映画「リスボンに誘われて」
「えっ? あの時代にこんなことがあったの?!」とびっくりしてしまう映画を観たのでご紹介します:
スイスのベルンで働く地味な高校教師のライムント(ジェレミー・アイアンズ)は川に飛び込もうとした女性を助ける。女はすぐに姿を消し、持っていた本だけが残された。本は無名の作者の美しく力強い文学的な詩で、それに惹かれたライムントは、本に挟まっていた列車のチケットを頼りにポルトガルのリスボンへ向かった。
その先は女性探しのシンプルなラブストーリーなのだろうと思っていたのだが、実際は、なんと戦後30年以上経った(!)1970年代にポルトガルに実在していた独裁恐怖政治とそれに対抗するレジスタンス活動、そしてその中に秘められたラブストーリーなのだった。
こういう歴史が自分にとっての同時代にあったのだ、ということを気付かされたことでも印象的な映画だった。
作中で紹介される詩的で美しい文章に強く惹かれる。この映画のために作られたものなのか知らないが、読んでみたいと思う。
ラブストーリーに描かれる男女関係の機微は普遍的とも言っていいが、かといってステロタイプでもない微妙な間合いも含んでいて、そこにも惹きつけられる。
そして最後の最後には、あの「プラハの春」を扱った別の映画で強烈な印象を残した人、「ああ、あなたがここに。なるほど」という女性が現れる。それでぴったりと決まる。
新鮮で強烈な印象、人同士の関係や心理が繊細に描かれる人間へのアプローチ、美しいビジュアル、どれをとっても意外なくらいの良作で、万人にお薦めできる映画です。
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