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砂漠に巣食う巨大ミミズをやさぐれ便利屋コンビが迎え撃つ!王道B級モンスターパニック映画「トレマーズ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(632日目)

「トレマーズ」(1990)
ロン・アンダーウッド監督

◆あらすじ
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広大なネバダの砂漠地帯にある小さな町の周辺では、謎の地震とともに不可解な変死事件が頻発していた。それは地中深くに生息し、鋭い牙で人間を噛み砕く未知の怪物・グラボイスの仕業だった。外界から孤立した人々たちは、グラボイスと壮絶な戦いを始める。(Filmarksより引用)
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『砂漠地帯の田舎町に突如現れた地底生物“グラボイズ”。次々と人間を襲う恐ろしいこの怪物たちに便利屋を営むバルとアールが立ち向かう』というアクション要素強めのパニックスリラー映画です。

パニック映画の定番をこれでもかと押さえつつ、爽快な銃撃シーンや爆発は非常に見応えがあり、さらには見所の一つでもある巨大な地底生物“グラボイズ”のクオリティや迫力は凄まじくてとても面白かったです。

便利屋コンビのバル(左)とアール(右)
(m.crank-in.netより引用)

興行的には大ヒットとまではいかなかったようですが、マニアの方々など局所的には相当ウケたことでビデオリリースで続編が作られ、現在までに6作の続編と「トレマーズ3」(’01)の続編にあたるテレビドラマ版(2003年に放送されるもワンクールで打ち切り)が製作されています。ですが2作目以降は一作目の主人公であるケヴィン・ベーコン氏が出演していないことや、3作目以降はロン・アンダーウッド監督が携わっていないこともあり、回を重ねていくごとに知名度が低くなっている印象です。

ちなみに日本では1990年6月15日から公開され、なんと「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」と同時上映されていたそうです。

現在U-NEXTにて配信中のほか、アマゾンプライムにて9月末まで100円でレンタルが可能です。

トレマー(tremor)は微振動を意味します。(Filmarksより引用)
日本では“地殻変動の謎”というサブタイトルが付いていたそうです。(natalie.muより引用)
「ユニバーサルが想定した額の五分の一しか興行収入を得られなかった」と主演のケヴィン・ベーコンが後に証言しています。(natalie.muより引用)

◇ネバダ州の砂漠地帯に位置する人口14人の田舎町•パーフェクション。この町を拠点に便利屋稼業を営むバルとアールは隣町に移動する際に謎の巨大生物に襲われるも命からがら撃退する。地震学を専攻する大学院生のロンダと協力して町まで戻るも、そのモンスターはまだ3体もいることが発覚。さらにはこの町に狙いを定めているらしい。通信も絶たれ、逃げも隠れもできなくなった今、バルたちは町の人々と協力し、超巨大地底生物“グラボイズ”を迎え撃つ。

という内容で、アクションあり笑いありの爽快な展開の数々は非常に緩急が効いており、一切飽きることがありません。

バルとアールとロンダの3人がグラボイズから追われて岩場に立ち往生した際は、地面を踏まないように廃材の棒を利用して棒高跳びの要領でぴょんぴょんと岩場を移動していくなど緊張感の中にも滑稽さがあり、思わず笑ってしまいます。

ロンダ(右)は地震学の他に地質学や生物学にも精通しているため、知識担当としても大活躍する勇敢なヒロインです。
(映画.comより引用)

また、メインの3人だけでなく『町の人全員で強大な怪物に立ち向かう』という構図が個人的にはめちゃくちゃ良かったです。防災ガチ勢のガンマニア夫妻が地下シェルターに大量の銃火器を保管しており、地下から襲撃してきたグラボイズを二人で蜂の巣にするシーンなどもテンションが上がりますし、その後はその銃火器を全員で共有して戦うので派手な銃撃戦や爆発が多く、アクション映画として見ても相当レベルが高いと思います。

銃撃戦はやっぱりかっこいいですね。
(thecinema.jpより引用)

それと同時に爆ぜたグラボイズの肉片の生々しさや、帽子を拾い上げたら生首があったり、籠城戦を繰り広げた雑貨屋の店内で店主がグラボイズに丸呑みにされるなど

巨大モンスターによる脅威やグロ描写も出色の出来で非常に良かったです。

ガンマニア夫妻のバート(右)とヘザー(左)
ヘザーを演じたリーバ•マッキンタイア氏は本職はカントリー歌手で、今作が俳優デビュー作だそうです。
(m.crank-in.netより引用)

