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BtoB広報・PR 導入事例の作り方と活用法

BtoB企業のPR・広報は”導入事例が大事”だと聞いたことはあるでしょうか?

・プレスリリースで発信するネタに困っている
・社内で導入事例が制作されていない
・広報が導入事例をどう活用すればよいか分からない

という方に向けてのnoteです。

BtoB企業の多くではセールス&マーケティングの施策として、導入事例を作成します。広報としても事例づくりに協力し、活用しない手はありません。

本記事では、導入事例を作成する目的や効果、また作成した後の広報としての活用方法について紹介します。


導入事例作成の目的

セールス&マーケティングで有用なコンテンツ

マーケティング部は導入事例コンテンツを製品ページに掲載したりセミナーで紹介するなど、リード獲得やナーチャリングに活用できます。

セールス部は商談時や、定量効果が出ている事例をお客様の上伸資料に流用していただく提案などに活用できます。

PR・広報にとっての導入事例コンテンツ

PR・広報が導入事例の作成に介入することで、広報自身、会社の双方にとっていくつかのメリットがあります。

顧客理解が深まる

そもそも、顧客との接点が少なくなりがちな広報・PR担当者にとっては事例インタビューの場は、顧客と接点を得られる貴重な機会です。
自社サービスがどう利用されているのか、顧客は情報収集をどこで行っているのか、顧客が自社のことをどう思っているのかの理解を深めることは広報活動に役立ちます。

発信コンテンツとして優秀

導入事例はプレスリリースやニュースレターにして情報発信することができます。そして導入事例は業界紙への掲載確率が比較的高く、顧客にとって有益なコンテンツになり得ます。
事例コンテンツの制作をサポートすることで、その頻度や質が高まるのであれば、積極的に参画していきましょう。

顧客とのリレーションづくり

広報が顧客と直接面識があれば、今後メディアから取材要請が入ったときに取材協力の打診が比較的しやすいでしょう。
また、先方の広報担当者の温度感や取材へのスタンス、現場で画になりそうな使い方がされているか、などを事例インタビューの場で把握することができます。

導入事例コンテンツの種類

導入事例は打診するタイミングと内容によって二分されます。

①導入された事実を伝えるコンテンツ
導入(契約)されたタイミングで打診するコンテンツ。
業界のリーダー企業やエポックメイキングな企業に導入されたときに、いち早く世の中に公開する意図で作成されるケースが多いです。
導入されて間もないので”成果”まで語っていただくことはできませんが、「どういう狙いで導入(契約)されたか」「どんな効果を期待しているか」を中心に顧客に語っていただきます。

イメージは以下などです。

②導入成果まで詳細を伝えるコンテンツ
導入から数か月後、定量の成果が出た時点で打診するコンテンツ。
定量の成果を示せるので、セミナーやeBook(ホワイトペーパー)などに流用することもできる万能なコンテンツです。

イメージは以下などです。

導入事例の制作プロセス

導入事例制作のポイントとプロセスを具体的にご紹介します。

1.協力いただける企業を探す

インタビューの許諾打診を行うタイミングは、業務プロセスに盛り込んでおくと良いでしょう。
発注書の中に「導入事例協力」の文言を盛り込んでおいたり(契約にあたって文面の削除の必要があれば都度対応)、カスタマーサクセスのオンボーディング完了から●ヶ月後に打診するルールにしておくなどです。

事例インタビューを打診する企業の選定基準は以下などです。

  • サクセスしているか(定量成果が出ているか)

  • 営業やカスタマーサクセスが打診しやすい関係値を有しているか

  • 営業戦略やマーケティング戦略のターゲットに合致した顧客か

    • 解決する課題は合致しているか

    • 業種業態は合致しているか

    • 業界内のリーダー企業などネットワーク効果が見込めるか

  • 特殊なケースの案件ではないか

2.PR目線での工夫 -企業選定-

上記の選定基準と合わせて、選定にPR目線も盛り込みましょう。
導入事例コンテンツを発信する際に、メディアに持ち込むことを考慮して以下の視点も加味して企業を選定します。

BtoBtoC
メディアは貴社のサービスを取り上げたいのではなく、一般消費者の生活の変化を取材したいと考えています。導入企業はBtoBでも、その先にエンドユーザーがいるBtoBtoCの企業の事例の方がマスメディアに紹介されやすいです。
具体的には、お客様のドメインが、医療 / 飲食 / 物流 / 小売 / 不動産 / 教育 / 農業などの事例は、多くのメディアで紹介されやすいです。

