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小山伸二
2019年3月4日 21:18
1蜜柑の山からみえる海しずまりかえる島を歩くひとかげもなくひとり戦後の歌をスマホで聴く若いひとたちのいる場所から離れていつかとおい場所にきみとふたりで行ってみたかったあかるい街の通路でステップ踏んで本たちも眠る建物を吹きぬける風を感じるためにいまこそ口ずさむ詩句を懐から出そうきみの月のひかりの本棚に並べるために世界を抽象してみせてよ、と言ったねきみ新宿の雑踏
2018年2月18日 23:39
1 猟犬の遠吠えが山彦になって 尾のながい小鳥のさえずり 向日葵の種がならぶ切り株 空は夜の支度をはじめて 気のはやい星々がちらちらとひかりだす 頬をなでる風のつめたさ からだのなかを流れる 血液のせせらぎの音が聴こえる気がする 遠い村 どこまでも広がる 深い谷と聳えあがる崖を眺めていると 何万年ものときを刻んだ この星を抱きしめたい 生まれきて 潰えた命を い
2017年12月18日 13:31
歌はどこにあるのだろうぼくらのことを見ているんならそこから降りておいでそう呟いた彼もいまは町から失われてしまった美しい電飾から逃げるようにしてバスがギアをあげていく十二月の夜に降り立ったぬけ殻たちを残してあしたの天気を気にしない北の海から流れて来る者たち枯葉のような小舟に命をあずけて汚れた手が機械をいじる海峡を流れて漂着した者たちに区別をしない神さまパンとテレビをあげ
2017年8月20日 00:56
土砂降りの雨をホームから眺めているメッセージが届いた午後みんなの残りの時間が刻まれているからだを通過していくものが心でとまればいいのに誰もが小走りになって建物のなかへ稲妻さえ見えない空の下で
2017年8月5日 23:19
終電が西の闇に溶け込んでいくうつむきながらホームを掃き清める憂鬱な影も揺れている聖者の眠りのようにベンチに横たわるひとの寝息が聴こえる 交番前の横断歩道を渡ると居酒屋から出て来た賑やかな一群大切なことは見えないんだだれかが嬉しそうに叫んでいる鞄の奥にしまい込んだ青い光を今夜は封印しているんだね 冬のビルの一室に繋がれた罅がはいった月が見えただろうか始まりの物語を
2017年6月28日 08:28
雨の町で長靴はいて傘さして大学通りを歩いて帰ろう蛙の合唱が聞こえないのが残念だけど色とりどりの雪洞のような花が濡れているこんな日はなぜだかカレーをつくりたくなるんだ自分でつくるカレーをなぜだか食べたくなるんだ 大急ぎでお家に帰って玉ねぎをざくざくきざんで油を鍋にしいて炒めていく少しだけ塩してこがさないようにでも大胆にずんずん炒めていくひたすら水分をとばすイメージで
2017年6月2日 23:46
夕陽があたる場所子どもという主題で歌ってみる猫のようになって顎を地面に置くアメリカ製のジープで神社の階段を登ってみせた父さんも死んだ戦争は嫌いだと教壇で声を詰まらせた教師のいまを知ることもない くだらない規制と作戦結局、ながい階段がつづき昇り降りするだけ壊れた右目を再起動して海にしずむことのない川をさまようやがて影が見える駆け引きと脅しのゲームに負けたちいさなビロ
2017年4月18日 21:32
地中海ではとびっきり甘いお菓子ときむずかしい神々に会ったんだあなたのあふれる知識とナイーブな心が紙を花びらのように埋めつくしていった ひとひらひとひらしろい蝶蝶になって富士見通りを飛んでいったぶっきらぼうなアマノジャクほんとうは翼がはえていたんだ 自由気ままにひょいと路地を飛び越える誰かとすれちがいたくないからニンゲン嫌いを気取っていたけれど千の花と樹の名前を教
2017年4月1日 00:03
夜中に届けられたメッセージ天使の絵を描いてみせてくれたあなたがこの町から失われた、と三月も果てる夜に はちきれんばかりの知恵がつまった人生の箱をあなたはいつも重たそうにひきずりながらときおり公園の樹々のなまえをぼくたちに教えてくれたあなたは帰らない旅人になった ぐるりとひとまわりするだけのひとの世であなたにはもうにどとあたらしい季節は訪れないことをぼくたちは知らされ
2017年2月28日 17:45
雪のかおりがする通りを歩くいつか泊まった宿坊の夜明けまえひとり湯舟につかったぼくたちの芭蕉が恋した出羽三山見えない南谷をこの町で思い出す二月 逃げる兎のように飛び跳ねる菜の花がほらあんなに咲いている世界で飛び越えることのできないひと群れのニュースが届いている いくつもの国のひとたちがおなじ食卓でともに食べ飲みあかした宴のあといくつもの寝息の交響曲まるで二月のレク
2017年1月12日 00:19
王様のガレット仲間と囲んで順番に選んでいくぼくたちつぶらな瞳の小犬たちもじっと見守っている 美味しいチーズとパンワインと生ハムサラダとおしゃべりと新しい年のはじめての笑い声が広がる しあわせな食卓ぼくはうっとりしているやさしい仲間とこういうひとときもいいもんだよね さあ、ぼくの順番だえいやっとひと切れを指差すとかわいい苺のフェーブがアーモンドクリームに埋ま
2016年11月1日 22:51
あおいろ、そして白みどりなすこの時代の田畑それはひかりの車窓のカンヴァスそして、マッチ箱の家屋の連なりさかなのかおにも似た走るとどろきいなづま稲の妻のひかりのスパーク実存の風景なにも語らず実存の初秋なにも意味なくはいいろ、そして赤とりどりのデザインの貧困この国ときたらひとりぼくたちはひかりの煉獄のなかこの国ときたらみどりなす田畑自転車の少年と少女がならんで走る
2016年10月3日 03:07
喧嘩でもしているのかなそっぽを向いているふたり世界はどうなっているんだ手のひらの機械をいくらいじっても死者には接続できないこども時代は終わりヒーローだって誰も救いにいけない どんな危機が迫っているというのだ確認できない事象つまりガッジーラということ女の子が嘯いている赤坂見附のきついカーブのあたりもう仲直りしてそっと手まで握りあっている きみはひとり読みさしの本を閉
2016年8月21日 00:08
雲が映り込んでいるビルディングにつよいひかり眩しくてラブロックかたいきずなやわらかい風に揺れてラブロックきみとぼくのなまえいちどしかない人生をいま生きている実感してるよいまをラブロックしなやかでとかれることのないむすばれた魂を