記憶の奥底にあるトラウマを掘り返す大切な“おともだち” 一生親友のイマジナリーフレンドはあなたが大人になっても現れる…「イマジナリー」現在上映中【ホラー映画を毎日観るナレーター】(711日目)
「イマジナリー」(2024)
ジェフ・ワドロウ監督
◆あらすじ
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夫と継娘2人と共に暮らしながら、毎晩見る悪夢に苦しんでいた絵本作家のジェシカは、環境を変えるため幼い頃に暮らしたかつての家へと引っ越す事を決める。懐かしさの残る家の地下室で、末の継娘アリスが見つけたのは、古びたテディベアだった。新しい友達“チョンシー”に異常な愛情を抱くようになるアリス。最初はただの遊びだと思っていた〈宝探しゲーム〉も次第にエスカレートし、邪悪さを増していく。このテディベアは普通じゃない―そう気づいたとき、衝撃の真実と恐怖が家族に襲いかかる。(imaginary-movie.jpより引用)
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公式サイト↓
『引っ越し先で末娘が見つけたクマのぬいぐるみ。それは主人公の眠っていたトラウマをも蘇らせる存在だった。日に日に様子がおかしくなっていく末娘とそのクマの因果関係に気づいた時、想像を絶する恐怖が家族を襲う』
という、“イマジナリーフレンド”を題材とした王道ホラーであるとともに親としての主人公の成長や覚悟をしっかりと描いており、最後の最後まで非常に見応えがありました。
※イマジナリーフレンドとは
主に通常児童期(5〜6歳、または10歳くらい)にみられる空想上の友人のことで、実際にそこにいるかのような実在感をもって一緒に遊んだり会話をして、子供の心を支える存在として機能します。子供の発達過程における正常な現象であり、児童期の間に自然と消失します。
とのことで、私自身にはおそらくイマジナリーフレンドがいたという記憶は無いんですけども、皆様方の中にはもしかしたら幼少期にイマジナリーフレンドがいたという方やお子様にそれらしき様子が見られた等などご経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
仮に経験があったとしても多くの場合が自然と消失するとともにその存在を忘れてしまうため、もしかすると記憶の奥底に眠っているだけなのかもしれません。
今作ではシンプルにイマジナリーフレンドがめちゃくちゃヤバくて怖い!というのもそうなんですが、この“眠っていた記憶”や“無意識に蓋をしていたトラウマ”というのが非常に重要になってきます。末娘アリスとイマジナリーフレンドのチョンシーだけの話かと思いきや、主人公であるジェシカにも大きく関係しており、アリスがチョンシーを発見したのも、日に日に様子がおかしくなっていくのも全ては偶然ではなく必然だった、というのが明らかになっていく後半からの盛り上がりは相当良かったです。
今作を手掛けたジェフ・ワドロウ氏はホラーからアクション、コメディまでなんでもござれのヒットメーカーで、代表作としては大人気アクションコメディ映画「キック・アス」(’10)の続編にあたる「キック・アス ジャスティス・フォーエバー」(’13)等が挙げられます。
そして制作を請け負ったのは安心•安定•低予算でお馴染みのブラムハウス・プロダクションズです。最近では「M3GAN ミーガン」(’23)や「ファイブ•ナイツ•アット•フレディーズ」(’24)など人形系のホラーにも定評がありますが、AI人形や着ぐるみロボットなど色々とやった後にシンプルなクマのぬいぐるみはどう考えてもスケールダウンなのでは?と思ってしまうところですが、それをまた上手いこと逆手にとっており、ぬいぐるみの正体を知った時には正直「やられた!」となると思います。その線は予想してなかったです。
◇絵本作家のジェシカは2人の娘を持つミュージシャンのマックスと結婚し、新たな生活を送っていた。しかし、ジェシカは毎晩のように悪夢にうなされており、マックスはそんなジェシカの気持ちを慮り、彼女が幼少期を過ごした家に移り住むことを決める。引っ越しで気分も晴れるかと思ったが、連れ子のテイラーは思春期ということもあり、中々心を開いてくれず、ジェシカは自分が母親として早く認められたいという焦りから気を揉むこともしばしば。そんな折、末娘のアリスは地下室で古びたクマのぬいぐるみを見つけ、チョンシーと名付けて可愛がっていた。最初はイマジナリーフレンドとのおままごとや宝探しを微笑ましく思っていたジェシカだったが、日に日に様子がおかしくなっていくアリスとイマジナリーフレンドの因果関係に気づいた時、彼女は自身の奥底に眠っていた記憶を掘り起こすことになる…
