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SFとバンパイアとゾンビのごちゃ混ぜトンチキムービー!なのにテーマは生命と死!「スペースバンパイア」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(696日目)

「スペースバンパイア」(1985)
トビー・フーパー監督

◆あらすじ
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宇宙船チャーチル号がハレー彗星観測のために打ち上げられた。ハレー彗星に接近した観測隊は、彗星の中に巨大な人工の建造物を発見する。小型調査艇でその内部に潜入した一行は、巨大なコウモリの形態をした異星人の死体と透明な棺に入った全裸の美女に遭遇する。棺を回収して地球に向かったチャーチル号は、30日後に軌道を外れた場所で発見された。救助隊が派遣されるものの乗組員に生存者はなく、棺だけが回収される…。(star-ch.jpより引用)
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『宇宙船チャーチル号の面々はハレー彗星内で未知の人工建造物を発見。内部を捜索すると、そこには透明な棺に入った男性二人と女性一人がいた。調査目的で棺を回収して地球に向かうが、なんと彼女らは人間の精気を吸い取るスペースバンパイアだった』

というお話なんですけども、これはもうストーリーがトンチキ過ぎなうえに時系列もややこしくて途中から理解が追いつかなくなりました。それが面白いところではあるんですが…

当時のSFX技術の粋を集めた特撮シーンや、ハイクオリティな特殊メイクを施されたバンパイアの大群、そして美女バンパイアをマチルダ•メイ氏が全編ほぼ全裸姿で演じるなど何かと見所はたくさんありますが、いかんせん話がもうとっ散らかっております。

マチルダ•メイ氏演じる美女バンパイア
(m.crank-in.netより引用)

人間の精気を吸い取るスペースバンパイア(この時点で意味不明ですが)の話かと思いきや、生命がどうの死後の世界はどうのと哲学めいたやり取りを挟みつつ、最後はロンドンの町中が精気を求めて暴れ回るゾンビ(バンパイア)に埋め尽くされるという、常人では到底理解が追いつかないぶっ飛び具合がヤバかったです。

後半はもうゾンビ映画みたいでした。
(m.crank-in.netより引用)

私はこの作品を見終わった後、“ヤバい”とか“ぶっ飛んでるな”という抽象的な感想しか残らず、流石にこのままだといつものようにnoteが書けないと思い、1.5倍速にしてもう一度見返しました。それに加え、いつも以上にWikipediaや解説を読み込んで理解を深めようと努めましたが、そこまでしなくてもいいと思います。

精気を吸い取られると手前の人みたいになります。
(m.crank-in.netより引用)

監督を務めたトビー・フーパー氏は「悪魔のいけにえ」(’74)や「ポルターガイスト」(’82)等数々の名作ホラーを世に生み出してきたヒットメーカーで、個人的にはこの企画でも視聴させていただいた「スペースインベーダー」(’86)のようなSFホラーも好きでした。

こちらは『地球侵略のためにやってきたエイリアンが田舎町の住人を支配していく』という割と王道なストーリーなんですけども、誰が支配されているのか分からず疑心暗鬼になって追い込まれていく主人公デヴィッド少年の抱く恐怖や不安を緻密に描いており、またグロテスクながらどこかキャッチーなエイリアンのビジュアル等は目を見張るものがあります。

トビー・フーパー監督(m.crank-in.netより引用)

フーパー監督の作品全体に言えることなんですけども、とにかくBGMがべらぼうに良いんです。なもんで「スペースインベーダー」(’86)も今作も音楽がすごくかっこいいですし、何かと軍隊出動させがちで、派手な銃撃戦とか派手な爆発がお好きなのか、そういったシーンが非常に多いのでアクション映画としても楽しめると思います。

脚本には「バタリアン」(’85)でお馴染みのダン・オバノン氏と「エボリューション」(’01)でも脚本を務めたドン・ジャコビー氏が起用されております。ちなみに原作はコリン・ウィルソン氏の小説「宇宙ヴァンパイアー」ですが、大幅に改変しているそうです。

現在配信などはないようで、私は五反田のTSUTAYAを利用させていただきました。

原題は「LIFE FORCE」です。(thecinema.jpより引用)

なんといっても本作の一番の見所であるスペースバンパイアはかなり凝った設定で非常に魅力的でした。

人間の生命エネルギー(精気)を吸い取ることで生命維持が可能となる吸血鬼(作中では吸精鬼と呼ばれる)で、おそらくは宇宙人の類だと思われます。作中では人間の姿をしていますが本来はコウモリのような外見で、美しい女性のバンパイアは今作の主人公カールセンの理想を反映したものであり、もちろんそれが本当の姿ではありません。

マウストゥマウスで精気を吸い取りますが、向かい合うだけでも吸い取ることは可能のようです。その際は人間の目や口から青いプラズマのようなもの(精気)が放出されます。

美女バンパイアと主人公カールセン(m.crank-in.netより引用)

また、対象の体に乗り移ることも可能で、これにより捜査を撹乱するなど非常に知能が高いことが伺えます。彼らに精気を吸われた者もバンパイアとなり、見た目は痩せ衰えたゾンビのようになります。2時間ごとに生命エネルギーを補給しないと活動が不可能となり、最終的には干からびて粉塵を撒き散らして爆ぜます。

