シャマラン監督の最新作!シリアルキラー決死の逃走劇に唖然!呆然!鳥肌が止まらない!「トラップ」現在上映中【ホラー映画を毎日観るナレーター】(690日目)
「トラップ」(2024)
M•ナイト•シャマラン監督
◆あらすじ
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クーパーは溺愛する娘ライリーのため、彼女が夢中になっている世界的歌手レディ・レイブンが出演するアリーナライブのプラチナチケットを手に入れる。クーパーとともに会場に到着したライリーは最高の席に大感激の様子だったが、クーパーはある異変に気づく。会場には異常な数の監視カメラが設置され、警察官たちが会場内外に続々と集まっているのだ。クーパーは口の軽いスタッフから、指名手配中の切り裂き魔についてのタレコミがあり、警察がライブというトラップを仕組んだという情報を聞き出す。(映画.comより抜粋)
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マスター•オブ•サプライズことM•ナイト•シャマラン氏の最新作です。
私は映画館でホラー映画を見る際はあえて何の前情報も入れず、あらすじすらも読まずに見に行くことが多いです。タイトルやたまたま目にした予告動画だけでストーリーをあれこれと予想するのも楽しいですし、だいたいは実際の内容とまったく異なるなんですけどもそれがまた面白かったりもします。
なもんで今回もその例にならって情報を入れず、以前映画館で見た本作の予告を見た限りでは『人気シンガーのライブを見に来た主人公と娘。しかしその会場には指名手配中のシリアルキラーが潜んでいた。物々しい雰囲気や警備の様子から犯人がいることを悟った主人公は娘と会場からの脱出を図る』みたいな感じなのかなと思っておりました。
“クライマックスでは犯人が起爆装置を作動させてライブ会場が大爆発”みたいな展開だったらなんか初期の名探偵コナンの映画みたいだなと思い、これをシャマラン監督はどう料理するんだろう?みたいなスタンスで心を躍らせながら朝イチの回を見に行きました。
結果的に私はべらぼうに見当違いの予想をしていたんですけども、そんな私のような人は今作を一番楽しめるかもしれません。
というのも今作はもう公式のあらすじなどでもネタバレというか犯人についてはっきりと言及しており、この作品の犯人は主人公です。
『シリアルキラーである主人公•クーパーがライブ会場に来ることを知った警察やFBIが会場の中も外も完全に包囲。それを知ったクーパーは娘に悟られることなく、警察の目を掻い潜って会場からの逃走を図る』というのが実際の内容です。
私はこれを知らなかったものですから、開始十数分でクーパーの明らかに怪しい言動の数々や監禁している青年(スペンサー)の様子をスマホでこっそり確認するなど「どう考えてもこいつが犯人じゃん!」という展開が続くため、これは“クーパーが犯人”というミスリードだ!と思いながら見ていました。
なもんで、見ている最中も『実はクーパーは元警察とかで、脱出経路を確認しながらも犯人を捕まえるんじゃないか?』とずっと無駄に思考を巡らせていました。そしてその状態からの「やっぱりクーパーが犯人だったんかい!」からの「逃げ果せるんかい!」からの「そこからまだまだ続くんかい!」とまぁ目まぐるしく展開していきます。
シャマラン監督の掌の上で転がされ続けた100分間でした。製作陣の思う壺みたいになってしまいましたが、非常に面白かったです。全てを知った上でもう一度見に行きたいです。
ということで今作で監督•脚本を務めたM•ナイト•シャマラン氏についてはご存知かもしれませんが「シックス・センス」(’99)や「ヴィジット」(’15)など数々な名作を生み出した稀代のヒットメーカーです。いわゆる暗黒期と呼ばれる不遇の時代を乗り越え、今でも第一線で活躍し続けております。最近では娘のイシャナ氏も映画監督デビューを果たしており、今後も親子共々ホラー映画界を牽引してくださることを願っております。
シャマラン監督暗黒期の作品はこちらから↓
イシャナ監督のデビュー作はこちら↓
そして!
