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その後味の悪さが気持ち良し!秀逸なオチが堪らないサスペンスホラー「ミラーズ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(633日目)

「ミラーズ」(2008)
アレクサンドル・アジャ監督

◆あらすじ
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ニューヨーク6番街にある大火災で廃屋と化したデパートの夜警を依頼された元刑事のベンは、警備中にその建物の中にある不気味な鏡に触れてしまう。それをきっかけに原因不明な死亡事件が続発し、最愛の家族まで危険にさらしてしまうベンは、鏡をめぐる忌まわしい秘密を解き明かさねばならなくなる。(映画.comより引用)
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『廃ビルのとある鏡に触れてしまったことで次々と怪異に見舞われるようになった元刑事が家族を守るため、その鏡の謎を解き明かそうと奮闘する』

という内容で、ミステリーやサスペンスの要素が強めで非常に見応えがあり、ラストの如何にもという感じの希望がなく後味の悪いオチがとても秀逸で最後まで目が離せませんでした。

主人公•ベンを演じたキーファー・サザーランド氏がとても渋くてかっこよかったです。(md-news.pia.jpより引用)

監督を務めたアレクサンドル・アジャ氏はパニック映画やサスペンス、ホラーのジャンルを得意としており、一躍その名を世に知らしめた鬱々パニック映画「ハイテンション」(’03)や異色のダークファンタジー「ホーンズ 容疑者と告白の角」(’13)等でもお馴染みです。

2003年に公開された「Mirror 鏡の中」(英題は「Into the Mirror」)という韓国発のホラー映画といくつか類似点があるようで、本編の最後にも『「Into the Mirror」を基にしている』とあります。しかしアジャ監督はこれを否定しているそうで、真相は不明のままです。

ちなみに主演のキーファー・サザーランド氏は日本でも爆発的に流行った連続ドラマシリーズ「24 -TWENTY FOUR-」のジャック・バウアー捜査官としての印象が強いですが、実は20歳の時にあの不朽の名作「スタンド・バイ・ミー」(’86)で、不良グループのリーダー•エースを演じていたことはあまり知られていません。

「スタンド・バイ・ミー」出演時の若かりしキーファー・サザーランド氏(m.crank-in.netより引用)

現在U-NEXT、Disney+で配信中のほか、DMMTVでは330円にてレンタルが可能です。

主人公•ベンの吹き替えはもちろん小山力也さんで、その他にも私の大好きな青野武さんもご出演されていたので今回は吹き替え版で見させてもらいました。(Filmarksより引用)

◇誤射によって人の命を奪ったことがトラウマとなり刑事を辞職したベンは今では妻や子供たちとは別居中で、アルコール依存を薬で抑えながら社会復帰を目指していた。ようやく警備員の夜勤の仕事についたベンだったが、勤め先は大火災によって大勢の死者を出してから5年以上放置され廃墟状態のショッピングセンター。初勤務の夜、大きな鏡に手形が付いていることに気付き、その鏡に触れてしまったことでベンやその周囲の人々に次から次へと不可解な現象が起こり始める。

という、丁寧かつフリの効いた導入から引き込まれました。若干スローテンポではあるんですけども、ベンが鏡に触れて以降は緩急があって、ゆっくり見せて欲しいところはゆっくりで、「ここはスピーディーにわーっとやって欲しい!」と思うところはテンポよく展開してくれるため、アジャ監督の構成の妙をこれでもかと味わえます。

鏡に触れたことで大火災の幻覚を見たり、自殺した前任の警備員の財布の中から“エシカー”と書かれたメモを見つけたり、後日その死んだはずの前任者から小包が届いたりと

『何か手がかりを見つけたら次の展開へ』

という感じで、なんだか推理系のゲームをやっているような感覚になります。個人的にはこの流れが非常に心地良かったです。

前任の警備員•ゲイリー(md-news.pia.jpより引用)

そしてその前任者ゲイリーからの小包の中身はベンが現在勤務している廃ショッピングセンター•メイフラワービルの火災に関する新聞記事の切り抜きでした。鏡の一件もあったことからベンはこの火災事故の犯人やゲイリーの死について調査をしていき、その結果、“メイフラワービルの地下に隠された謎”、そして“エシカーとは何なのか”などが終盤に一気に明らかになります。

この手形を見つけてしまったばっかりに…
(映画.comより引用)

この作品において“鏡”というものが非常に重要になってきます。

『鏡に映る自分(悪霊)の行動が現実のものとなる』というのが今作における大きな恐怖ポイントで、冒頭で鏡に映る前任の警備員ゲイリーが鏡の破片で首を掻っ切るとそれが本物のゲイリーの身に起きたりします。しかも一度その鏡に触れてしまうと自宅など別の場所にある鏡や姿が映るもの(水溜り等)でも同じような現象が自分だけでなく近親者にも襲ってきます。