バンパイアたちの本当の姿(m.crank-in.netより引用)

どれだけ爆発させたいんだよとツッコみたくなるところではありますが、バンパイアになった人間のビジュアルは「バタリアン」を彷彿とさせますし、クライマックスではロンドン中がゾンビ(のようなバンパイア)で溢れかえって暴動が起こるという展開を含め、ダン・オバノン節が随所で炸裂しております。

バタリアンを思い出しますね。(m.crank-in.netより引用)

こういった設定もトンチキなストーリーもすごく面白いんですけど、なぜか内容が中々頭に入ってこず(これはその日の体調とかにもよるかもしれませんが)、いまいちハマりませんでした。

登場人物が多く、次から次へと登場する割にはあまり特徴が無いので、大変申し訳ないんですけど「この人誰だっけ?」と思うことが多々あり、個人的にはこの点で大分躓きました。そのため『今、誰が誰と何をしている』が分かりづらく、時系列も何度か前後するのがややこしくて、もしかしたらその辺りが原因で私はあまりハマらなかったのかもしれません。

干からびた警備員をしげしげと見るケイン大佐たち
(m.crank-in.netより引用)

また、スペースバンパイアの倒し方が『鉄の棒(木の杭ではなく)を心臓に突き刺す』という王道パターンなのは全然良いと思うんですけど、一番最初にこの方法でバンパイアを倒すシーンを描いていないことに衝撃を受けました。

主人公たちが大統領と話し合うためにヘリコプターで移動中に仲間から電話が掛かってきて、「一体倒したぞ!鉄の棒を心臓の5センチ下に刺せば一発よ!」みたいな事後報告だけで、主人公のカールセンもそれに対して「えっ、倒したの!?」と戸惑っていました。最終的にはカールセンもその方法で女性バンパイアを倒すのだからそれまでは見せなくてもいいだろうということなのかもしれませんが、これはかなり衝撃でした。

ケイン大佐とカールセン(m.crank-in.netより引用)

また、宇宙船内で実はカールセンは女性バンパイアと交わっており、この時に人類の知識なども知らないうちに共有されてしまったわけです。また、交わったことでカールセン自身もテレパシー能力が使えるようになり、その力を駆使して女性バンパイアを追跡するという中盤のくだりは中々に突拍子が無さすぎて、ここも理解が追いつかなかったです。

予知夢や透視能力みたいな感じなんですけど、その能力で「今、こいつの体に入ってる」とか、「もう今は入ってない」みたいなのを見抜きます。なんですけども、その捜査みたいなのがめちゃくちゃ強引かつ乱暴で、バンパイアが入ってると思われる女性の部屋に押しかけるやいなや思いっきり張り倒して、何も知らないと言うその女性に対して「この女はマゾなんだ!拷問されたがってる」等と暴言を吐きながらさらに暴力を振るい、正体を暴こうとします。

にも関わらず、この女性の中にはもうバンパイアは入っておらず、それに気づいたカールセンも「もう入ってないみたいだ」と言って、特に謝ることもなくその場を立ち去るなど、流石に主人公としてはちょっと目に余る行動が多すぎて、共感できないというのもハマらなかった要因かもしれません。

凛々しいけど何かと隠し事が多い暴力主義のカールセン
(m.crank-in.netより引用)

本当に私個人の意見ですが、もうちょっとシンプルなストーリーでも良かったような気がします。先述したスペースバンパイアの脅威や宇宙空間から人類の精気を吸い取る巨大なカサのような宇宙船などのSF要素とホラーに絞っても十分面白いような気もします。そこにカラッカラのゾンビみたいなバンパイアの大群を登場させて、しっちゃかめっちゃかにするのがこの作品の醍醐味みたいなところもあるので難しいところではありますが…

ケイン大佐はバンパイアにもカールセンにも振り回される不憫キャラでした。(m.crank-in.netより引用)

今作「スペースバンパイア」も、その翌年に公開された「スペースインベーダー」(’86)でも監督はフーパー氏、脚本はオバノン氏とジャコビー氏と、同じ組み合わせであり、もしかしたらですけど今作でSFホラーに手応えを感じた製作側が同じ組み合わせでまた作ってくれと依頼したのかもしれませんね。

冒頭の宇宙船探索シーンは相当ワクワクします。
(m.crank-in.netより引用)

余談ですが、今作が日曜洋画劇場としてテレビで放送された際、ヨドさんでお馴染みの淀川長治氏が解説そっちのけでマチルダ•メイ氏の裸についてばかり力説したそうで、「色々な意味で夜眠れなくなる作品」「テレビでこんなにオッパイの丸出しは、なんとも世の中変わりましたねぇと思いましたよ」等と語ったという有名なエピソードがありました。

ヨド様の「どの映画にも見所はある」という文言は私が映画を見る際に一番大切にしている言葉です。
(Amazon.co.jpより引用)

ちなみにアーノルド・シュワルツェネッガー氏にシュワちゃんという愛称を付けたのも淀川氏だそうです。

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もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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