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武術とエントロピー

エントロピーとは物理学における重要な概念で、システムの乱雑さや無秩序さを表す指標である。自然界では、放っておくとエントロピーは増大する傾向にあり、これは物事が無秩序な状態へと向かう普遍的な法則として知られている。

武術の修練において、我々は常にこのエントロピーの増大と戦っているといえる。例えば、正しい姿勢や形を保つことは、物理法則に則った、最も効率的な動きを身につけるための基本である。站樁(タントウ:立禅)のような立位瞑想においては、じっと動かずに立っているように見えて、実は身体の内部では絶え間ない微調整が行われている。これは身体という系の中でエントロピーの増大を抑制する過程といえるだろう。

武術における「気」の概念も、エントロピーと密接な関係がある。気を巡らせるという行為は、身体というシステム内部のエネルギーを整然と配分し、効率的に運用することを意味する。乱れた気を整えることは、すなわちエントロピーを減少させる作業なのである。

また、組手における相手との関係性においても、エントロピーの概念は重要な示唆を与えてくれる。相手のランダムな動きは一種の不確実性、つまりエントロピーをもたらす要素である。熟練した武術家は、この不確実性に対して最小限の動きで対応し、システム全体のエントロピーを効果的に制御することができる。これは制心道でいう「制心」の本質的な意味の一つともいえる。

しかし、エントロピーの制御は永遠の課題である。日々の修練を怠れば、技術は必ず劣化する。これはまさにエントロピー増大の法則の現れであろう。だからこそ、武術の修行者は日常の全てを修練とすることによって、常に秩序ある状態を維持する努力を続けなければならない。

このように武術の修練は、エントロピーという物理法則とも密接に関連している。そして、この視点は単なる物理的な現象を超えて、人生における秩序と混沌の調和という深い哲学的な示唆も与えてくれる。武術の修行者として、このエントロピーとの対話を続けていくことは、技術の向上だけでなく、人生の方向性を考える上でも重要な意味を持つと感じている。

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