではなく、その情報が何に反映されたのか、結果をちゃんと説明して、フィードバックをしてくれた人をたたえるということをしていくと自発的にフィードバックが集まるカルチャーができるのではないかと思います。
私が新卒入社したキーエンスではニーズカードというものがあり、営業しているときにお客様からお伺いしたニーズを記載して本社に送るという仕組みがありました。
この寄せられたニーズからプロダクト開発につながるものは、開発メンバーが営業に同行してニーズを深掘りします。全国から集まったニーズのうち良かったものは毎月発表されて賞金が出ます。
このニーズカードの仕組みが素晴らしいと思うのは、毎月提出させるマネジメントの徹底と、全社で表彰する事でよいフィードバックを上げるモチベーションをあげるという、両軸をおこなっていた点です。
毎月多くのニーズが全国から集まるので、世界初、業界初の新商品を出す事ができます。結果、売上における新商品比率7割、営業利益率50%以上が実現出来ているのだと思います。
お互いの業務を理解して、称えるというのは当たり前のことではあるのですが、実際に高いレベルおこなえているケースは少ないと思っており、この当たり前を徹底してレベルを上げることで、より良いプロダクトをより早くリリースできる体制が作れるのではないでしょうか。
最後に
DatableはSaaSをはじめとしたソフトウェアに、他システムとのノーコードでの連携機能を埋め込むプロダクトを提供しています。
他システムとの連携スピードを上げたい、連携開発の工数を下げたいといったニーズがある方はぜひお気軽にお声がけください!
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