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ハッピーな気持ちになれる本

 三度目の緊急事態宣言の再延長が決まった。そもそも4月中旬に蔓延防止措置が出てから再び在宅勤務となり、あまり外出することもなく家で仕事をするだけの毎日だった。そんなぱっとしない日々に、とてもハッピーになれる本を読んだ。作者は青山美智子さん。3冊読んだけど、どれもほっこりと優しく、じわっと感動して、温かな気持ちになれる。

「猫のお告げは樹の下で」

 とある神社に大きな樹がある。この樹はタラヨウといって、葉に傷をつけると文字がかけることから通称ハガキの木と呼ばれている。悩める人々がこの神社に訪れると、どこからともなく1匹のネコが現れて、タラヨウの樹のまわりをぐるぐると回って、葉を1枚落としてくれる。その葉には、渡された本人にしか読めないお告げが書かれてある。小学生から定年後のおじいちゃんまで、それぞれが猫からメッセージを受け取り、それをどう解釈していくのかを描いたオムニバス作品。

 この本を読むまで、タラヨウについては知らなかったけど、葉っぱにはかなり鮮明に字が書けるみたい。メッセージを書いて切手を貼ると、もちろん定形外だけどちゃんと送れるらしい。送ってみたい! 調べてみると、京都の神社でも植わっているところがありそうなので、近々見に行こうかな。

「木曜日にはココアを」

そのカフェには毎週木曜日にやってきて、同じテーブルに座り、ココアを注文する素敵な女性がいる。彼女は、いつもそのカフェでオーストラリアに住む誰かにエアメールを書いている。彼女を“ココアさん”と名付け、ひそかな恋心を抱くカフェの店長。忙しい仕事と育児の間にそのカフェに訪れる女性、気まずいまま別れた友達とカフェで再会する女性。オーストラリアとカフェを舞台に、さまざまな人の人生の一部が描かれる。

 カフェでコーヒーを飲んでいて、隣の席の人の存在がふと気になることがある。同じスペースを同じ時間を共有していても、隣の人にはまったく違う人生があることを妄想したりする。その人はもしかしたら最高にうれしいことがあった直後にコーヒーを飲んでいるのかもしれないし、絶望の淵に立ちながら味のしないコーヒーを飲んでいるのかもしれない。すれ違う誰かの人生を垣間見た気分になる1冊。

「お探し物は図書室まで」

 今度の舞台は図書館。受付の横に座っている司書の小町さんは、本探しのプロ。訪れる人に“探し物”を訪ね、それぞれにぴったりな本を選んでくれる。1冊の本が、人生を変えたり、悩みを解決する道しるべとなることがある。人生につまずいた人々と本との運命の出会いを手伝うスーパー司書さんのお話。

 3冊ともオムニバスなので、移動中や待ち時間に読むのに最適。それぞれの登場人物が作品を超えて微妙にリンクしているのも楽しい。読んでいる間に気付いたら口角が上がっているような、幸せな読書時間でした。

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