小山伸二
マイクロ出版社の書肆梓です。
小山伸二の詩の置き場所です。
朗読音源です。
コーヒーにまつわるあれこれ。
詩集『七つの海』山内聖一郎、待望の第二詩集! 2021年5月、決然として世に問うた渾身の第一詩集『その他の廃墟』から3年。待望の第二詩集も登場。太古から永遠の未来にわたり七つある海への船出の詩は、すでに不穏な呟きとともに、始まりを告げる。中綴じ8ページの著者自身による「自註」が付録に。 著者:山内聖一郎(やまうち・せいいちろう) 1959年3月鹿児島県生まれ。鹿児島県立鹿屋高等学校卒。詩人。卒業式を待たず東京へ出奔。建築作業員、バーテンダー、店員、 事務員などの職を転々と
『まーめんじ』細田傳造(2022年)栗売社 今年の3月3日発売の細田傳造さんのできたてほやほやの詩集。 1943年生まれの細田さんは、2012年、69歳のときに出した第一詩集『谷間の百合』(書肆山田)で、中原中也賞を最年長で受賞した詩人。 平易な言葉のつらなり、うねり、ささやく世界が、さざなみのように、そよ風のように紙面から立ち上がってくる。 地面に落っこちている記憶のなかの石ころが、細田さんの言葉で拾い上げられると、キラキラ光る宝石のようにも見えてくる。 詩ができる
きみが居てくれたらそれだけでいい 空があるのだから どのくらいポケットのなかに 重たいものがぎっしり詰まっていても 父さんだって たくさんの嘘を泳いできたんだ 事業のこととか父親との確執とか ぜんぶありきたりのこと 母さんだって 恋したこともあったんじゃないかな あの時代に グラマンの機影に気づいたのと同じ耳と瞳で 樹を眺め 歌を聴いた そんなこともあったはずだ きみがここから見えなくなるのが怖い 空は残っていても どんなに甘いドロップが唇を濡らしても 地上には 届かない
ベルリンからミュンヒェンに向かう列車の中で 通訳者が隠した書類が 世界の運命を変えたかもしれない 理想と現実 情熱だけでは切り抜けられないんだ政治は そう一喝される青年外交官 Netflixの配信を見つめるぼくは 採点待ちの学生たちのレポートを 同じパソコンのなかに放置したまま 煙草と酒が嫌いだった鬼のことを思い出す 殺人工場を発明させた鬼 有機農業と菜食主義を世に広めるために 排除すべき者たちに 星をつけてまわった 温かいコーヒーが待っているから
【2019年9月18日にアップした記事です】 気がついたらもう9月である。 しかも、とうに半ばを過ぎて。 光陰矢の如し、である。 さて、何も書かなかった夏に、東京と鶴岡をつなぐ楽しい2つのイベントがあったので、バカンス明けの今回は、そのことを書いてみたい。 山形県鶴岡市。 庄内平野と山と海を擁した日本を代表する食文化宝庫の地。日本唯一のユネスコ食文化創造都市でもある。ぼくは、この地域と数年前から仕事を通しておつきあいさせていただいている。そのなかで、ふたりの伊藤さんと出
人生もいよいよ最終コーナーにはいったのだろうか。 それにしても、まだまだ、いろんなことが道半ばでは、あるのは間違いないところだ。 気がついたら、いろんなことをやり散らかしながら、散らかったものが、じょじょに、ひとかたまりの荒野をころがる刺草のようにもなり、いま、ここにあるような気もしてきた。 Covid-19時代のいまを生きているぼくは、いくつものリモート会議やら、リモート講演やら、リモート朗読会などを梯子しながら、雨降りの6月の土曜日にたたずんでいる。 タイムライン
書肆梓の最新刊、詩集『その他の廃墟』。 著者の山内聖一郎さんの第一詩集となります。 著者の山内聖一郎さんは、1958年鹿児島県生まれ。ラ・サール学園中学校入学。この頃から詩作を始め、その後、県立の鹿屋高等学校に。 実は、この高校で、ぼくは彼の同級生で、同じ文芸部に入り、早熟な彼の影響をかなり受けて、詩や、文学の魅力に取り憑かれてしまいました。 その頃の彼のことは、ぼくの第一詩集『ぼくたちはどうして哲学するのだろうか。』のあとがき「十七歳の詩人のきみへの挨拶」に書きました。
1 コーヒーの語り コーヒーをめぐって、あれやこれや、語ってきた20年だった。 「コーヒー文化研究」にも散発的に寄稿してきた。「詩とコーヒー」をテーブルのうえに並べて、なにごとかを語ろうとした。 コーヒーという具体的な飲料に対する興味に支えられながら、コーヒーを通して見えてくる世界の広さと深さに魅せられてきた。そんなぼくの20年だった。 今回、コーヒーを語る旅を、『コーヒーについてぼくと詩が語ること』として一冊にまとめることができたのは、皮肉にもコロナ禍で自宅待
中村哲さんに 星の丘をこえて 月あかり 渇いた喉をうるおす人々に影をつくる いのちの水を 覚醒と酩酊の日々を あなたとともに 井戸を掘る 地上の声を響かせるために 村にはかならずひとりの詩人が この地を去るひとに送る挨拶を 時の番人をだしぬいて この宴のなかで われらが友に たとえ地上に悲しみがたえなくとも あなたの笑顔だけは忘れない ありがとう、 そしてさようなら
9月1日、いよいよ『コーヒーについてぼくと詩が語ること』(書肆梓)が発売になります。 みなさま、お楽しみに!
北の花園から 土砂降りの境内まで 血を吐いてみせた 役者の顔も忘れてしまった きみとの紅色のテント 乳飲み子との別離 声にならない嗚咽の響きは 一篇の詩をなしたのか なんて遠くまで来てしまった ちいさな画面のなかで笑ってくれた その手に触れることもできない この時代に 抱きしめてあげたい と、囁いたあなたの声を 胸の揺り籠にいれて 蒼い空へ飛んでいけるかな 鳥ではない ぼくでも
空港から二時間ほど走った島の突端 サンセットホテルのバルコニーからは 砂浜につづく道がある だれもいない浜辺 虫がたくさん死んでいた 笑いながら 野草を煎じる女たち 豚の世話をする男の話を聞いて 陽気な女房の弁当を食べた 夏が終わらない島で だれもが飽きずに雲を眺めていた 廃校の体育館 わすれ草ゆれる 泣かない島の サンセットホテルの部屋に 夜明けまえの海風を呼び込んで 眠れないぼくは からっぽになった酒瓶を逆さにして 意味不明のメモと 熱弁をふるった夜を捨てる 死者たちをよ