【Ep.6】 おそくはないわ 思い出さなきゃ この手が暖かいうちに 〜音楽の聖地TSUTAYA誕生〜
🔑Keywords🔑
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前回の記事では、JUDY AND MARYの『POP LIFE』がバンドにとっても私にとっても特別なものであったこと、そして「THROUGH.design」の手掛けるデザインを軸に広がる音楽の記憶や、当時の音楽体験の思い出について書きました。
今回は、中学生になり、地元に誕生したある施設が特別な場所になったこと、そして新たに手にしたJUDY AND MARYの四枚のアルバムの思い出について書いていきたいと思います。
-イントロダクション-
2006年3月、私の日常に小さな革命が起きた。
それは、地元に「TSUTAYA」が誕生したという、側から見れば何の変哲もない、些細な出来事に過ぎないかもしれない。
しかし、私にとってそれは、ある日突然、家の庭に宇宙船が着陸したような衝撃的な出来事だった。
それまでは、駅前の「TSUTAYA」に行くか、車で20分ほど走らせたところにあるCDショップへと足を運ぶという選択肢しかなかった私にとって、徒歩十分もかからずに行ける地元の「TSUTAYA」の誕生は、私の音楽生活に革命をもたらす大事件だった。
音楽と思い出が交差する場所
地元のTSUTAYAは「ヤマト屋書店」が経営しており、一階には書店と、「ドトールコーヒー」が同居していた。
そして、私が最も時間を費やした音楽の聖地は、その奥の階段を上がった二階にあった。
一般的な店舗と同じく、CDレンタルはもちろん、レンタル期間が終了したCDを格安で販売しているコーナーもあった。
階段の脇には試聴機が三台ほど並んでおり、備え付けのヘッドホンを装着して、気になる音楽を試し聴きすることができた。
レンタル落ちCDの販売棚は、試聴機の奥にある壁に沿って設置されており、私はその狭い一角のエリアで過ごすのが大好きだった。
確か、漫画のレンタルコーナーもあったような気がするが、それはオープンして何年か経ってからのことかもしれない。
ただ、当時も今も、漫画にはあまり興味を示さず、一度も借りたことはなかった。
そういえば、オープン当初、二階にはゲームセンターも併設されていた。
何度か友達とプリクラを撮りに行ったが、近隣の小中学校のPTAなどが「教育上良くないので撤退しろ」という反対運動を起こし、わずか一、二ヶ月ほどで閉店した。
当初は友達と文句を言い合ったが、あまりにも短いオープン期間だったため、数ヶ月後には完全に話題に上がらなくなり、皆ゲームセンターがあったことなどすっかり忘れてしまっていたと思う。
私自身もその出来事はすっかり記憶から抜け落ちてしまっていたが、こうして文章を書いたり、古くからの友人と話すことで記憶が補完される、ということもあるようだ。
本屋で雑誌や参考書を買い、友達とドトールでロイヤルミルクティーを飲み、TSUTAYAでたくさんの音楽に触れた日々。
地元のTSUTAYAは、私にとって単なるCDレンタル店ではなく、十代の思い出と深く結びついた特別な場所なのだった。
オンラインクーポン片手に、音楽の世界へ
〜JUDY AND MARYとの再会〜
TSUTAYAがオープンして一ヶ月。
中学二年生になった私は、次第にTSUTAYAに通うことが日課になっていった。
そして、Yahoo!メールの受信箱に、TSUTAYAからランダムに配信されるオンラインクーポンが届くのを楽しみに待った。
「新作&準新作CD5枚1000円」や「準新作&旧作CDアルバム半額」といったレンタルクーポンが配信されると、すぐさま自宅のプリンターで印刷した。
その紙を小さく折り畳んでバッグにしまい、いそいそとTSUTAYAへと向かった。
TSUTAYAの会員になり、まず最初に手にとったのは、持っていないTommy february⁶のアルバムやシングルたちだった。
それからJUDY AND MARY、YUKI、といった具合に、私は過去作を中心に、これまで手にすることができなかった音楽を少しずつ集め始めた。
レンタルしたCDはコピー用CDに焼き、ジャケットも自宅のプリンターで印刷し、CDカバーのサイズに切り取り自作した。
PCや外で聴く用にiTunesにもインポートし、ポータブルMP3プレーヤーと同期した。
持っていたプレーヤーは容量に限りがあり、すべてのアルバムを入れることはできなかったが、気に入った曲を選ぶ作業さえも、当時はとても楽しかった。
JUDY AND MARYの過去作で、当時借りたのは以下のアルバムだった。
『J・A・M』
『ORANGE SUNSHINE』
『MIRACLE DIVING』
