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デッド・アンド・アライブズ
その日は不幸続きだった。
「こっちだ! 早く!」
少年に手を引かれるがままにシノは駆ける。彼女はいまだ混乱の中にあった。どうしてこんなことになっているのだろう?
背後からは呻き声の群れが追ってくる。引き離してはいるものの、執念深くついてくるのだ。
二人は廃墟同然のビルへと駆け込んだ。それと同時に響いた銃声に、シノは身体をびくりと震わせる。
背後を見ると、追手の一
壁を挟んだ向こう側から
「ご飯よー」
階下から聞こえる母の呼び声に、私は溜息とともに立ち上がる。家族全員でご飯。となると、あいつを呼ばなくてはならない。
机から画用紙を引っ張り出し、大きく円を描く。その中に複雑な紋様。フリーハンドかつ資料もなしにできるようになったのは自分でもたいしたものだと思う。その後にはだいたい嫌気が差してくるのだが。
「■■■■!」
それを床に敷き、呼びかける。人間には到底発音でき
全自動二輪、高速道路を爆走す
噂の出所はとあるトラック運転手だった。
某月某日の深夜のこと。いつものように高速道路を利用していた彼は、思いがけない衝撃に文字通り飛び上がりそうになったのだという。
「ぶつけられたのか!?と思いましたね。それくらい揺れました。けどすぐに違うとわかったんです」
運転手のMさんは手振りを交えながら語った。
「もう、窓がすごい勢いで鳴ったもんですから。トラックを止める云々の前に思わずそっちを見ちゃ
冥剣サーベラスの担い手
オルフェは断言できる。世に魔剣の類は数あれど、自分が引き抜いたのはまごうことなき『外れ』であると。
それは決して、彼女の得物……獄炎の冥剣サーベラスがなまくらということを意味しない。揺らめく炎のごとき刀身に、常にまとわりつく黒い炎。鎧ごと敵を切り裂くことだってできる。
だが。
『あはははははは!』
「止まりなさいこのバカ剣! ……ギャー! そこの人たち、どいて! どいてぇぇぇ!』
超高難度脱出ゲーム〜水中編〜
差し込む日光が、周囲を泳ぐ色とりどりの魚たちを、美しいサンゴ礁を照らし出す。
絶景と言い切っても差し支えない光景を前に、しかし小鳥の気持ちは重かった。正確に伝えるのであれば、そこに気持ちを向ける余裕がなかった。
「なにがどうなってるの、これ……」
疲れた呟きが漏れる。それはどこにも届くことはないだろう。
なぜといって、今彼女がへたり込んでいるのが綺麗な球形をした泡の中だからだ。どう
太陽の少女と冬の魔女と
ノーサは、彼女と初めて出会った日のことを忘れないだろう。滅多にない青空の日だったから。
また、彼女のことも忘れないだろう。珍しい旅人だったから?それだけではない。
決して忘れられないだろう。炎のように赤い髪を。
決して忘れられないだろう。凍てつく空気などものともしない、あの薄手の服を。そこから覗く、よく日焼けした肌と、その上に刻まれた神秘的な紋様を。
……決して忘れられないだろう。
パニック! インベーダー
出会いはいつも唐突だ。
宇宙から落ちてきた金属質の球体は、隕石のごとく屋根をぶち破り、にもかかわらず周囲へ衝撃など発生させることなく『着陸』した。
驚愕の視線の中、球体の一部にぽっかりと穴が開き、そこからなんとも名状しがたい体色の軟体生物が這い出してくる。
その目と思しき器官が最寄りの人間に向けられる。次の瞬間、軟体生物は一瞬にして伸び上がり、絡み合い、人間そっくりの二足歩行形態へ変形
ガリアちゃんのわくわく王都訪問記
謁見の間は緊張に包まれていた。近衛騎士団の精鋭たちが勢揃いし、玉座に座る王と、傍らの王女を守護している。
「……来たぞっ」
誰かの囁きと同時、王の前に黒い雷が落ちた。それは幾度となく宙を裂き床に複雑な魔法陣を描き出す。
一際強い輝きのあと、『それ』が姿を現した。
闇夜に浮かぶ月を思わせる青白い肌。ねじれた二本の角。そして騎士たちがまるで子どもに見えるほどの体格。
魔王と