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読了記録

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アウトプットの練習がてら興味を持った本を読んで感想を書くだけ。ジャンルは雑多です。月1更新目処
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【読了記録】今月読んだ本 ~24年9月編~

夏より秋が近いかな 貝塚茂樹『論語 - 現代に生きる中国の知恵』 やはり一般教養として論語を一回くらい通っときたいという思いもあって通読。論語二十編の中から七編を、原文(漢文)・訓読文("子曰く~"と続くよく耳にする形式)・解釈で解説した本。全て紹介している訳ではないがエッセンスを抽出してまとまった一冊である。  論語は孔子とその弟子たちの言行を、死後弟子たちが記録したもので儒教の根幹を担っていると言っても過言ではない書物である。私は「子曰く、故きを温(たず)ねて、新しき

【読了記録】今月読んだ本 ~24年10月編~

秋 瀬地山角『炎上CMでよみとくジェンダー論』 CMは企業の顔、一番人の目につきやすいものである。その表現を一つ間違うとSNSが発達した現在では炎上→ブランド力低下、なんてことはしばしば見られる。例えば化粧品CMの炎上だと「女性は美しくないといけないのか」という炎上理由も理解しやすいものである。ではどういったCMを作るべきか、というのも言語化が難しいものである。タブーはわかるが、理想的なものが何かはボンヤリとしか浮かばない。  そこで本書では[外見・容姿⇔性役割]、[男性⇔

【読了記録】今月読んだ本 ~24年8月編~

秋を近づけ 公益財団法人目黒寄生虫館 監修、大谷智通 著、佐藤大介 絵『増補版 寄生蟲図鑑 -ふしぎな世界の住人たち』 亀谷了氏が私財を投じて設立した寄生虫専門の私設博物館、目黒寄生虫館。その目黒寄生虫館が監修した寄生虫だけ掲載されたビジュアルブック。  内容自体は専門的な用語もあるが、基本的に誰が読んでも理解できるような文章だった。そもそも寄生虫自体が中々相容れない人の場合は苦しいかもしれない。そんな身の毛がよだつ様な寄生虫の生態が多く載せられているが、それに華を添えて

【読了記録】今月読んだ本 ~24年7月編~

あっつい 古市晃『倭国 古代国家への道』 日本史には未だ解き明かされない部分も多いが、特に文字資料が皆無な空白の四世紀がその代表だろう。律令制度に基づいた国造りが行われた飛鳥時代では既に天皇制が確立されており、クニ同士が闘っていた時代から如何に制度が整ったのかについては謎が多い。文献資料だけでは大陸の書物や記紀を当たる他なく、それだけでも限界がある。本書では記紀などの史料、伝承などから倭国が成立していく過程を詳説した一冊である。  今日までに至る歴代天皇も万世一系ではなく

【読了記録】今月読んだ本 ~24年6月編~

いくらなんでも暑ないですか? エドワード・ブルック=ヒッチング(著)、藤井留美(訳)、田中久美子(日本語版監修)『世界奇想美術館 - 異端・怪作・贋作でめぐる裏の美術史』 著者が「裏の美術史案内」と語るように一般的な美術書では取り扱われないような美術史を述べた本である。『モナ・リザ』や『印象・日の出』のような美術史において重要かつ有名な絵画はよく知られるところだが、一方で美術史には本書で紹介されるような複雑怪奇な歴史もあるというのがよく分かる一冊である。    人類が芸術活

【読了記録】今月読んだ本 ~24年5月編~

遅くなりました 更科功『化石に眠るDNA 絶滅動物は復活するか』 近年、地球温暖化の影響もあってか永久凍土から冷凍保存された何万年前の生物が見つかったというニュースがたまに報道される。特に有名どころではマンモスで、2005年の愛・地球博でも冷凍マンモスが展示されていた。こういった報道が出るたびに私も心躍らされる。やはり一古生物ファンに取っても新たな発見は嬉しいものである。  さて、その古生物に関する研究でよくあがるテーマなのが「古生物(絶滅生物)は復活できるのか」である。

【読了記録】今月読んだ本 ~24年4月編~

春 西成活裕『とんでもなくおもしろい仕事に役立つ数学』 モノづくりの現場ではよく何かを計算することが求められる。Excelを使った単純な計算もあるが、電子部品の定数をざっと概算して安全性について見通しを立てるなんてこともある。大抵どの業種でも数学は使われているが、著者いわく「数学をもっと利用出来るはず」と語る。  本書では「渋滞学」の研究で有名な西成活裕氏が、講義形式でより踏み込んだ仕事に役立つ数学を紹介している。具体的には曲率や微分などを使えば新たな視点で問題を解決でき

