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DSのゲームで作曲して遊んでいた子供時代。まさかこれが仕事になるとは

作曲家のシエシ度です。
僕は先日までフリーランス作曲家として、オリジナル曲の受注制作を主な収入源として生計を立てていました。

色々あって現在、全く別業種の会社員を本業とし作曲は副業になってしまいましたが、どんな形であれ、僕はこれからも作曲を辞めることはないでしょう。

僕にとって作曲は趣味であり、仕事であり、自己表現の手段であり、快楽を得るための道具であり、義務であり、悩みの種でもあります。
きっとこれからも作曲は一生逃れられない呪いでもあり、一生添い遂げるであろうパートナーなんだろうとも思います。

そんな僕の人生を彩ってくれている作曲ですが、出会いはNintendo DSのゲームソフト「大合奏!バンドブラザーズ」に搭載されていた作曲機能でした。
初めて触ったのは小学5年生くらいの頃だったと思います。

青春を捧げた画面(画像は大合奏!バンドブラザーズDXのもの)
(出典:https://www.nintendo.co.jp/ds/axbj/compose/index.html)
メインの遊びは、実在する曲の1パートをボタン操作で演奏するモードなんですけどね
(出典:https://dengekionline.com/elem/000/000/084/84683/)

▼このゲームの公式サイトはこちら


僕は音楽一家に生まれたわけでも、ピアノなどの音楽を習っていたわけでも、音楽を誰かに教えられたり強制されたりしたわけでもありませんでした。
学校の音楽の授業は人並みにこなしましたが、特段一生懸命なわけでもありませんでしたし、歌も楽器も決して上手ではありませんでした。
楽譜については、子供の頃はおろか未だに読めない始末です。

このゲームを買ったのは僕の兄でしたし、別に作曲をしたくて遊んでいたわけではありませんでした。
ある日作曲モードがあるのを見つけて開いても何だかよく分からない、専門家にしか分からない画面なんだろうな~という感想でした。

ですがこのゲームは、当時小学生の僕が純粋に「音」を「楽」しむためのツールとしてはあまりにも十分すぎました。
曲の完成度も良し悪しも音楽のルールなんかも気にせず、好き勝手に作ることがとにかく楽しかったのを覚えています。

まずはパート1の楽器を選びます。
聞いたことがあるようなないような楽器名がずらっと並んでいるので、とりあえずそこからかっこいい名前のものを選びます。
「スラップベース」なんていう名前の楽器が存在するのだろうか。
音を鳴らしてみると、昔のゲームなのでチープではありましたがバキバキな低音感が伝わってきます。
低音はこいつに任せることにします。

パート2の楽器には伴奏を弾いてほしい。
バキバキなベースに合うかっこいい伴奏といえば、やはりエレキギターでしょう。
一覧を見るとDギター・ODギターという楽器があります。
エレキギターはどれだ…でもEギターは何だか音がかっこよくないし…
音がかっこいいDギターに伴奏を任せることにします。

だんだんロックな編成になってきたので、パート3のパーカッションにはロックなドラムを探します。
「ロックドラム」という楽器はあるけど、「Eドラム」の方が音がかっこいいな~
というわけでEドラムにパーカッションを担当してもらうことにします。

ボーカルという楽器は一覧に無いけど、何だかアルトサックスの音が聞き取りやすそう。
というわけでボーカルにはアルトサックスを起用します。

こんな感じで思うがままに楽器を選んだら、次はいよいよ打ち込みに入ります。
何となくサビから作ります。

ドラムが一定のリズムを刻んでいれば曲になると思っていたので、とりあえずバスドラとスネアでシンプルなリズムを打ち込みます。
テレビでドラマーが手をクロスして金属っぽい楽器を叩いているのを見たことがあったので、見よう見まねでハイハットとクラッシュシンバルを打ち込みます。
これでドラムは完成です。

ギターはゲーム内に主要コード一覧があったので、とりあえず色々鳴らしてみて、かっこよくて盛り上がりそうだったF G Amを打ち込んでおきます。
気が向いたら色々鳴らして合いそうな別のコードにしてみます。
これでギターは完成です。

ベースは全然分かりませんでしたが、そもそもギターとの違いもよく分かっていなかったので、とりあえずギターと同じような動きにしておきます。
でもせっかく音がバキバキしてかっこいいから、たまに1オクターブ上げて目立たせちゃいます。
これでベースは完成です。

ボーカルはあちこち音程が変わると歌いづらそうなので、なるべく近い音程にし、ロングトーンも入れたりして歌いやすそうなメロディにします。
何だか伴奏に合ってなさそう、盛り上がらないし暗い、こんなはずじゃなかった…でもどうしたらいいか分からないので思うがままに打ち込みます。
これでボーカルは完成です。