というのが細かいあらすじです。
※公開されて間もない作品なので今回もネタバレは極力避けて書いていきたいと思います。
序盤から静かに話が進む中でいきなりジャンプスケアで驚かせてくるため、「来るぞ来るぞ!」と常に緊張感を持って見ることが出来る構成は素晴らしかったです。そして、イマジナリーフレンドがアリスだけではなく、実はジェシカにも深く大きく関係しており、真の狙いはジェシカだったということが分かる後半の盛り上がりは実に見事でした。
想像の世界へと連れて行かれたアリスを取り戻すべく、ジェシカとテイラーがその世界へと足を踏み入れるクライマックスはその非現実的な空間が夢のようでも妄想のようでもあり非常に気味が悪いと共に、映像のクオリティの高さに驚かされます。
十分に楽しめる今作なんですけども、正直なところ色々と気になる部分や「それってどうなの?」と思うことも多々ありました。
まず、ジェシカが何かしらのトラウマ(この時点では思い出せない)から悪夢を見るようになり、「じゃあ気分を変えよう」と幼少期を過ごしていた家に引っ越すという冒頭の流れが少々雑に感じました。シンプルに「なんでそうなるの?」と思ってしまいますし、開始早々この導入なので、この時点でもうすでに「この作品大丈夫かな?」と集中力が切れてしまう方もいるかもしれません。
そして個人的にちょっと雑だなと思ってしまったのが、マックスの前妻、つまりテイラーとアリスの前の母親の存在です。作中でもほとんど説明が無いんですけども、おそらくは精神疾患から娘たちに怪我を負わせて強制入院&離婚となったんだと思われます。しかし、ジェシカの存在を快く思っていないテイラーはこっそりとその母親と連絡を取っており、ジェシカには何も言わずに自宅に招き入れてしまったことでトラブルを起こして警察沙汰へとなってしまいました。
この母親について何も説明が無い状態でいきなり登場してジェシカに襲い掛かり、わけの分からないことを喚き散らすというのがあまりにも唐突過ぎて、浮いた存在に感じられました。それまでにもしかしたら母親が登場するのかもと思わせる描写が1ミリもないので中々飲み込み辛かったです。クライマックスのアリスの空想の世界にこの母親が登場するんですけども、ここでいきなり登場させると誰?となってしまうから、どうにかして前半の方に一回出しておこうみたいな意図があったのではないでしょうか。だとしても流石にあんなやっつけみたいな感じで登場させてもあまりに効果はないんじゃないでしょうか。
全体的になんですけど視聴者の想像に委ねすぎというか、引っ越した理由、アリスの火傷の跡、隣の老婦人•グロリアの行動理由、儀式に捧げる痛い物の定義、ジェシカの父親の存在等など、そのどれもがたぶんこういうことなんだろうなとある程度の補填は出来るんですけども、流石に見ている側に任せすぎだと思います。そこまで熱心に見てくれる人ばかりじゃないですし、流し見だったら確実に「あれってどういうこと?」となる部分が結構あると思います。特にダグラスに関してはもっと丁寧に描いて欲しかったです。
あとこれは個人的な好みの問題なんですが、ラストの展開が少々粘り過ぎというか、ちょっと長いなと感じてしまいました。
『しっかりと盛り上がりを見せてからの空想世界からなんとか脱出』、そして『平和が訪れ、皆でジェシカの父親のお見舞いにいくハッピーエンド』で終わりで良いと思うんですけど、そこからさらに『実はまだジェシカは空想の世界に取り残されており、全ては幻だった』からの『一度現実世界に脱出したはずのテイラーが助けに来てくれて今度こそちゃんと一緒に脱出』そして真のクライマックスへ…
というのが“クドい”とまではいかないんですけども、あの終わり方に着地するのであればその間の「ハッピーエンドかと思いきや…」みたいな部分は少々蛇足のように感じました。
怖いシーンがそこまで多くない割には一つ一つのシーンに時間をかけ過ぎており、こんな勿体ないぶるんだからさぞかし怖いんだろうなと思ったらそうでもないみたいなことが多々あり、怖さを求めて見る作品というよりかはトラウマを乗り越えた女性の母親としての成長物語みたいなスタンスで見るのが良いのかもしれません。
色々やろうとし過ぎた結果、ところどころ中途半端になってしまった印象です。脚本家がワドロウ氏含め三人おり、どれくらいの分量、比率なのかは分かりませんがあまり連携が取れているようには感じませんでした。なんですけども映画としてはもちろんしっかり楽しめますし、映像表現には目を見張るものがありますのでどうかご安心くださいませ!
☆この度ホームページを開設しました!
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渋谷裕輝 公式HP↓