最近の記事

「授業が全然わからない時はどうしたらいいか?」

あるフィードバック看護学校で解剖・生理学の非常勤講師をしています。あるとき学生に授業のフィードバックを書いてもらったところ、こんなレスポンスが来ました。特に左下の赤枠に注目してください: これを見た自分は、凍りつきました。 ・これは自分(私)に向けられたものなのだろうか? ・それともこの人が、さまざまな科目で感じていることなのだろうか? 匿名投稿だから、そのどちらだかわからないことに少しホッとする小心者の私がいました。 しかし、そう問われたからには、自分なりの何らかの返事

    • 本愛で不思議につながった二つのもの

      先日とある読書会で知った本がある。「本は読めないものだから心配するな」菅啓次郎著 速読・超読系の本でよくある読み方リコメンド「本は作者の意図や内容に関わらず好きなところだけ好きに解釈して何かを得ればいいんだ」という話とは全然違う。 その本は読めても読めなくてもいいが、ひたすら読んでいるうちに自分の血肉になる、と、たくさんの本を引用しながら語りかける本。(超読と同じじゃ?ーいや全然違う。読めばわかる。真性に楽しいのはこちら) 詩人でもある作者の語り口と、多様でしかも興味深い本

      • 敬愛するオリパラ選手たちへ:「あなた方の運動会のせいで人が死んだ」という問いにどう答えるつもりなのか? 無観客を望んで欲しい。

        (注)実は、無観客試合が決まらなかった場合、オリパラ選手候補の全てのツイッターアカウントに、このnoteへのリンクを送る準備をしていた。しかし5県ほどでの一部の競技を除き、無観客試合が決まったようだ。そこで上記のアクションは行わないことにした。が、ここに書いてあることは、おそらく違わないのではないか、と思っている。 表題の問いはフェアではない。しかし必ず起きる。あなた方はこの問いからは逃れられない。 社会にいきる大人であるあなたが、いまだけ無邪気な子供でいようとしてはいけ

        • ジョー・コッカー「スティングレイ」のスティーブ・ガッド

          前のエントリーで、あまりに救いのないことを書いてしまったので、何の脈絡もないのだが、これについて紹介しておく。すごいよ。 スティーブ・ガッドというドラマーがいる。ドラムを叩いている人なら知らない人はいないのではないかというくらいの、簡単に言うとレジェンドだ。彼についてのドキュメンタリー映画「About Time」というのが作られていて、そのトレイラーがYouTubeにあるので紹介する。ドラマーなら、最初のブラシワークだけで萌えてしまうだろう。そして一番最後のライブバッキング

        • 「授業が全然わからない時はどうしたらいいか?」

        • 本愛で不思議につながった二つのもの

        • 敬愛するオリパラ選手たちへ:「あなた方の運動会のせいで人が死んだ」という問いにどう答えるつもりなのか? 無観客を望んで欲しい。

        • ジョー・コッカー「スティングレイ」のスティーブ・ガッド

          言い訳にも言い逃れにもなっていない橋本聖子の会見:本人もそれをわかっていないのか?

          まず先に申し上げておく。夏と冬の両方のオリンピックでの偉業の達成者として、私は橋本聖子氏を最近に至るまでずっと尊敬してきた。しかしそれはオリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長としての彼女の振る舞いで、全く反故にされてしまった。今、彼女の発言は一言たりとも信頼に値しない。 フェアな精神と、それに連なる一抹の正義がスポーツマンシップだとすれば、以前はその体現者だと思えたこの女性は、政治にまみれてここまで変わってしまったのか、としか思えない。 話は以下の会見のことだ:

          言い訳にも言い逃れにもなっていない橋本聖子の会見:本人もそれをわかっていないのか?

          AURORA:朝から晩まで毎日ヘビロテ

          一人のミュージシャンにこれくらいハマったのは、ポール・サイモン、スティング、以来かもしれない。朝から晩まで、毎日、途切れることなくヘビロテしている。 きっかけはNHKの「BS世界のドキュメンタリー」で放送された「オーロラ 私の歌を探して」だ。ノルウェイの自然豊な森の町に暮らすAurora Aksnesの歌を友だちがネットに流し、流行に火がつき、彼女は15歳で突如として寵児になった。アルバムをリリースし、ノーベル平和賞のステージで歌い、ワールドツアーをこなし、その中で極度のス

          AURORA:朝から晩まで毎日ヘビロテ

          1+1=100:「彼方のアストラ」+「わたしを離さないで」

          SFアニメ「彼方のアストラ」と、カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」が自分の頭の中で相互に結合して、大変なことになっています。 片や漫画・テレビアニメ、片やノーベル賞作家のブッカー賞候補作。なんでそんな二つが、と思うかも知れませんが、両方知っている人にはわかりますよね。裏技・反則級の合わせ技で、この感動、というか、やられた感というか、一気に深みが増す感というか。この二つは絶対に両方観なくてはいけません。1+1=100です。 これらを二つとも詳しく解説してしまっては、これか