弱きを助ける
誰の何を解決する商材かを語るとき、社会の変化の中で人知れず困っている方、業種にスポットを当てて語れるとマスメディアに紹介されやすい傾向にあります。
具体的には、導入先が医療 / 飲食 / 物流 / 介護 / 教育 / 農業 / 中小企業などはメディアバリューが高くなります。

なぜ今
今取り上げるべき理由がないと最終的に掲載になりません。社会情勢や季節、法改正のタイミングなどにハマる事例を選定します。
・コロナの影響で~
・来年の法改正を前に~
・年末商戦のピークを前に~

例えば「サービス導入によって年末商戦を乗り切れた」エピソードをお持ちの導入企業の事例は、9、10月に公開するなど、メディア、その先のエンドユーザーが興味を持ちやすいタイミングを考慮しましょう。

意外性
社会の価値観とは異なるイメージの顧客、意外性のある驚きの発見がある企業を選定します。
具体的には
・DXツールが創業100年の老舗企業に導入された
・地方でニーズがありそうなサービスが都心企業に採用された
・お堅いイメージの企業に、ユニークなサービスが導入された

注意点は、マーケティング戦略のターゲットと不一致にならないよう、文脈は「マーケティング戦略のターゲットへの導入が広がっており、さらに昨今は意外にも●●な企業にも導入が広がっている」という文脈にする必要があります。

3.取材先に打診する

顧客への頭出しは接点を持っている営業かカスタマーサクセスに行っていただき、「詳細は広報から」として引継ぎいでもらうとスムーズです。

打診の際には、BtoBマーケティングコンサルの才流さんの以下依頼書のサンプルが役立ちます。

導入事例依頼文書のサンプル(Word)のダウンロードはこちら

https://sairu.co.jp/method/2629/

最低限インタビューすべき内容は以下です。
・サービス導入(契約)する前の課題(定量)
・当社サービスを選定した決め手
・定量の成果
・定性の成果


+@でコンテンツには掲載しなくとも確認したいことなどをインタビューします。
・当社サービスを知ったきっかけは何か
・当社サービスを一言で表すと何か
・当社サービスを推奨したい企業はどんな企業か
・当社サービスへの今後の期待、改善点

その他、ロゴデータや活用方法(プレスリリース、広告、営業資料への記載)の許諾も網羅しておきましょう。

また、事例インタビューに対応いただく先方に何らかのメリットを提供できると打診がスムーズです。
例えば、被リンクの提供、社員のSNS拡散で先方サービスへの流入、または事例を広告で利用するのであれば先方の企業認知の向上などを挙げます。

4.取材の準備をする

先方には、取材の日時、場所、インタビューはオンラインかオフラインかの確認をします。
オフラインの場合は、先方にインタビュー用の会議室手配のお願い、写真撮影したいシーン(会社ロゴ前、サービスが使用されている現場など)を提示しておきます。

また社内では、営業やカスタマーサクセスに事前ヒアリングをします。サービス導入された経緯、提案した内容、現在どのようにサービスが使用され、どんな成果が出ていそうか、などです。
事前情報を把握しないまま取材をしてしまうと当日は要領を得ないインタビューをしてしまいます。先方が触れてほしくない質問をしてしまう、概要を聞いただけで時間切れになってしまう、話が膨らまない方向に進んで軌道修正が難しいなどがあります。

5.取材をする

取材は、議事録とともに記録として録音、または動画撮影を行いましょう。

特にインタビュー内容を冷静にチェックはその場で行えた方が良いです。
例えば

  • ヒアリング事項は網羅出来ているか

  • 内容に整合性が取れているか(サービス導入(契約)する前の課題と、選定した決め手、定量の成果が一致しているか)

  • 定量の数字を聞き忘れていないか(「いろいろ」「たくさん」など曖昧な言葉でヒアリングが終わっていないか)

のチェックです。
また、定量で成果が示せないと言われた場合は、大よそでも数値化できないか、表現や項目を変更すれば数値化できないかなどの確認をします。

また、必要項目を埋めるだけではなく、顧客が熱を持って語る場面があれば、それを発展させるなど、臨機応変なインタビューを心がけましょう。
「そういえば・・・」「実は・・・」「ここだけの話・・・」などのキーワードが出てきたら、話を発展してみるのも良いでしょう。
サービス導入に派生して、実はチームの相互理解が深まって・・・など想定の効果以外の話が聞けるかもしれません。

