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異国にないものねだり|「あかねさす柘榴の都」福浪優子(読書日記)
衣替えをした。ついに夏が終わってしまったな、と思う。
今年の夏、私は「スペインかぶれ」になってました。肌をプールでこんがり焼いて陽気な音楽で踊り、オリーブオイルたっぷりの食生活をする。「Salud‼︎」と乾杯。
なんでそんなことになっていたのかというと、このマンガを読んだからです。
両親を亡くした少年・夏樹がスペイン人の叔母・アルバに引きとられ、スペインのグラナダで暮らす日常のお話。
グラナダはアンダルシア地方の土地。白い壁の石造建築の壁はカラフルなお皿や赤い花で飾られ、伝統の街並みが美しい。歴史深くて有名な「アルハンブラ宮殿」もある街だから、日本でいう京都みたいな場所なんだろう。
古き良きスペインはグラナダにあり。
夏樹が身を寄せることになったアルバの部屋は「ピソ」という集合住宅の中にある。優しく賑やかな住人たちとの交流で夏樹の心が癒えていく様子も温かなんだなあ。
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グラナダはキリスト文化とイスラーム文化の両方が共存している街で、日本文化と共通のある部分はほとんど無い。
それなのにこんなに強烈にグラナダ暮らしに憧れてしまうのはきっと、共通点が無さすぎて無いものねだりが完成しちゃうからだ。
グラナダは太陽がすごく眩しくて、カラッと気持ちよく晴れていて、昼間が日本よりずっと長い。
街は植物がいっぱいで石造の家に入ればひんやりと涼しく、家の中もまた植物でいっぱいなのだ。食卓には鮮やかな果実が並ぶ。植物も人も物も、みんなカラフルな色をしていて、そんなのフラメンコ踊りたくなっちゃうよ!
無い物ねだりは、グラナダから見た日本でも同じかもしれない。(田舎同士を比べるために私の故郷の場合で書く)
日本は水の国。年中乾燥しているグラナダに暮らす人にとって驚きの光景のはず。
山から大量の湧き水が流れて水田を潤す。透明な川で泳いで涼み、数十分で止む夕立のあと気温の下がった長い夜が来る。木造の家の柔らかい畳の上で寝転がる。
乾燥した空気を吸っている彼らは、空気の中にすら水を感じるだろう。
どちらがいいかっていう話ではなくて、共通点の無い街同士はまさに「異国」で、そんな異国が自分の住む街になるなんてアメージングでわくわくしてしまうよねってことが言いたいのです。
あと、なんといってもスペインの食べ物の魅力よ!
強い日差しのもと果実がいっぱい実るスペインの食べ物はとてもカラフルで、見ているだけで元気が湧いてくる。
中でもトマトとオリーブは私の大好物なので、袋いっぱいに買っているグラナダの人々が羨ましい。
次々に登場するスペイン料理の味が知りたくて家でも色々作ってみたのだけど、特に美味しかったのが「ガスパチョ」
私は、
トマト/にんにく/きゅうり/ピーマン/酢/塩/氷
をブレンダーで潰して作った。
「太陽の恵み‼︎‼︎」って言いたくなる味です。夏のごちそう。
「チュロス」は絹豆腐を混ぜ込むとモチモチになって美味しかったし、「アイスコーヒー」は氷だけを入れたグラスにホットコーヒーを移す飲み方が友達に大好評だった。
うちのスタンダードになったスペインの食文化たち。
美味しい料理は文化を横断するのだね。
我が家にスペインの風を送り込んでくれた「あかねさす柘榴の都」全3巻。
ぜひあなたも、旅情誘われてください。