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冬の旅から
1
猟犬の遠吠えが山彦になって
尾のながい小鳥のさえずり
向日葵の種がならぶ切り株
空は夜の支度をはじめて
気のはやい星々がちらちらとひかりだす
頬をなでる風のつめたさ
からだのなかを流れる
血液のせせらぎの音が聴こえる気がする
遠い村
どこまでも広がる
深い谷と聳えあがる崖を眺めていると
何万年ものときを刻んだ
この星を抱きしめたい
生まれきて
潰えた命を
いまは思わずにはいられない
このぼくはいったい何者なのだろうか
この手のひらから
ゆるやかな哲学が
ほろほろととけて消えた
きみに恋した時代の地層を
村の道でかぞえて歩く
おびえた獣たちの気配から
かんたんではない森のパズルに迷いたい
きみと手をつないで渡った橋を
思い出して
おおきく息を吸って目を瞑る
2
山の水を沸かして
珈琲をたてる
だれも居ない教室の朝
はりつめた冷気のなかで
お湯のしずくだけが
異国の香りのなかに落ちていく
ひとはなにもできない
ただ生きていくだけ
ひとはなにもできない
ただことばをさがすだけ
山の水を沸かして
珈琲をたてる
さびしい苦みだけは手離さない
記憶だけは残して
輪郭のある器に
そっとそそぎこむ
遠くで若いひとたちの声がする
山の動物たちも動き出す
はげしい雪を降らす
黒い雲が迫っている
◎ 国立ランブリング「創作ノオト」
年があらたまって1月は、あっというまに過ぎてもう2月。
この冬は旅から旅の日々でした。
今回のランブリングは、国立を飛び出しての特別バージョン。
そして、雪国から帰って来た国立は、寒い日々のなか、春が遠くないことを感じさせてくれました。
写真は、山形県鶴岡市温海地区の廃校になった小学校の校庭の冬景色です。
https://happyspot.jp/blog/theme.aspx?id=%81E%8D%91%97%A7%83%89%83%93%83u%83%8A%83%93%83O