【小説】あと6日で新型コロナウイルスは終わります。
~無戸籍~
消毒作業をしながら、電話番として、受付スタッフ、事務スタッフ、看護師が院内の固定電話付近にスタンバイした。
院長と看護師は、正面玄関に簡易のデスクとイスを持ち出して、患者さんの問診にあたった。
緊急避妊ピルを要する患者さんと、会社を午前中のみ休みをとってきた婦人科の患者さんのみ処方し、あとの患者さんは午後にまわした。
午前10時過ぎ、B総合病院から連絡があり、⚫⚫さんが新型コロナウイルス陰性であることが判明した。
隔離していた看護助手の⬜⬜さんに伝えると、彼女は涙を流して喜んだ。
*
昼過ぎ、B総合病院のソーシャルワーカーから電話があり、看護師が対応した。
「⚫⚫さんは生保(生活保護)に入れるように話を進めていきます。パートナーのDVですが、専門の保護施設や弁護士を紹介しますが、本人が関係を経ち切りたいと思わなければ、こちらとしてはどうしようもないのが現状です。それと、⚫⚫さんには小学生の二人のお子さんがいるという件ですが……」
看護師はメモを取りながらため息をついた。
どんな母親であろうと、子どもは母親が好きで離れられないと痛感した。
二人の小学生は、学校には行っていなかったが、無事に生きて生活していた。
⚫⚫さんの長男と長女が働いて、育てていたのだ。
⚫⚫さんには、小学生の子どもが二人いるだけでなく、他の子と同様に普通に学校には行っていれば、高校1年にあたる長男と中学3年にあたる長女がいたのだ。
その存在にどの行政も気づいていなかったのは、長男も長女も出生届が出されていなかったからだ。
実に、長男は16年間、長女は14年間、戸籍がなかった。
新型コロナウイルスが終わるまで、
あと6日。
これは、フィクションです。
◆自殺を防止するために厚生労働省のホームページで紹介している主な悩み相談窓口
▼いのちの電話 0570・783・556(午前10時~午後10時)、0120・783・556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570・064・556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120・279・338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120・279・226(24時間対応)
この記事が参加している募集
たくさんの記事の中からわたしの記事にご興味をもち、最後までお読みくださって、ありがとうございます。 いただいたサポートは、私が面白いと思ったことに使い、それを記事にしたいと思います。