何だか寂しいので、ギターをもう1本足してピロピロさせちゃいます。
スクエアリードって何だろう、キーボードかな、とりあえず音が綺麗なので入れてみます。

サビが出来たら、次はこのサビに繋がるようなBメロや、サビが終わった後の間奏を作ります。

このようにして数百曲作りましたが、どれも良い曲じゃありませんでした。
不協和音だらけでしたし、意図した雰囲気は作れませんでしたし、楽器名を見てもどんな風に演奏するものなのかよく分からなかったので、良い曲になるはずもありません。

でも、それで良かったんです。
良い曲を作ることを目指しはしますがそれは目的ではなく、ただ曲を作ることが目的だったので、その過程全てが楽しく、熱中できるものでした。
10代の頃はほぼ毎日寝る前にボロボロになったDSを起動し、眠くなるまで曲を作っていました。

勉強は嫌いだったので音楽の勉強はしませんでした。
将来作曲家になろうとも思っていませんでした。
いつか良い曲が出来たら適当にネットで公開するかCDを作るかできたらいいな~くらいに思っていました。

実際、高校生の時にCDを2枚作りました。
どれも全然いい曲ではありませんでしたが、とても良い思い出です。


大学生になると学校やらバイトやら飲み会やらで忙しくなり、あまり作曲をしなくなりました。

作曲をしたい気持ちはずっとありました。
しかしさすがにゲームで作れる範囲で満足できなくなっていたこと、
DTMを始めてプラグインを揃えるにもお金が無いこと、
家に籠って作曲するより外に出ている方が楽しかったこと等から、
自然と曲を作ることが無くなっていきました。

やっていたバンド用にたまに作ってはいましたが、相変わらずクオリティに満足できるものではなかったので、バンドで演奏することはあまりありませんでした。

そうして大学卒業後は当然音楽の道に進むこともなく、普通に就職しました。

「やっぱり音楽を仕事にすることはなかったな~」

本気で目指していたわけではないとはいえ、少しは寂しさや悔しさを覚えていました。


就職して数年後、コロナ禍がやってきました。
自宅で過ごす時間が増え、副業を始める人や動画配信等の活動を始める人が増えました。

僕の職場はコロナ禍でも休みにはなりませんでしたが、業務量は大きく減ったので、体力と気持ちに余裕ができました。

「流行ってるし、自分も何かやってみるかな~」

と何か出来ることを探していたところ、自分には作曲の経験があることを思い出しました。
スキルに自信はありませんでしたが、試しにX(当時Twitter)で、無償で作曲します!と呼びかけてみました。
ポートフォリオとして過去にDSで作った曲をいくつかパソコンでリメイクし、ボカロに歌わせ、Youtubeにアップしました。

すると有難いことに、高校生(当時)の歌い手さん2名からご依頼いただくことができました。
偶然にもお二人のご要望は似ており、どちらも自分の作った歌詞からメロディを作り、オリジナル曲にしてほしいというものでした。

他の人が作った歌詞から曲を作った経験はありませんでした。
そのうえ自分の好きなようにではなく、要望を汲んで曲を作ったこともありませんでした。
ですので今まで音楽の勉強から逃げていましたがこの時ばっかりは猛勉強し、時間をかけて制作し、出来る限りのことを尽くして納品しました。

有難いことに、お二人ともものすごく喜んでくれました。

自分が作った曲で誰かが喜んでくれたという経験も無かったので、
「作曲が出来て良かった、続けてきて良かった」
と強く思ったのを覚えています。

▼その時制作したうちの1曲です(もう1曲の動画は削除されていました)


その後、さすがに仕事の片手間に無料で曲を提供し続けることは難しかったので、5000円で作曲依頼を受注することにしました。
有難いことに休日が無くなるほどに忙しくなってしまったので、休日を確保できるよう、徐々に10000円→15000円…と上げていきました。

受注するごとに猛勉強し経験も積んでいったことで、1年後には2日で1曲作れるようになっていました。
そこから更に1年後(受注を始めてから2年後)、1ヶ月での受注数や単価、制作にかかる時間、楽しさややりがいなどを勘案したとき、
「これを本業にしたい!」と思えたので、会社を辞めてフリーランス作曲家になりました。

「好き」「やってみたい」
という気持ちだけで始めた作曲だったので、まさかこんなことになるとは思ってもみませんでした。


どんな趣味も、娯楽も、努力も、注いだ情熱も、完全に「無駄」になってしまうことはないと思います。
例えばゲームだって仕事にできる時代ですし、そうでなくともゲームから身に付くスキルやゲームからしか得られない経験・機会だってあります。

大人になればなるほど、余計な時間や労力をかけないよう「無駄」をそぎ落としたくなるものです。
周りの大人から見れば、僕が子供の頃してきた作曲は「無駄」だったかもしれません。

ですが「無駄」に注いだ情熱が10年先の未来を変え、僕の人生を豊かにしてくれました。

これからも僕は「好き」に正直に行動した結果、「無駄」なことを沢山していることでしょう。
「無駄」に全力を注ぐことで、いつかの未来がほんの少しでも良い方向に変わり、人生が彩り豊かになったらいいな~なんて期待しちゃったりしてみようと思います。

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