見出し画像

【セミナーレポート】SaaSビジネスのグロースに欠かせないパートナー戦略のはじめかた ー #3 対談企画:パートナー戦略をはじめるには

こんにちは!
SaaS企業向けマーケティング支援を事業の柱としてきた株式会社メディックスは、株式会社ハイウェイと共催で、オンラインセミナー「SaaSビジネスのグロースに欠かせないパートナー戦略のはじめかた」を2024年8月28日(木)に開催しました。


そのセミナーのサマリを下記3回にわたってご紹介いたします!
第1部  SaaSビジネスにおけるパートナー戦略の重要性
第2部  なぜ今パートナービジネスが SaaS で注目されているのか
第3部  対談企画:パートナー戦略をはじめるには


今回は実際にパートナービジネスを始めるにはどうするべきか対談形式で解説いたします。

第3部:対談企画:パートナー戦略をはじめるには


ー パートナービジネスをはじめるタイミングは?多くのSaaS企業がパートナービジネスに力を入れているものの、適切なタイミングがあるのでは?

小松:
今現在、ダイレクトセールス中心のSaaS系企業が、いきなりパートナービジネスを始めるのは難易度が高いと思うのですが、始めるにあたりふさわしいタイミングがあれば教えていただきたいです。

久保氏:
SaaS企業が代理店とパートナービジネスを始めるのに最適なのは、自社製品が「プロダクトマーケットフィット(PMF)」の状態にあることだと一般的に言われています。その状態をもう少し深堀して説明すると、「外部の営業マンが売れるようなレベルなのか」ということです。つまり、自社の古くからいるベテランの営業マンがトップセールスでガンガン売れる状態ではなく、入社したての社内の営業が平均的なリードタイム・平均単価で再現性高く売れるような状態になっているか、ということです。この状態をひとつの指標にしていいのではないかと思います。

具体的にお話しすると、新入社員でもベテラン社員と同様の成績を出せるような営業プロセスが確立され直販の営業再現性ができている、初回商談から契約に至るまでの付帯業務のオペレーション化がされ、誰でもできるようになっている、顧客に製品の価値を簡潔かつ効果的に伝えられるわかりやすいセールスピッチができている、この3つが確立している状態がベストといえるでしょう。

パートナービジネスをはじめるタイミング(内部の要因)

また外部からのシグナルで言えば、顧客からインセンティブのない紹介案件の発生がある、パートナーになりたいというインバウントが出始めているか、またパートナービジネスを推進する専任担当者を自社に置けるか、などもタイミングとして良いのではないかと思います。

パートナービジネスをはじめるタイミング(外部からの要因)

ー パートナービジネスはどのような体制ではじめる?-難易度が高く、リソースも一定以上かかるパートナービジネス。各社どのような体制で取り組んでいるのでしょうか。


小松:
パートナービジネスを始めることは、難易度も高く、リソースも必要となると思われます。久保さんの豊富なサポート経験から、パートナービジネスを成功させるためにはどのような体制が最適か、教えていいただけますでしょうか。


久保氏:
パートナービジネスの体制は大きく「プログラムの設計・運用」「パートナー開拓」「パートナー育成」「関係構築」の4つのフェーズに分けて考えるとよいでしょう。
 
それぞれのフェーズで求められるスキルも違ってきます。
前半のフェーズ(プログラムの設計・運用、パートナー開拓)では、パートナーシッププログラムを推進する適切な人材を確保する人事採用スキルや、パートナーの営業担当者に自分たちの商材を魅力づけるといった新規営業的なスキルが重要です。
 
後半(パートナー育成、関係構築)では、パートナーの営業担当者を自分たちの熱烈なファンにし、商材に関する知識や販売手法を教育するというフェーズになるので、営業を育成するマネージャー的なスキル、また、パートナーの企業規模が大きい場合、大企業の組織構造を理解し、キーマンとの関係性を構築するスキルも同時に必要になります。

図22: パートナービジネスに必要な体制、求められるスキル

「ザ・モデル型」のような体制では、新規顧客を獲得する営業と、既存顧客のサポートを行うカスタマーサクセスは担当する業務が大きく異なるため、別々のチームに分けるのが一般的です。パートナービジネスでも、新規開拓やプログラム開発から育成と業務が幅広いのですが、多くの企業では最初は1人で複数の業務を兼任することが多いのが現状です。余裕が出てきたら、これらの業務を明確に分けた体制にするのがよいでしょう。