なんと今作では世界的に有名な歌姫で物語の重要なキーパーソンとなるレディ•レイブン役としてシャマラン監督の娘であるサレカ•ナイト•シャマラン氏が出演されています。
“サレカ”の名で知られるシンガーソングライターとしてアメリカで活躍する彼女ですが、俳優としての出演は今作が初めてです。しかしデビュー作とはとても思えない堂々とした演技に圧倒的な歌唱力で物語を頼もしく引っ張っていきます。さらには作中に登場する楽曲の作曲やプロデュースも務め、演じたレディ・レイブン名義でサウンドトラックもリリースされました。
ここまで凄いと「父親の映画だから出られたんだろう」とかそういった邪推みたいなものは一切なく、シンプルにこの役は彼女じゃなきゃ駄目だなと思います。私はファンになりました。
余談ですが、シャマラン監督は自身の手がける作品には必ず俳優としても出演することでお馴染みですが、今作では会場のスタッフを務めるレディ・レイブンの叔父役でしっかり出演しております。
ということで、今作の前半部では
『ブッチャーと呼ばれる殺人鬼のクーパーが厳重な警備の目を掻い潜ってライブ会場から逃走出来るのかどうか』という、言うなれば“犯罪者の視点”で物語が進んでいきます。これがまた非常に面白くて、犯罪者って自分が助かるためならばどんな手段でも使うんだというのをこれでもかと生々しく描いております。
クーパーは会場に入るやいなや、明らかに多すぎる警備員や防犯カメラの様子から何かを察したのか、仲良くなったグッズ売り場のお喋りな店員から何があったのかを聞き出し、ブッチャー(つまり自分)が来ているという情報をなぜか警察がキャッチしていることを知ります。
そして彼のポケットからこっそり従業員入口のパスを入手したり、警察のレシーバーを手に入れ捜査状況を逐一確認したり、会場の飲食店に忍び込んでボヤ騒ぎを起こした隙に従業員になりすましたりとあの手この手で脱出経路を探します。
ライブの途中で選ばれた観客の一人(子供)がステージに上がってレディ•レイブンとパフォーマンスを行うことを聞いた際には、近くにいたスタッフ(シャマラン監督)がレイブンの近親者であると知るやいなや「娘は実は白血病で、最近ようやく完治したんだ」等と同情を引くことで自分の娘をステージに上げてもらい、付き添いで自分もステージ裏へ行き、その後は関係者用の裏口から逃げようと考えるなど常に思考を巡らせています。
クーパーの何が怖いかって“善人に見える”というところなんです。
店員やスタッフともすぐに打ち解け、さりげなく情報を聞き出したり、関係者しか入れない場所に入っていったりと「良い人だし、まぁ大丈夫かな」と他者に思わせる天才です。また自分たちが有利になるような嘘を付くのも病的に上手く、『殺人を犯す、捕まらないようにする』という間違ったベクトルに向かっての行動力や集中力が凄まじく、これがシリアルキラーの取る行動なのかと思うと本当にゾッとします。
そして後半では『クーパーが犯人であることを知ったレディ•レイブンが一人の犠牲者も出さないように慎重に、時には大胆に行動してクーパーを追い詰めていく』という風に、ものすごく自然にレディ•レイブン視点で展開していきます。
上手いことバックステージに忍び込んだクーパーは全出口で警察が男性客一人一人を入念にチェックすることを知り、レイブンに「私の娘の病気のことなんだけど…ちょっといいかな?」と一対一の状況を作り出し、自身がブッチャーであることを告げ、自分と娘を警察のチェック無しに外に出さないと現在監禁している男性(スペンサー)を殺すと脅しをかけます。
レイブンのリムジンに乗り込み、見事逃走に成功したクーパー。そして傍らには何も知らずにはしゃぐ娘のライリーと、この状況をどうにかせねばと思案するレイブン。そしてここからレイブン大活躍パートへと突入していきます。
まずレイブンはライリーに対して「友達になったあなたのお家に遊びに行きたい」と言い、大喜びする娘の手前クーパーが断ることができない状況を作り、彼の家へと向かいます。さらにはクーパーの妻や息子とも仲良くなり、ピアノや歌唱で時間を稼いで隙を突いてクーパーのスマホを奪取。(この辺りは流石に強引すぎたのか映画館でも少し笑いが起こっていました)
トイレに閉じこもり、どこかで監禁されているスペンサーと通話。彼から「連れて来られた時に欠けたライオンの像があった」、「扉は青かった」など居場所の特定に繋がる情報を聞き出すと、直ぐ様インスタライブを開始。先ほどの情報などを視聴者に訴えかけて見事居場所を特定。さらには警察も呼び、クーパーの家族にも彼がブッチャーであることを告げる。
というのをわずか2〜3分でやってのけます。判断力がエグすぎます。これで『スペンサーは救出され、クーパーは逮捕』となれば良いんですけども、そこは我らがシャマラン監督!そんな生ぬるい終わり方はしません。
ここからしぶといにも程があるクーパーによる決死の逃走劇が繰り広げられます。
個人的にはこのあたりが少々長いかなとも思ったんですけど、不要と思えるシーンもないし、クーパーがまぁタフでべらぼうに強いのがめちゃくちゃ面白いです。この終盤でようやっと“クーパーが消防士”という設定が活きてきます。強靭な肉体過ぎるだろとツッコみたくなるところではありますが、テーザー銃に耐えまくるシーンは個人的にはめちゃくちゃハマりました。
最後にクーパーの人間性というか、なぜこうなってしまったのかというところなんですけども、割と序盤の方から見知らぬ老婆がクーパーの目の前に現れるというシーンが数回あります。最初はクーパーに殺された人の亡霊かなとも思ったんですけど、作風的にあまりにも浮いてしまうし、もしそうならば別の人の霊は出ないのかなどと色々と考えていました。
結果的にこの老婆はクーパーの母親で、彼は幼少の頃から母親に虐待を受けていたということが明らかになります。彼の内に秘めた異常性が生まれつきのものなのか、それとも母親の虐待によって芽生えてしまったものなのかは定かではありません。しかし彼の強迫観念や完璧主義は全て『母親に許されたい、認められたい』というところから来るものだったことが伺えます。
最愛の妻や子供たちの悲しむ姿を見ても彼の心の中にあるどす黒いものが消えることは無く、拘束されて護送車に押し込まれてからも反省や後悔の念は皆無で、自分がこの状況を脱することだけを考えていることが分かるラストは何とも後味が悪く、非常に印象的でした。
ストーリーは少々一本筋というか、都合が良過ぎるようにも思えますが個人的には相当面白かったです。オススメです!
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