この事象にいち早く気づいたベンはなんとか自分の周りの人だけでも守ろうと、別居中の妻と子供が暮らす家に乗り込んで鏡を全て撤収したり、外せない鏡はペンキで塗りつぶしたりと傍から見ると完全に常軌を逸しているような行動を取ります。

しかもベンは過去のトラウマからアルコール依存に陥り、現在は投薬治療を受けているため、そのベンの必至の行動の数々は妻のエイミーからしたら“夫の気が触れてしまった”としか思えず、当然ベンの言うことも信じません。

余談ですが、キーファー・サザーランド氏は私生活がかなり破天荒でこれまでに4回ほど逮捕されているらしく、その度週刊誌に「ジャック・バウアー捜査官また逮捕」等と書かれてしまうそうです。(Amazon.co.jpより引用)

あの廃ビルの鏡は銃で撃っても傷一つ付かなかったため、なんとかエイミーに信じてもらおうと家の鏡に向かって発砲するベンでしたが、他の鏡はただの鏡なので当然粉々に割れます。身内がいきなり鏡に向かって発砲したら「あっ、この人完全にイカれちゃった」となるでしょう。

このあたりの登場人物の関係性やバックボーン、それに伴う絶妙なジレンマが非常にもどかしくて「つくづく良い脚本だなぁ」と思いました。

妻であるエイミーが解剖医なので、ベンはこっそりとゲイリーの遺体を調べたりも出来ます。(映画.comより引用)

物語の後半からはエイミーや子供たちにも被害が及び始めたことでようやくベン以外も事態を把握し、夫婦で協力してこの窮地を乗り越えようとする展開にも胸が熱くなります。

グロ描写に関しても当然の如く出色の出来で、やはり「ハイテンション」であれだけのえげつないシーンを生み出してきたアジャ監督ですから、今作においてもシーン自体は少なめですが、まぁエグいですし、血も涙もないです。

特に入浴中のベンの妹•アンジェラの口がバカっと引き裂かれるシーンはグロゴア好きなら必見のシーンだと思います。

鏡だけでなく、水溜りやワックスの利いたフローリング等からでも狙われてしまいます。(映画.comより引用)

ラストの秀逸なオチに関してはある程度予想できるとは思うんですけど、クライマックスまでがしっかり盛り上がった上でのどんでん返しなオチなので、キレイにビタっとハマっていますし、良い終わり方だなと思いました。なんとなく2000年代前半の映画っぽいなぁと懐かしい気持ちにもなります。

劇場公開はされていないようですが、本作の正式な続編にあたる「ミラーズ2」(’10)という作品も存在するようなので、見つけ次第そちらも鑑賞したいと思います。

ちなみに今回私はいつもお世話になっている浜田山のTSUTAYAにて

という手書きの宣伝に惹かれて今作をレンタルさせていただきました。こういうお店オリジナルの手書きの紹介文みたいなのすごく良いですよね!

いわゆるレンタルビデオ業界も昨今のサブスク全盛の煽りを受けて次々と店舗が潰れたり、規模が縮小したりと中々に厳しい状況が続いています。

古臭い考えかもですが、お店まで赴いて自分で気になる作品を手にとり、裏面のあらすじなどを見て借りるかどうか逡巡したり、大して熟考せずにタイトルが面白いからと勢いで借りたりするのも中々に楽しいので、もし近所にまだレンタルビデオ屋さんがある方は一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
 
あと、ここからは余談になるんですけども

浜田山のTSUTAYAにて何回か遭遇している不思議な人のお話です。

その方は細身の男性でいつも薄いオレンジ色っぽいエプロン姿に箒とちりとりを持って、DVDが陳列されている棚をただただぼーっと眺めています。

TSUTAYAの店員さんの制服でもないですし、店内を掃除するわけでもなく、ただただそこに佇んでいるんです。

私が先日訪れた時はちょうどこの方がホラー映画のコーナーにいたため、私はDVDを物色することができず、違う棚を見たりして時間を潰して数分経過してからもう一度ホラー映画コーナーに行ってみてもその方はずっとそこに立っており、一向に移動する気配がありません。

仕方なく近づいていきどいてもらおうとすると、その方は私の意図を察してくれたのか、一瞥して近くに移動してまたぼーっと棚を眺め始めました。

そして私がめぼしいホラー映画のDVDを数本手に取り、会計を終えて帰る時もその方はずっとその棚の前にいました。

不思議な人でした。

おそらくはただ暇を持て余している近所のおじさん説が濃厚ですが、また今度見かけたら店員さんにあのおじさんのことを聞いてみようと思っています。

「ちょっと分からないです」

と素っ気なく返されるのが関の山でしょう。

☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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