          1+1=100:「彼方のアストラ」+「わたしを離さないで」

          「コロナは全員PCRしろ」という人は「ベイズ推定」と検査の実効を理解する必要がある

          「コロナは全員検査しろ」という人は、これを読んでいただきたい。そしてご自身の「勘違い」に向き合っていただきたい。「勘違い」を自分で修正することは、いつでもできますし、それができる人は賞賛されます。 ベイズ推定をおおまかに理解し、想像する 「ベイズ推定」(≒「ベイズ統計」「ベイズの定理」)は、今話題になっているコロナ感染症でPCRをやるかやらないか、という議論の背景を理解するために欠かせない考え方です。ベイズ推定を、数式でなく直感的にでも理解していないと「誰でも全員PCRしろ

          「コロナは全員PCRしろ」という人は「ベイズ推定」と検査の実効を理解する必要がある

          映画「リスボンに誘われて」

          「えっ? あの時代にこんなことがあったの?!」とびっくりしてしまう映画を観たのでご紹介します: スイスのベルンで働く地味な高校教師のライムント(ジェレミー・アイアンズ)は川に飛び込もうとした女性を助ける。女はすぐに姿を消し、持っていた本だけが残された。本は無名の作者の美しく力強い文学的な詩で、それに惹かれたライムントは、本に挟まっていた列車のチケットを頼りにポルトガルのリスボンへ向かった。 その先は女性探しのシンプルなラブストーリーなのだろうと思っていたのだが、実際は、な

          映画「リスボンに誘われて」

          「です・ます」と「だ・である」

          テキストの語尾を「です・ます」か「だ・である」のどちらかにまとめるのが文章表現の基本だ。これらの混在は概ねしないものとされている。 「です・ます」は、表現として穏やかでフレンドリーな感じがします。 会話的または「やりとり」的ですし、説明的というか、こちらから説明をしてあげる的というか、そういうていねいさ、相手への優しさ・配慮を含んでいるのではないかと思います。説明的なので、文章の量が増えます。まだるっこしく間延びしやすくなる、というネガティブな側面もあります。 ていねいで相

          「です・ます」と「だ・である」

          COVID-19その後。なぜ、どうやって岩田先生・高山先生の記事を書いたのか

          コロナウィルス感染症は、クルーズ船・ダイヤモンドプリンセス号からの下船が国別・グループ別などで徐々に進行している。一方、日本国的には不顕性に感染していた旅行者などを起点とする国内各地での感染がどこまで広がっていくか、それは押さえこめるのか、というフェーズに至っている。 私の先の記事「COVID-19、岩田先生、高山先生」はFBとツイッターから拡散し、3日間で11万PVほどになったようだ。私自身は拡散という現象の規模感について詳しく知らないし、これはたいした量ではないのだろう

          COVID-19その後。なぜ、どうやって岩田先生・高山先生の記事を書いたのか

          COVID-19、岩田先生、高山先生

          COVID-19、いわゆる「コロナウィルス」に関して、色々と喧しい。特に目立ったのは岩田医師がダイヤモンドプリンセス号内部の検疫・隔離体制が「ぐちゃぐちゃだ」、なっていないとYouTubeを通じて暴露し、たくさんのメディアへ拡散したのち、厚労省サイドで対策に取り組んでいた高山医師がこれにコメントし、その後岩田医師がYouTubeにアップロードしてあった動画を削除し、陳謝したことだ。動画を削除した理由について岩田医師本人は「これ以上この議論を続ける理由がなくなった」と言っている

          COVID-19、岩田先生、高山先生

          朝倉彫塑館と掛け替えのない体験

          そこでしか得られない体験例えば、どこかの小川であたり一面を飛び交う蛍の光に包まれた、とか、そういう「あの場所でしかできない体験」というのを、みなさんは幾つ、したことがありますか? (ひょっとすると「チームラボ・ボーダレス」のような仮想的擬似空間の演出でさえ「実体験」という感覚はありそうに思えます。残念ながら自分はそれを体験していないので、ここではコメントしません。) 最近はソーシャル経由で共有されてくる他人のアクティビティを見て「体験したつもり」になっている人が増えているか

          朝倉彫塑館と掛け替えのない体験

          ありのまま

          こんにちは。今日はあなたもたぶん知っている歌につながる話をします。 この歌詞、ご存知ですよね: ありのままの 姿見せるのよ ありのままの自分になるの 映画「アナと雪の女王」の劇中歌「レット・イット・ゴー」(クリステン・アンダーソン・ロペス、ロバート・ロペス作)です。May J.がリリースしたテーマソングとは別に、松たか子が歌った劇中バージョンの率直な歌い方と舞台俳優特有の地声が、歌に不思議なスピリットを吹き込み、大ヒットとなりました。 そして誰もが思います:「ありのままの

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          ドトールでノマド中の曲を探す

          これは効率とも洗練ともなんの関係もない話だ。単に手間取っただけだが、人生はそういうところのディテールに面白さが隠れているという発見でもある。 仕事場にドトールコーヒーがある。ある日の夕方そこでノマドに仕事をしていたら、突然聞いたことのない、しかし超好みの曲が流れてきた。自由な歌い方の女性ボーカル。ナチュラルだがとんがったバックバンドのアレンジ。すぐに連想したのはジャズシンガーになってからのジョニ・ミッチェル。ジャコパスやメセニーなんかと「ミンガス」や「ヘジラ」などのアルバム

          ドトールでノマド中の曲を探す