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手帳に「自由」と書き留めて ー心を休めるヒント
僕は、自分の本棚を眺めるのが好きです。
過去に読んだ本の背表紙が並んでいるのを見ていると、何とも言えない感情が湧き上がってくるのを感じます。
気まぐれに、その中の一冊を手に取って、パラパラとページをめくる。
何をしているわけでもないけれど、豊かな時間を過ごしているなぁと思います。
夜、湯船に浸かるのも好きです。
昔はほとんどシャワーで済ませていたのですが、年々入浴している時間を好きになっていく自分がいます。
頭を空っぽにして、体が温まっていく感覚に身を任せている時、幸せという言葉が頭に浮かびます。
これも、やっぱり何ということもないけれど、豊かな時間だなぁと感じる瞬間。
人生はとても複雑ですが、人間という生き物は、思った以上にシンプルなことで幸福感を得られるようにできているようです。
それは、メンタル疾患にかかって学んだ、重要なことの一つ。
もちろん、何かしようと意気込んで取り組む時間も大切ですが、日常の中にポッカリ空いた「隙間」の時間にも、案外幸せが潜んでいるような気がします。
僕は現在、適応障害を発症して休職中の身。
何もしないでいると、将来への不安や焦り、働けない自分への葛藤など、さまざまな感情が浮かび上がってきます。
でも、それすらもシャットダウンして、完全に思考するのを止めている時、ふっと「その時間」が訪れます。
頭の中が空っぽになって、心に心地良い風穴が開く時間。
ちょっとだけ、体が軽くなったような、解放感に満ちた時間。
「何も考えない時間を作るのも、心を休めるには大切なことです」
定期通院しているメンタルクリニックで、カウンセラーの先生に言われた言葉の意味を、僕は最近になってようやく、実感してきました。
これまでの自分は、何か「有意義な活動」をすることが、精神に良い影響を与えると思い込んでいた。
でも、本当はそれだけではないのかもしれません。
本棚の前に立ち、ぼんやりと並べられた本を眺めている瞬間、僕は何も考えていません。
湯船に浸かり、体が温まっていく感覚に身を委ねている瞬間も、やはり僕は何も考えていない。
でも、確実に心がメンテナンスされているのです。
取り立てて「有意義な活動」をしていなくても、その時間って、実は「有意義」なものなのです。
心に隙間ができると、そこには何か新しいものをとり入れるためのスペースが生まれます。
それはもしかしたら、自分の認知や思考をアップデートさせるために、必要な「余白」かもしれない。
そう考えると、意識して「何もしない」時間を作ることこそ、真に生産的な活動のように思えてきます。
心が苦しくなっている時、八方塞がりになっている時、壁にぶつかった時、思い切って少しの間、「ぼんやり」してみませんか?
現状を打破する答えは案外、無意識の中に潜んでいるのかも。
溺れた時は、もがけばもがくほど、水中に沈むのが早くなる。
むしろ、全身の力を抜いた方が、体が水面に浮かび上がってきます。
一日のうち数分でも、隙間の時間を作ることで、心がゆっくり癒えていく。「何もしない」時間が、メンタル疾患の寛解を後押ししてくれる予感を、今僕は、ひしひしと感じています。
そうして、脳の充電が終わったら、次は外の世界に向かって思考を切り替えるターン。
その繰り返しが、より豊かな人生を生きていく力になるのです。
4月始まりの手帳を買ったら、真っ先に「自由時間」の予定を書き留めておきたい。他のスケジュールで埋まってしまう、その前に。
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