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「テレワークがなにを変えつつあるのか?―暮らし・都市・郊外・地方はどうなるか篇」⑦
『テレワークがなにを変えつつあるのか?』
私たち摂津倉庫の女子社員4名と社会文化研究家の池永先生の未来展望委員会は、2024年9月に立ち上げて、毎週、議論を行っています。未来展望委員会では、「未来展望総論篇」「仕事と会社はどうなるか篇」につづき、『暮らし・都市・郊外・地方はどうなるか篇』で、未来展望をしておりましたが、次回が最終回となります」
「前回の未来展望委員会では、日本の家族のカタチの変化によって、家、会社、社会がどう変化してきたのかを、食卓の風景を中心に、見つめてきました。人の価値観が変わり、行動様式を変え、暮らしと家を変えつつある構造変化から、未来を展望してきました」
「コロナ禍を契機とした価値観の変化が暮らしと家を変えつつありますが、社会・生活・会社・産業・ビジネス・都市・郊外・地方の変化の現状とこれからを、『テレワーク』を中心に本日は考えていきます」
「よろしくお願いいたします。『テレワーク革命は、会社をどう変えるか?(仕事と会社はどうなる篇③)』で、テレワークについて議論させていただきました。テレワークがこれからの社会、会社、生活のなかに、どう位置づけるかが大切だということでしたね」
「コロナ禍で本格化したテレワークの本質は、『リモートワーク』であり、『オンライン社会』です。ただワークすべてがテレワークになるのではなく、出社とテレワークの『ハイブリッドワーク』がワークの本質です」
「『ハイブリッド』が重要なカギということですね」
「そうです。コロナ禍以降、テレワークと出社スタイルが混ざりあい、ワークとライフが混ざりあいつつあります。ワークスタイルの変化が、『場と時間の使い方』を変えていこうとしています」
「ここで大切なことは、出社ワーク(集中ワーク)かテレワーク(分散ワーク)なのかという対立構造、イエスかノー、白か黒の二項対立で捉えてはいけないということです。ワークとライフが融合・混ざり合い・ボーダレスが進み、新たな需要・市場が生まれつつあります。2020年のコロナ禍で緊急避難的に始まったテレワーク経験が、働き方の価値観、概念・時空間を変えつつあります。テレワークをやめようという会社もありますが、テレワークは現在およびこれからへの基本潮流だと思います」
「融合・混ざり合い・ボーダレスで、ビジネスが動きだしているんですね」
「もうひとつ重要なことは、テレワークによる『場所と時間の構造変化』には『仕事はどこでもできる』という示唆をもたらしたが、その本質は自分らしい「新たな働き方をしたい」、仕事と生活を通じて成長を実感したい、「佳く生きたい(Well-Being)」という価値観の変化です。この価値観の変化が、これからの社会、生活、産業、ビジネス、都市・郊外・地方を変えていきます」
「『仕事はどこでもできる』という変化が、働き方、生き方を変えていくのですね」
「『どこでも仕事ができる』は、都市と郊外の構造を変えます。みんなが毎朝毎夕に満員電車で通勤して、みんなが会社に集まって、それぞれランチして、会社のそばの居酒屋で会社の噂話や上司や同僚の話を肴にする、そんな非生産的なスタイルには戻りたくないと考える人は増えました」
「だから通勤、とりわけ朝夕の満員電車。コロナ禍前の通勤スタイルが、当たり前ではなくなった。ストレスを感じ、毎日の満員電車には戻りたくない、コロナ禍中のように、オフィスにオンラインでつないで、家で仕事、ときどき都心の会社に行く、そんなワークスタイルに戻りたい。だから家は都心や100㌔圏内に構えて、テレワークしたいという人が増えています」
「100㌔圏内って、どんなところですか?」
「100㌔圏内とは、都心に会社に電車移動で往復1000円以内、時間でいえば片道30分くらい往復で1時間。遠くても片道45分から60分くらいの距離感。そういった郊外に、家を選択する人が増えています」
「仕事も変わります。テレワーク、ハイブリッドワークで働く場所が変わると、固定の勤務時間がフレックスタイム、フリータイムと働く時間が変わろうとしています。雇用形態も、メンバーシップ型からジョブ型雇用も増えていくのではないかと考えています」
「すでに終身雇用制や年功序列は崩れつつあり、人材の評価も変わりつつあります。人の評価は、過去ではなく現在、未来ではなく現在が評価されます。現在どんな仕事をして、会社に貢献しているかが重要です。つまり現在の仕事を遂行するなかで、いかに生産性や創造性を高めるかが鍵となっていきます」
「企業で生産性を高めるため、DXや生成AI化の検討をしています」
「そうです、日本企業の生産性が低いという課題を解決しないといけないこともあり、これからIT化・DX化・生成AI化を加速していく必要があります。自由自在にAIを駆使して仕事をする人が増えると、テレワーク、オンラインミーティングが増え、会社外の自分が仕事をしやすい場所で働きだす。そうすると、東京や都心に住む人は減り、自分が住みやすい場所で住もうとすう人が増えていくでしょう」
「住みやすい場所に住みたい人が増え、その場所に人が集まり、その場所がより住みたい場所になっていくのですね」
「しかし日本は、東京一極集中。世界でも極めて稀なくらい、超巨大都市に機能集中している国土構造になっています。日本は、とりわけ東京は2011年3月11日の東日本大震災以上のリスクをかかえています。2011年から、DX・ロボット化・生成AI化によって、エネルギー需要の増大・偏在化が進み、日本の社会インフラの脆弱性が高まっています」
「だから有事に備えて、都市・産業インフラを強靭化しよう、機能を分散しようと検討しているなか、コロナ禍がおこりました。オンライン化・テレワーク化が、場と時間の構造を変え、都市・郊外・地方の構造を変え、東京圏一極集中から地域圏ネットワーク構造に移行していく流れがおこっています。これまでの都市と郊外と地方の関係、東京圏と地域圏との関係が、これから中長期的に変わっていくのが、未来を考える論点だと考えています」
「本日の未来展望委員会は、ここで終わります。次回の未来展望委員会は『暮らし・都市・郊外・地方はどうなるか篇』で最終回となります」
「都市と郊外と地方の関係、東京圏と地域圏との関係が変わっていくなか、ビジネスを考えていくことが、未来展望の論点なんですね。本日もありがとうございました」
摂津倉庫未来展望委員会
【未来展望委員会オンラインセミナーのお知らせ】
摂津倉庫 未来展望委員会のオンラインセミナー(総集編)
過去から現在を観る。現在から未来を観る。混沌とする現在から、未来社会・生活・会社・都市郊外地方・ビジネスの方向性を展望して、どう考えて、いまなにをすべきか。池永先生が昨年12月のクリスマスウイークのアメリカ視察を踏まえ、トランプ2.0の政界情勢から未来展望、日本の生き残り戦略を考えていきます。
2月27日(木)15時~16時半の1時間半のセミナーです。最終回ですので、ぜひ奮ってご参加ください
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