6.写真を撮影する

インタビュイーが自分一人の場合は、写真はインタビューの後にまとめて撮影することが多いです。が、別途カメラマンがいるのであればインタビュー中から写真を撮影します。カメラはスマホで十分でだと思います。

100枚くらい撮影するつもりで、どんどんシャッターを切りましょう。数枚撮っただけでは被写体が目を瞑ってしまっているものしか撮れていなかった、というケースは多いです。

また、インタビュー風景だけではなく実際に現場でサービスが利用されている写真もあると良いでしょう。記者に持ち込む際に使用します。(記者は現場の写真を希望します。)企業ロゴ前の写真は見込み顧客向け、現場写真は記者向けです。

7.原稿執筆

インタビューした内容をそのままの時系列で文字起こしすると、初見の人には理解しづらい場合あります。同じ話が複数回登場したり、前提の説明が抜けている文章などです。
インタビューに同席していなかった人や自社のサービスを知らない人が読んでも理解できるか、のチェックをします。

執筆した原稿は顧客確認を経て掲載します。

導入事例コンテンツの活用法

導入事例コンテンツは完成した後にどう活用するかが本番です。

①製品ページに掲載

必須です。自社の製品ページに掲載します。

②プレスリリースの配信

導入事例の内容を流用してプレスリリース形式にまとめてます。
イメージは以下などです。

※導入先企業が著名企業の場合は、プレスリリースタイトルの文頭は自社名ではなく、先方企業名を記載しましょう。

注意点は、PR TIMESでは事例コンテンツの配信に対して、基準が設けられており、条件を満たさない事例は、掲載できない可能性があります。
これはあくまでPR TIMESの掲載基準です。必ずしもこのルールに準拠しないプレスリリースを作成してはいけない訳ではありません。

③メディアへの送付

PR TIMESなどの配信サービスとは別に、メディアに直接プレスリリースを送付します。
具体的には以下など、親和性が高そうな編集部には直接送付しても良いでしょう。
・導入企業の業種の業界紙、業界誌
・導入企業が地方企業であれば本社地元の新聞社
・ビジネス系メディア(日本経済新聞、日経産業新聞、日刊工業新聞など)

以下記事などは、導入事例が元になって掲載された記事だそうです。

④SNSでのシェア

製品ページに掲載しただけでは、製品ページに訪問者した限定的な人にしかリーチできません。
各種SNSでシェアをして流入を図りましょう。

※シェアするときは、PR TIMESのページよりも、製品ページの事例記事を直接シェアした方が良いでしょう。他のサイト内のコンテンツに遷移してもらえるかもしれません。

⑤メルマガの配信

ハウスリストへのメルマガにも記事を案内しましょう。
導入事例の企業の同業他社向けのリストに配信が出来ると尚良いでしょう。

CTAに「より詳しい情報の無料相談をする」など、次のアクションを促すようにしておくと良いでしょう。

⑥eBook(ホワイトペーパー)

導入事例記事の内容を製品特徴などとともにまとめて、ダウンロードコンテンツのeBook(ホワイトペーパー)にします。
導入事例が複数完成したら、「事例10選」などとして事例集にしても良いでしょう。

⑦セミナー

セールス&マーケティング部に、導入事例の内容を紹介するセミナーを開催してもらうのも有効です。
eBookよりも「今検討している理由」がある人が参加する可能性が高いです。

⑧メディア用資料に掲載

事例コンテンツを公開した後も広報活動に活かしていきます。
公開済みの情報はニュース価値が下がると思ってはいけません。
メディアキャラバン用の資料にも掲載した方がよいですし、例えば「サービス導入によって年末商戦を乗り切れた」エピソードの事例であれば、翌年の年末商戦の前の9、10月に、記者当てにメールで紹介しても良いかもしれません。

導入事例コンテンツは30件を目指す

株式会社WACULさんから以下研究レポートが出ています。

事例コンテンツは最低12件が必達で30件を目指し、資料請求導線を設置すべき。

https://wacul.co.jp/lab/examination-btob-site/

導入事例コンテンツは、選定~掲載まで最低2ヶ月はかかりそうです。
上手く外注できる部分は外注し、30件を目指しましょう。

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