【読了記録】今月読んだ本 ~24年2,3月編~

体調不良で遅れました。2ヶ月分まとめて書きます。 スティーブン・ウィット著 関美和訳『誰が音楽をタダにした?』 音楽をスマホで聴くようになって久しい。私が子供の頃はMDやCDで音楽を聴くのがまだまだ一般的だったが、今ではCDをわざわざ買う人も減ってきている。この音楽の聴き方はここ20年で大きく変化したが、その変化をもたらした因子に何があったのかはあまり知られていない。本書では3つの視点で音楽産業を「殺した」犯人を追っている。  1つ目は音楽データを圧縮する規格である「MP

【読了記録】今月読んだ本 ~24年1月編~

こんにちは2024年 ながさき一生『魚ビジネス』 「おさかなコーディネータ」という肩書を持つ著者による、魚ビジネスにまつわる入門書です。御存知の通り日本は島国であるため、水産資源が抱負な国です。そんな魚をより深く味わうための知識が詰まっています。  個人的に目からウロコだったのは、「魚の売り方」のところです。そもそも現代人は魚を食べないと言われていますが、魚ビジネスの形態が変わってきたのと時を同じくして減り始めているそうです。著者曰く少量多品種の売り方が向いている魚はスー

【読了記録】今月読んだ本 ~23年12月編~

もう今年終わっちゃうねえ・・・ 小川進『QRコードの奇跡』 私が愛聴している『ゆるコンピュータ科学ラジオ』で取り上げられていたので購入しました。該当回は以下↓  QRコードの歴史の本ですが、ただの技術史の本ではなく当時の関係者へのインタビューを豊富に盛り込んだヒューマンドラマのような本です。  元々QRコードはトヨタのカンバン方式で使用するためのコードの一つですが、今では世界中で使われる規格となっています。当然紆余曲折があったわけですが、それがもう面白い。産業スパイのよ

【読了記録】今月読んだ本 ~23年11月編~

気温が急転直下 レイ・ブラッドベリ著 伊藤典夫訳『華氏451度』 不朽の名作です。タイトルの『華氏451度』は本の引火温度を指しています。本が禁制品となった世界で本を焼き尽くす"昇火士"として働く男、モンターグ。そんな主人公が風変わりな少女との出会いでそんな世界に疑問を持つようになる話です。  海外文学特有の文章であるため、日本人には中々合わないかもしれないですが(私はそうでした)、内容は間違いありません。舞台となっている世界ではテレビ番組やラジオが主な情報源となっていま

【読了記録】今月読んだ本 ~23年10月編~

下半期 星新一『宇宙のあいさつ』 大好きな星新一のショートショート集です。35編収められていますが、『治療』や『景品』あたりが面白かったです。  相変わらずオチが予想できないものばかりで楽しめました。 大村大次郎『お金の流れで見る世界史』 こういった歴史の本が好物なのですが、今回は「お金」の世界史です。といっても「貨幣の歴史」というより「経済の歴史」といった内容です。  人類の経済活動は古くは銀や銅などの金属の重量換算に始まり、通貨の概念は中国の殷王朝が貝を用いて取引

【読了記録】今月読んだ本 ~23年9月編~

まだ暑かった 稲垣栄洋『生物に学ぶ敗者の進化論』 約30億年も続く進化の歴史で、必ずどの時代にも勝者と敗者がいる。その中で常に生き残り続けたのは敗者側だった。という本です。敗者側は自分の身を守りたいが故に姿かたちを変化させたお陰で、急な環境変化にも耐えられ、結果的に絶滅せずに新たな時代へバトンを繋げられたという話です。  個人的に読んでて思ったのは「進化は自らの意思で行うものではない」という点です。「進化させてきた」と記されていますが、あくまで進化というのは結果論かなと私

【読了記録】今月読んだ本 ~23年8月編~

とけそう 中溝康隆『現役引退』 先月読み切った本ですが先月分に載せてなかったので、ここで。  昭和、平成の名選手24人の現役ラストイヤーに焦点を当てて書かれた本です。どんな名選手でも必ず引退する瞬間がやってきます。そういった現役最終年でも一線級で活躍し引退する者、ボロボロになるまでやりきった者、様々ですが、意外とその最終年について知らない。そんな引退間際が筆者の軽快な筆致で描かれています。  私自身、野球ファンでペナントをニュースで追ったり、Youtubeでハイライトを見