超巨大地底生物“グラボイズ”はCG等が一切使用されておらず、人の手による創意工夫の限りを尽くして作られたそのビジュアルや動き、地中から飛び出す迫力満点のシーンは人力だからこそ表現できるものであり、CG全盛の現代では再現は不可能でしょう。

体長は10mにも達し、デザイン的にはモンゴリアン•デス•ワーム(ゴビ砂漠周辺に生息するとされるミミズのようなフォルムの巨大UMA)に近いと思います。

モンゴリアン•デス•ワームWikipediaより引用

視覚は完全に退化しており、地中に伝わる振動で地上にいる獲物の位置を探知します。正面に位置する大きな口は四つに開き、その中にはそれ自体に口のような器官のついた3本の細長い触手のような舌があり、狙った獲物に絡みついたり、噛み付くこともできます。

本編の序盤では本体を見せず、小さい方(口の中の触手)だけを出すことであえて観客に「なんだ大した事ないな」と思わせることで油断させて、中盤に登場する本体を印象付けようとする意図があったそうです。この小さい方の触手は特殊造形のスタッフが自分の手に被せた状態で動かしているシーンもあったそうで、巨大な本体も中にスタッフが入った状態で地中から飛び出したりしていたそうです。

体表には無数に棘が生えており、その棘を利用して地中を掘り進めて移動します。その移動スピードは全速力の成人男性に余裕で追いつくほどの速さであり、獲物を捕らえるとそのまま地中に引きずり込んで丸呑みにしてしまいます。

この習性を利用して、逃走中にあえて息を殺して立ち止まってグラボイズが立ち去るのを待ったり、爆弾を積んだ囮(車)を丸呑みさせて爆破するという方法で討伐したりと人間側(主にロンダ)も知恵を働かせますが、グラボイズ側もある程度知能があるようで、同じ手は二度と食わなかったりと中々に倒すのが大変です。

グラボイズの出生については作中で説明が無く、これに関してアンダーウッド監督は「ありきたりの出生を説明するくらいならいっそ黙ってた方がいい。短時間でわかるのは逆に不自然だ」と証言しておりますが、脚本を担当したS•S•ウィルソン氏とブレンド•マドック氏は突然変異説や地球外生命体説、放射能の影響説等が考えられるのではと語っています。

畑に埋まってる生首を発見するバルとアール
(m.crank-in.netより引用)

映画評論家のジーン・シスケルは自身の著書にて

「良いB級映画を観たいなら『トレマーズ』を観なさい。モンスター映画の中で、方式を理解していた数少ない映画の一つです」

(トレマーズWikipediaより抜粋)

と評価するほど、今作はモンスターパニック映画の方式や定番をこれでもかと押さえています。

グラボイズの襲撃に皆が備えている中、「襲われた!助けて!」等と騒いで皆を驚かせていたオオカミ少年のメルビンが実際に襲われかけて助けを求めた時に誰も信じなかったり、騒動に気づかず表で遊んでいる女の子が狙われたり、仲間割れが起きたり、主人公とヒロインが騒動を経て惹かれ合ったりと

『これぞB級モンスターパニック映画!』と言いたくなる展開がとても多く、これが作品の世界観に非常にマッチしています。

少女を救うバルとロンダ(m.crank-in.netより引用)

当初、主人公のバルとヒロインのロンダをくっつける予定は無かったそうで、ラストのキスシーンはありませんでした。ですが試写会での上映中に観客からの「キスしろ!」コールがあまりにも多かったため、急遽追加したそうです。

これに関してアンダーウッド監督は「観客が喜ぶなら、自分の意に介さなくても良いよ」と発言しており、また撮影中にロンダ役のスタントが大遅刻した際は監督自身がロンダの格好をしてスタントを務めた等、良い人エピソードが多いです。しかもそのスタントを務めたシーンは結局カットになったそうですが本人はそれを笑い話として語っています。

個人的にはこの一作目が相当面白かったので最新作までなんとか追いかけていきたいなと思っております。

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