三月に、さよなら
夜中に届けられたメッセージ
天使の絵を描いてみせてくれたあなたが
この町から失われた、と
三月も果てる夜に
はちきれんばかりの知恵がつまった
人生の箱を
あなたはいつも重たそうにひきずりながら
ときおり公園の樹々のなまえを
ぼくたちに教えてくれた
あなたは帰らない旅人になった
ぐるりとひとまわりするだけの
ひとの世で
あなたには
もうにどとあたらしい季節は訪れないことを
ぼくたちは知らされる
蕾のふくらんだ大学通りで
公民館での詩の集まり
あなたの詩を忘れることはできない
過剰なことばは
いつもあなたを追い越してしまう
嵐のあとの空白の荒地
そのさきに広がる長い沈黙の紙のうえ
あなたの描いた天使たちが
ダンスしている
この三月を
ぼくたちは忘れない
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◎国立ランブリング「創作ノオト」
国立での詩の仲間のIさんの訃報に接した三月。
堅い蕾の桜の樹のしたで。
ひとはだれもが、いつか帰らない旅人になる。
厳しいの現実のなか、それでも花は散り、
そして別の花が咲く。
残酷な季節。
さようなら、Iさん。
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