言い訳にも言い逃れにもなっていない橋本聖子の会見:本人もそれをわかっていないのか?

まず先に申し上げておく。夏と冬の両方のオリンピックでの偉業の達成者として、私は橋本聖子氏を最近に至るまでずっと尊敬してきた。しかしそれはオリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長としての彼女の振る舞いで、全く反故にされてしまった。今、彼女の発言は一言たりとも信頼に値しない。
フェアな精神と、それに連なる一抹の正義がスポーツマンシップだとすれば、以前はその体現者だと思えたこの女性は、政治にまみれてここまで変わってしまったのか、としか思えない。

話は以下の会見のことだ:

東京オリンピック(とパラリンピック)の関係者の行動規制に関し、メディアがIOCに抗議したことへ、橋本がレスポンスし、それを記者会見している。GPSデータの提供は任意だと示し、それにメディアが「理解した。サンキュー」と言ったのだそうだ。
当たり前のことだ。「任意だ=強制しない=やらなくていい」という意味だ。当然サンキューというだろう。自由に行動していいという原則を示したのだから。

政府発表丸写しと忖度と自主規制だらけで腰砕けの日本メディアとは違って、海外勢はまだ「権力を監視する番犬」としてあらゆる規制から自由になり、見知ったものを大衆に知らせたいと思っているようだ。彼らがオリンピックバブルの中だけでじっとしているわけはないだろう。自由に外へ出て、コロナで東京の町はどうなったか、地方はどうか、押さえ込みに成功したはずの日本が今いかにそれをコントロールできていないか、見て回ろうとするだろう。番犬としてのメディアの行動性癖としては反対はしない。が、数千・数万の海外からの人流が国内を比較的自由に移動し、日本の各所に分散すれば、予想される結果として感染拡大に寄与する可能性が高いだろう。

橋本はそのことはわかっているのかも知れないし、そうでないかも知れない。政治家なのに「メディアは私の気持ちをわかって、自主規制してくれる」とナイーブに思っているのだろうか。でなければ「事実上何の制限もないことはわかっているが、表向きこういってそれを忖度メディアに公開しておく」という戦略なのだろうか。

どちらにせよ、感染防御としては何の意味もないことを「安心安全」とからめて表明する橋本という人間の今の欺瞞だらけの姿がよくわかる。

ただのお飾りスポークスパーソン(それもかなり出来が悪い)の丸川というオリンピック担当大臣と五十歩百歩でしかない。あれよりはもう少しはまともな人だろうと信頼を寄せていたのだが。
こういう人間たちが、文字通り国民の生命がかかっている事態を扱っている。

批判だらけの、何の救いもない記事を書くのはつらいことだが、そういう状況であること自体は指摘しておいた方がいいだろうと思って書くことにした。
次のエントリーを音楽の話にしてあります。救いようのないこれの気分直しはあっちでやって下さい。

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