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オンラインで演劇を観た⑤(ロロ「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校」/KERA CROSS「カメレオンズ・リップ」)

ロロ「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校」(アーカイブ5/31まで)

三浦直之がロロの旗揚げ1年目に書いた戯曲を若手俳優でリブートしたもの。ロロの代表作であり、今夏に完結作が上演される予定の「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高校」シリーズにも通ずるような誰かの思いを誰かが受け取ることで駆動していく物語だが、高校生たちのそれと違い、まだ無自覚で無邪気な部分を残している卒業間近の小学6年生という設定が効いていた。まだ名前の付いていない感情を手探りで捉えようとしていくような、がむしゃらで方向不正確なエネルギーを強く感じることができる。

「独白」と「対話」の間にある「告白」についての話であると三浦氏は語っており、この「告白」というものを深く優しく描く作品だったように思う。言わなくてもいいと思っていたのに溢れちゃうものとか、言わないつもりだったのに言わされちゃったものとか、言うと思ってなかった相手に届いちゃうものとか、そういう、自分の想定をはるかに飛び越えていってしまう「告白」の無軌道な動きを懸命に映し出している。荒井由実「卒業写真」という一切の捻りのない選曲が、鮮やかにマッシュアップされるラスト、震える。



KERA CROSS第三弾「カメレオン・リップス」(アーカイブ5/23まで)

ケラリーノ・サンドロヴィッチの戯曲を気鋭の演出家たちが再演する企画の第3弾。2004年に初演が行われた同タイトルの公演を河原雅彦の演出、松下洸平、生駒里奈らの出演でリブートがなされた本公演をシアタークリエにて収録し、編集を施したのが今回の配信版。20世紀初頭、ヨーロッパの古びた邸宅を舞台に謎の死を遂げた姉に瓜二つの使用人エレンデイラと暮らす男ルーファス、そこに集ってくる亡き姉の夫、元使用人、医師、姉の友人、さらに女社長、軍人なども交え、それぞれの思惑で騙し合いが繰り広げられる。

クライムコメディと銘打たれているので、コンゲームものかと気楽に観始めたがどうやらそうではない空気が充満し始め、最終的には強烈な閉塞感と残酷な事実をもって闇に沈んでいくような、ダークな質感の物語であった。演技については年代設定もあるのだろうが、ややテンションがから回ってる感じがあってちょっと笑いづらい空気もあったのだけど、終盤に向かうにつれそのハイテンションに空虚さが滲み始めてどんどん不気味に思えてきた。空っぽなやり取りもまた、この物語全体のうやむやさにも繋がっているよう。


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