オンラインで演劇を観た①(三谷幸喜「大地」/ヨーロッパ企画「京都妖気保安協会Vol.1」)
8.1 三谷幸喜「大地(Social Distancing Version)」
PARCO劇場のオープニングシリーズとして三谷幸喜が書き下ろした新作をソーシャルディスタンスに配慮した演出で仕上げた作品。確かに役者同士に一定の距離が保たれているが特に不自然に感じない。斜め方向への奥行きと個別の区画があるセットも話の中に自然にあって、工夫の行き届き方が素敵。
さて物語はというと、共産主義国家で取り締まられた演劇俳優や大道芸人たちが強制労働させられる施設が舞台という、実にのっぴきならない設定。「記憶にございません!」を作った人ですけど、ここまで攻め込んだ内容をこのタイミングで書き下ろすとは。ニコニコしながら刺してくる感じだ。
三谷幸喜の演劇、特に役者への愛が詰まった作品だ。権力に対するカルチャーの意地という点では「笑の大学」とかに通ずるもので、1幕の閉塞感を2幕で突き抜ける痛快さは堪らなかった。エンターテイメントには危機的状況をも軽やかに乗り越える。そういう力があると信じてるからこその作劇だ。
ただ一方、容赦ない現実を突きつけながら物語は佳境へと向かっていく。この悲哀は、時代とか情勢を問わないもので。演劇というものの美しさや耐久性が故に生まれるやりきれない痛みだった。綺麗事のない、演劇の素晴らしさと残酷さを描き出してある。これくらい本気だから、魅了されてるんだ。
8.2 ヨーロッパ企画『京都妖気保安協会』 ケース1「嵐電トランスファー」
ヨーロッパ企画が贈る全4回のオンライン演劇。てっきりどこかの舞台からと思っていたら、京福電気鉄道嵐山本線の1車両を貸し切っての生配信。ワンカットで停車駅も含めて完璧に構築されてある。そしてまた物語が最高で。妖怪とか怪奇現象の類を管轄する「京都妖気保安協会」という京都であればなくはなさそうな素敵すぎる団体が嵐電で起きたある不思議な出来事を対処する、というもの。ゴーストバスターズよりももっとお役所仕事っぽい面々、怪奇に巻き込まれる人々のキャラ立ち、ポップでゆるめで、しっかりほっこりさせてくる。京都と組んでこのシリーズ色んな所で続けていって欲しい!
ヨーロッパ企画で言うと、日清UFOとのタイアップで宮野真守を主演に招いて作ったこちらの「U.F.Oたべタイムリープ」もとても良かった。ベタなんだけど絶対笑っちゃう構成だし、宮野真守のケレン味をこれでもかと引き出している。この男にタイムリープさせる役させたら狂気が宿ってしまうなぁ。
主宰の上田誠は森見登美彦と「四畳半タイムマシンブルース」なる怪書を執筆し、団員の石田剛太は半沢直樹に出演、角田貴志は「すみっこぐらし」の脚本で話題に。ヨーロッパ企画がここにきてまた盛隆を極めつつある!
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