小松:
多くのSaas系企業がザ・モデル型体制をとっていると思いますが、それと同じように、新規営業とパートナーセールス(マーケティング)は役割・ミッションを分けて対応していくが理想ということですね。


久保氏:
そうですね、ですが、まだ日本ではそこまで厳密に分かれている企業は少ないですね。新規営業からパートナーセールスまで掛け持ちですべて対応している、という企業も結構見かけます。ですので、フェーズごとに何が今必要なのか、リソース分配をきちんと考えるというができるようになると理想的であると思います。


小松:
最初の「パートナー開拓」のフェーズでは、第2部で解説いただいたパートナーシップのピラミッド図で一番下にある、アフィリエイトパートナーを見つけて、そこから段階を踏んでいくのが正攻法になるのでしょうか?

BtoBパートナーシップのピラミッド


久保氏:
海外では、BtoB SaaS企業の製品を自分のウェブサイトで紹介しリード獲得へつなげるアフィリエイトパートナーがたくさんいるのですが、日本ではまだまだ少ないのが現状です。
図の真ん中にある紹介パートナーを見つけていくのが、一般的です。

ーパートナービジネスのKPI設計のポイント-パートナー契約を結んだだけでは、成果に繋がらない。パートナーサクセスに至るまでのKPI設計におけるポイントは?


小松:
最後に、パートナービジネスのKPIについてお伺いできればと思います。パートナー契約を結んだだけでは、なかなか成果につながらないため、パートナーサクセス的な取り組みが必要だと考えています。カスタマーサクセスでは、顧客の離脱率(チャーンレート)や月間経常収益(MRR)といったKPIが重要ですが、パートナーサクセスでは、どのような指標が重要になるのでしょうか?


久保氏:
パートナービジネスでは、代理店を通じて売上を伸ばすことが最終的な目標なので、それにつながるKPIを設定します。
 
まず、「どれだけ多くの代理店を獲得できたか(新規代理店数)」と「実際に商材を扱ってくれる代理店がどれだけいるか(稼働代理店数)」 この2つが主なKPIになります。
 
代理店開拓数はさらに掘り下げると、「潜在的な代理店候補と商談した回数」そして「商談から実際に契約につながる案件化率」、そして、稼働代理店数は、「各代理店において、実際に営業活動を行っている担当者がどれだけいるか」「その担当者が紹介してくれた顧客数」「紹介された顧客のうち、実際に契約につながった数 」といった詳細なKPIを追っていきましょう。
すこし泥臭いですが、それくらい掘り下げたKPIを置き追っていくことが、現実的で良いのではないかと思っています。

図23:パートナービジネスのKPI


小松:
よく言われる「売れる一人目をいかに見つけるか、そしてそこからどう広げていくか」ということが重要ということですね。


久保氏:
そうですね。代理店が自社の商品以外を売るのは簡単ではないので、最初の受注時には、メーカー側のサポートが不可欠です。新入社員が一人で商談することはなく、上司が同行して丁寧に指導しますよね。同じように、パートナー企業に対して、最初のステップからしっかりとサポートしていくことが大切だと思います

最後に本セミナーのまとめ

株式会社メディックスの「IT製品選定者アンケート調査」によると、製品選定には第三者(パートナー)の関与が半数以上あることがわかりました。また、中小企業庁の調査では直販でアプローチできるのは24%であり、7割強はなんらかのパートナーを経由した販売です。これらはパートナー戦略の重要性が高まってきていることを示しています。
 
また、BtoB SaaS分野のサービスはすでに下降トレンドになっており、しっかりと売上と利益があげられる企業が評価されるようになってきています。そして、売上と利益を上げるために、直販ではアプローチしきれない、地方の中小企業、エンタープライズ企業、非IT企業への拡販が必要となっており、その戦略としてパートナービジネスが注目されています。
 
さらに、パートナービジネスをはじめる際には、どこまでをパートナーに求めるのか、代理店担当者のレベル感と営業難易度の見極め、企業単位ではなく担当者単位での支援を行っていくことが重要です。
 
今回、株式会社ハイウェイの久保 ⽂誉氏をお招きし、パートナービジネスがSaaS企業で注目されている背景、パートナービジネスの始め方を解説していただきました。
SaaS企業のパートナー獲得施策の実績も豊富にありますので、ご興味のある方は、ぜひ、ご相談ください。