『THE POWER SOURCE』
1.『J・A・M』
まずはデビューアルバム『J・A・M』から手を伸ばした。
『LOVE ME DO』以外は全て恩田快人の作曲だ。
曲はすべて1〜3分台と全体的に短く、コンパクトでキレのある曲たちは、まるで冷たいコーラを一気に飲み干すような爽快感を与えてくれた。
「RAMONES」や「The Clash」の1stのような、恩ちゃんエッセンスがたっぷり詰まったパンクロックなアルバムだ。
『LOLITA A GO GO』
『MAKE UP ONE'S MIND』
アルバムの当初のキャッチコピーは「夢を追い続ける全ての人へ・・・」だったが、YUKIが「意味がわからなかった」と後になって語っていたことを知ったとき、正直少し驚いた。
個人的には、『MAKE UP ONE'S MIND』こそ、このキャッチコピーを最も体現しているように感じたからだ。
この曲は、心の葛藤や希望を率直に歌い上げ、夢を追うことの喜びと苦しみを描き出している。
YUKIの力強い歌声と疾走感あふれるサウンドは、聴く者の心に火を灯し、前に進む勇気を与えてくれる。
どこかBLUE HEARTSを彷彿とさせる力強さを感じ、今も昔も大好きな曲の一つだ。
本記事のタイトルにもなっている「おそくはないわ 思い出さなきゃ この手が暖かいうちに」という歌詞は、まさに「夢を追い続ける」ことの切迫感を際立たせている。
限られた時間の中で、自分自身の心に正直に生き、未来に向かって進んでいくことの大切さを訴えかけているようだ。
この曲における「夢」とは、単なる成功や名声だけを指すものではない。
それは、自分自身を深く理解し、自己実現に向かって歩むこと、そして、その過程で出会う様々な出来事や繋がりを大切にすることでもあると思う。
今私がこうして昔を振り返りながら記事を書いていることも、きっとそのことと深く繋がっているはずだ。
2.『ORANGE SUNSHINE』
次に聴いたのは、約一年ぶりにリリースされた2ndアルバムだ。
オリコン初のTOP10入り、最高5位を記録し、初週には約12万枚を売り上げ、このアルバムを機にバンドはブレイクした。
今作からTAKUYAが楽曲制作に参加し、バンドのサウンドに変化が見え始めた。
前回のパンクロック嗜好の強い作品に加えて、ポップなメロディーの中に、どこか切なさも感じられる楽曲が増えていった。
以降のバンド独自のサウンドへ転換するきっかけとなった、重要なアルバムだ。
『どうしよう』
『ダイナマイト』
3.『MIRACLE DIVING』
3rdアルバムの『MIRACLE DIVING』は、私にとって最も印象深いアルバムの一つだ。
特に「あなたは生きている」は、何度も繰り返し聴いた思い出の曲だった。
冒頭の歌詞が「深すぎた傷跡が消えないとイイナ」で始まり、『BLUE TEARS』の冒頭の歌詞に心を奪われたのと同じくらいの衝撃があった。
歌詞の奥深さはもちろん、YUKIの歌い方も特徴的で、何度も聴き返すうちに体に染み渡り、いつの間にか虜になってしまった曲だ。
『あなたは生きている』
『アネモネの恋』
4.『THE POWER SOURCE』
そして、バンド史上最大の売上を記録した4thアルバム『THE POWER SOURCE』。
代表曲『そばかす』が収録されたこのアルバムは、初のオリコンチャート1位を獲得し、初週に80万枚を売り上げ、最終的には220万枚ヒットの記録を収めた大ヒット作だった。
『BIRTHDAY SONG』
『KISSの温度』
小学生時代、JUDY AND MARYのベスト盤を聴いて、バンドの大まかなイメージは掴んでいたつもりだったが、改めてアルバム単位で作品に触れた時、アルバムごとに全く違う世界観が広がっていることに気づかされた。
JUDY AND MARYは私にとって、アルバム単位で音楽を聴くことの面白さを初めて知ったバンドだったと思う。
JUDY AND MARYからYUKIへ、音楽の旅は続く
JUDY AND MARYのアルバムを一巡し終えると、いよいよYUKIのソロ作品へと手を伸ばし始めた。
小学生の頃、彼女の代表曲は何度か耳にしたものの、CDを手にすることは叶わず、二年後ようやく願いが叶った時の高揚感は、今でも鮮やかに記憶に残っている。
徒歩圏内にTSUTAYAが登場したことに加え、その頃、インターネット上でも大きな動きがあった。
音楽体験をより豊かなものにする、あるサイトが登場し始めていたのである。
次回へ続く
JUDY AND MARY、YUKIの話はまだまだ続きます。
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最後まで読んでいただきありがとうございました!