2018年10月の記事一覧
冥剣サーベラスの担い手
オルフェは断言できる。世に魔剣の類は数あれど、自分が引き抜いたのはまごうことなき『外れ』であると。
それは決して、彼女の得物……獄炎の冥剣サーベラスがなまくらということを意味しない。揺らめく炎のごとき刀身に、常にまとわりつく黒い炎。鎧ごと敵を切り裂くことだってできる。
だが。
『あはははははは!』
「止まりなさいこのバカ剣! ……ギャー! そこの人たち、どいて! どいてぇぇぇ!』
超高難度脱出ゲーム〜水中編〜
差し込む日光が、周囲を泳ぐ色とりどりの魚たちを、美しいサンゴ礁を照らし出す。
絶景と言い切っても差し支えない光景を前に、しかし小鳥の気持ちは重かった。正確に伝えるのであれば、そこに気持ちを向ける余裕がなかった。
「なにがどうなってるの、これ……」
疲れた呟きが漏れる。それはどこにも届くことはないだろう。
なぜといって、今彼女がへたり込んでいるのが綺麗な球形をした泡の中だからだ。どう
太陽の少女と冬の魔女と
ノーサは、彼女と初めて出会った日のことを忘れないだろう。滅多にない青空の日だったから。
また、彼女のことも忘れないだろう。珍しい旅人だったから?それだけではない。
決して忘れられないだろう。炎のように赤い髪を。
決して忘れられないだろう。凍てつく空気などものともしない、あの薄手の服を。そこから覗く、よく日焼けした肌と、その上に刻まれた神秘的な紋様を。
……決して忘れられないだろう。
パニック! インベーダー
出会いはいつも唐突だ。
宇宙から落ちてきた金属質の球体は、隕石のごとく屋根をぶち破り、にもかかわらず周囲へ衝撃など発生させることなく『着陸』した。
驚愕の視線の中、球体の一部にぽっかりと穴が開き、そこからなんとも名状しがたい体色の軟体生物が這い出してくる。
その目と思しき器官が最寄りの人間に向けられる。次の瞬間、軟体生物は一瞬にして伸び上がり、絡み合い、人間そっくりの二足歩行形態へ変形
ガリアちゃんのわくわく王都訪問記
謁見の間は緊張に包まれていた。近衛騎士団の精鋭たちが勢揃いし、玉座に座る王と、傍らの王女を守護している。
「……来たぞっ」
誰かの囁きと同時、王の前に黒い雷が落ちた。それは幾度となく宙を裂き床に複雑な魔法陣を描き出す。
一際強い輝きのあと、『それ』が姿を現した。
闇夜に浮かぶ月を思わせる青白い肌。ねじれた二本の角。そして騎士たちがまるで子どもに見えるほどの体格。
魔王と
やはりあなたの正体は
「もう隠し事はやめましょう。お互いに」
放課後、校舎裏。絶賛交際中の希美の言葉に、正義は心を決めた。もはや感づかれている。
認めたくなかった。だが、いつまでも顔を背けてはいられない。
「……そうだな。希美。先週、デートの途中で用事があるからって帰っていった。あのあとどこに行ったんだ? 魔獣が現れたばっかだったってのに」
「正義くんこそ。ちらちら携帯ばっかり見ちゃって。そんなに……気にな
アークエネミー・ハウス!
薄暗い闇の中、精巧な機械人形が朗々と告げた。
「喜ばしい知らせです。我らが盟主がまた一人、同志の召喚に成功しました」
「タイタニアと申します。以後お見知りおきを」
豪奢なドレスの裾をつまみ、美女が一礼。その背からは透けるほどに薄い翅。
椅子に腰掛けた獣人が興味深げに唸る。
「妖精族か? 懐かしいのが来たもんだ」
「ええ。あなたの世界にも我が同胞が?」
「もういねえ。人間にやられた」
泉から湧いてきた美少女と美少年の話
ことの始まりは、あの泉に落ちてしまったところからだ。なんで僕はあんなところでつまづいてしまったのか。未だに悔やみきれない。
次に起きたことは、こうだ。
『落ちてきたあなたは、このいつまでも若々しい少年ですか? それともこの道行く人がつい振り返ってしまう美貌の少女ですか?』
水中で突如出現したその女はにっこりと言った。
無論のこと、僕は首を横に振ったのだ。そんな自分の見た目に自信
これはよくある観察日記です
それは目覚めてすぐに、自分が見知らぬ地にやってきたことに気づいたのだと思う。はるか宇宙から見たこともない乗り物でやってきたそれは、辺りを見渡して一声鳴いた。見慣れぬ場所に置かれたストレスか。この地を離れたことのない私は想像することしかできないが。
幸運にもそれには傷ひとつなく、動くことに支障はないようだった。
私にとっても嬉しい誤算だ。新しい種を飼育したいと思っていた矢先に、ゲージ随伴で
ゾンビ護配送団の憂鬱
「待って……!」
両手を前に翳し哀願する少女……正確には『元』少女へ、キリィは無慈悲に剣を振るった。
変色した肌、光のない眼。相手がゾンビーであることは明らかだ。見過ごしたら禍根を残す。故に斬る。
果たして刃はゾンビーの身体を斜めに断ち切った。
『テメーッ!商品に傷つけやがったな!』
が、その後の出来事はキリィの想像を超えていた。
ゾンビーのそれではない声音の罵声とともに、噴出し